日立台にはGK中村航輔の大声が90分間響き渡る

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『ユージ!!!下がるな!! タクマ!!!右!! アタル!!!ナイス!!!』

日立台にはレイソルのGK中村航輔の大声が90分間響き渡る。

ニュースタンダードか対応策か

「観客上限5000人以下」

首都圏を中心にCOVID-19感染者が増加傾向を見せる中、Jリーグは当初8月10日までとしていた「観客上限5000人以下」のキャップを8月末まで延長することを決めた。

入場制限の掛かったJリーグスタジアム。

これがいわゆる「ニュースタンダード」なJリーグの姿であるのか、或いは一時的な対応策であるのか、2020年7月末にある現時点で判断をつけるのは難しい。

東京都の新規感染者数にマスメディアは日々一喜一憂し、人々は皆、蒸し暑い気候の下、マスク姿で街を歩いている。

自らの行動理由に占める「コロナ対策要素」は軽減されるどころか、日に日に大きくなるばかりで、人と人が顔を寄せあったり、大声で対面に向かい叫んでいるシーンをドラマや映画の中に見つけても

「ソーシャルディスタンス!!!三密回避!!!」

と無意識に思うようになっている自分に気づいた時、僅かな空恐ろしさを感じたりしている。

制限の下、新たな楽しさ

と、こんな風に何とも言えない閉塞感に満ちた日常を過ごす中で、入場制限はあるにせよ、再開したJリーグのスタジアムで、私は新たなサッカーの楽しさを見いだしている。

つまり、観客が「応援方法」を大きく制限されている状況。これが奇しくも新しいサッカーの楽しみを私に与えてくれたのだ。

冒頭に書いた中村航輔の大声だけでなく、ピッチ上で戦うチーム、選手の声や息づかい、ボールが芝生の上を滑る音、そして選手がぶつかり合った時に生じる衝撃音。

これまでの日立台であれば、それらは全て応援の歌声や歓声にほとんどかき消されてしまっていた。

それが、事実上「意思表示は拍手のみ」とされているスタジアムでは、中村航輔の「レフリー!足裏!2回目だよ!」というクレームに至っても、かき消されることなく響き渡っている。

目の前にあるピッチから

声を出して応援したい。

スタジアムがひとつになってチームを励ますチャントを歌いたい。

これらの欲求が叶わないJリーグのスタジアムに圧倒的な物足りなさを感じておられるファンも少なからずおられるだろう。

しかし、だからと言って「観客上限5000人のスタジアム」は不完全なコンテンツだと考え、そこで思考停止、或いはストレスを溜め込んでしまうのは、あまりに勿体ない。

何しろ、この制限だらけのスタジアムだからこそ、三原雅俊がチームメイトから「マー」と呼ばれていることを音声情報として認識し、ベガルタのジャーメイン良がなかなかボールを収められずイラつき出す様子が手に取るように分かり、中村航輔とCBの2人、高橋祐治と大南拓磨との関係性がブラッシュアップされていく過程を90分間堪能出来てしまうのだ。

こんなにも贅沢なサッカー観戦を、日本のトップカテゴリーであるJ1の公式戦で出来てしまう現状を前にすれば、どこかのスタジアムで一部のサポーターが椅子を叩いて指笛を吹こうが、ホームチーム外のユニフォームを着た人がスタンドに出現しようが、それらは全て「些末」なこととして消化出来てしまう。

要するに、目の前で起きてもいない他者の振る舞いが不快だと、腹を立てストレスを溜め込む体力的余裕があるのなら、その多くを目の前にあるピッチ上から感じ、刺激を受けることに費やしていたいのだ。(十分とは言えないが、DAZN観戦であってもこの刺激は受け取ることが出来る)

それだけの価値が、この「観客上限5000人以下」のJリーグスタジアムには間違いなく存在している。

そして、そこで感じられる魅力こそが、サッカーにしか創り出すことの出来ない、世界中で愛されるこのスポーツが持つ本質であるようにさえ思う。

ただ、これが普遍的で、誰しもが共感出来るものであると私は考えないし、多くの人に共感される必要もないと思っている。

何故なら、もしそうなってしまえば、簡単にチケットを入手出来なくなってしまうから。

まあ、そうなったらそうなったで、もっと面白いことが見つかるからいいか…。

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