蹴球withコロナ Jリーガー安彦考真「僕には伝えたいことがある」

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フットボール ノスタルジー

https://twitter.com/aywr_urata/status/1249120197174329344?s=20

手持ちのユニフォームコレクションを使い〔Stay Home〕が掲げられたツイートを、ここ最近頻繁に目にしている。どうやらこの「Stay Homeユニフォーム」が、Jリーグファン・サポーターの間で、ちょっとしたブームになっているようだ。

今まさに、あらゆるカテゴリーのサッカーが再開の目処を失っている中、その情報発信の内容についても、貴重なアーカイブ画像や動画、或いは「思い出の名勝負」といった主旨のものが増えてきたように感じる。

何しろ目の前の試合が行われていない状況にあっては、あらゆる情報がアップデートされず、それでも情報発信をしようとした時に、その素材として、これまでの歩みを振り返ったものが多く使われるようになるのは、当然の流れでもあるのだろう。

「Stay Homeユニフォーム」についても、これまでに自身が「刻んだ」ファン・サポーターとしての歩みの象徴とも言える「ユニフォーム」を使った情報発信という意味では、懐古的な側面をもったものと捉えることも出来る。

https://twitter.com/football_lab/status/1248569073471860739?s=20

コロナ禍により、こうしてサッカー界に多く見られるようになってきた「懐古的情報発信」が、ある一時代との別れを惜しむ心情を映し出している。

つまり非常にノスタルジックな心の在り様が、とめどなく湧き出す光景であるように、私には思えてならないのだ。

多くの人が、サッカーの戻ってくる日を待望しながらも、かつては(と言っても僅か数カ月前の話だが)当たり前だった「サッカーの日常」が、そっくりそのまま帰ってくるとは思えていない。

もちろん中にはそうした思いが、未だ心の奥底に潜んでいて、はっきりと認識されていないケースもあるかも知れないが、ノスタルジーというものは、とかくそうしたあやふやな心情を併せ持つものでもある。

そうした人々の思いの渦が、日ごとに大きくなっていくように感じられる中、4月10日の晩にビデオ電話を通じて意見交換をした相手、J3・YSCC横浜の「0円Jリーガー」安彦考真選手の口からは、ほとんどポジティブな言葉しか出てこなかった。極めて見通しが不透明に思える将来についての話をしているはずなのにである。

安彦考真「よし8月いっぱいだ」

1月にYSCC横浜の練習場でインタビューさせて頂いた際に、安彦選手は「2020シーズンをJリーガーとしてのラストシーズン」と定め、「現役引退」という言葉の持つ語感では到底収まりきらない、人間・安彦考真が、その後に取ろうとする生き様、行動指針を私に示してくれた。

実際にその時に出たキーワード「100年後を考える」「100年後からのありがとう」を実践すべく、多種多様な人材を集め〔Think2121〕という行動プロジェクトをスタートさせ、自身のJリーガーとしてのラストシーズンを全うしようとした、その矢先にこのコロナ禍に遭遇することになったのだ。

しかしそんな「ネガティブ」な状況を受け止め、既に安彦選手は前だけを向き行動していた。

僕の場合、期間で言うと、(Jリーガーは)もう夏までって決めたんですよ、自分の中で。

リーグの再開とかそういうのは僕じゃ判断出来ないこと、だからせめて自分の人生のスパン、自分の人生の考え方についてのジャッジは自分でしなくちゃいけないなと思って、すぐに決めたんです。

「よし8月いっぱいだ」って。

「伝えたいこと」がある限り

こうして自らの時計を自らで調整した安彦選手だからこそ、このコロナ禍に喘ぐJリーグの光景に対しても「未来を見据えた」視点が持てているように思う。

東日本大震災の時のように「こんな時だからこそサッカーの力が」になっていないですよね。

1億2千万人全員が大変な状況に遭っていて、スポーツが二の次、三の次になっている。そんな中で今サッカー選手がSNSに上げている動画って、見た側から「これ意味あったね」って言ってもらえるモノなのか、相手の立場にちゃんと立てていない内容も多いように思います。

 

いま起きていることは社会全体に起きていることで、サッカー界だけの話じゃない。だからサッカー選手もサッカーの話だけをするんじゃなくて、社会に軸足を置いて、言葉にもそれを投影させなくちゃいけない。

だからいま僕が出来ること「100年後を考える」は変えない、その代わりに「目前」の足を使ったフィールドワークは必ず徹底していく。

自粛期間ではあっても、出来ることはあるし、家にいることだけが全てとも思わない。もちろん「人と人との距離感」とか「三密」とか、そういう場に敢えて行く必要はありませんけど、そうじゃない場に足を運んだり、こうやってオンラインで伝えられることもある。

ただし「伝えたいこと」が無ければ意味がないんですけど。

安彦考真スタイルの「withコロナ」

安彦考真選手は現在42歳。懐古主義的発想に脳内を牛耳られてしまう人が出てくる年代でもある。

かく言う私自身も、50を手前にした齢にあるわけで、ノスタルジーが甘美な心情を与えてくれることを、それなりに分かっているつもりだ。

ただ同時に、ノスタルジーが得てして「現実逃避」に最適であることも理解している。

「Jリーガーとしての期間を夏まで」と決め、「Think2121」を通じ、在日ブラジリアン社会のサッカー」と向き合おうとし、「100年後を考える」フィールドワークの徹底を誓う、その全てが「いま」を受け入れ「新たな価値」を創造しようとする姿勢そのもの。

私から見るとこれらの全てが、安彦考真スタイルの「withコロナ」である。

そして、「いま出来ること」を追求し「新しいもの」を創造しようとしているからこそ、この難局にあっても、安彦考真選手からは負のオーラが微塵も感じられないのだ。

 

 

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