COVID-19 備忘録 Jリーガーに感染者が出たら?実名公表とプライバシー保護

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プロスポーツ選手に感染者が

プロ野球・阪神タイガーズが、藤浪晋太郎投手など合わせて3人の選手が新型コロナウイルスに感染していたことを発表。

3人の選手は、今月21日以降、臭覚や味覚の違和感を訴えはじめ、PCR検査の結果、26日夜に陽性が確認された。

3人の感染経路は明確になっていないものの、この3人を含め阪神の選手7人がチーム関係者以外の知人5人とその知人宅で食事会をしていたことが分かり、球団はチーム関係者に対し外出自粛の要請を外出禁止するとともに、球団の把握している3人の行動履歴を保健所に提出した。

今まさに日本の大都市圏における、新型コロナウイルスの感染爆発も危惧される中、プロ野球界有数のスター選手が、そのチームメイトとともに「感染者」となってしまった事実は、スポーツ界全体に衝撃を以て伝わっているだろう。

選手に感染者が出た場合、Jリーグの判断は?

今回の事案については、藤浪投手が自身の体調不良を自ら申し出た上、診断結果を「実名公表して欲しい」と球団側に要望したことに対し、これを「勇気ある行動」として賛辞する声も少なくなく、特にそうした声はプロ野球界内部の球団関係者・他球団選手などの間で大きく上がっている。

では、仮にJリーグで同じような事案が発生した場合、その対応はどの様なものとなるだろう。

Jリーグは選手に感染者が出た際の実名公表について、その一切を各クラブの判断に委ねるとしている。これは既にクラブ代表者による臨時実行委員会で確認もされているが、村井チェアマンは「個々のプライバシーを守るという観点もある」と、リーグとしての公表基準を設ける難しさを語っている。

対応を任された各クラブとしても、それを判断する上で間違いなくプライバシー保護の問題は浮上してくるはずだが、感染者を匿名公表すれば「隠ぺい体質」とも取られかねず、クラブのイメージを含めたリスクマネージメントが必要となってくるだろう。

いずれにせよ、この新型コロナウイルス感染拡大が、今後の日本社会、或いは日本スポーツ界に「プライバシー保護」と「個人の権利抑制」という相反する2つの要素を秤に掛ける、困難な命題を突き付けていると言えよう。

「プライバシー保護」と「個人の権利抑制」

データサイエンスを専門とする、慶應義塾大学医学部 宮田裕章教授は、NEWS PICKS「落合陽一【緊急検証】東京封鎖”ロックダウン”は起こるか?」(3月25日配信))に出演した際、こう語っている。

中国はまさにロックダウン(都市封鎖)をかけながらテクノロジーを使い、あらゆることをやってきている。

例えば携帯のライフログを全て徴収して、感染者が出たら遡って「あなたは3日前に(感染者と)同じ車両に乗っていましたね」と身柄を抑えてしまう。個別のライフログを詳細に取ることによって、ロックダウンとは別の形でも感染症を封じ込めていく、これをプライバシーとトレードオフ(何かを得ると、別の何かを失う、相容れない関係のこと)でやったんですね。

技術的にはそれほど難しいものではなくて、フランスでも同じようなアプリを開発したとニュースで流れてきていますが、プライバシー保護の観点から批判の声とセットになっている感じで、これはあの国では出来ないなと私は見ています。

中国が取ったアプローチは、民主主義国家ではなかなか真似が出来ない。その中で我々が経済活動や教育も含めた社会活動をどう維持しながら、どう向き合っていけるのか、そういう局面になってきているんだろうなと思います。

こと、サッカー関係者に感染者が出たケースを見てみると、日本ではJFA田嶋幸三会長の感染公表が記憶に新しいが、欧州でも有名選手や監督の感染が実名で公表されている。(これを書き終わった直後にヴィッセル神戸が酒井高徳選手の新型コロナウイルス感染を公表した)

こうした実情から、Jリーガーに感染者が出た場合にも、それを実名で公表することに抵抗を感じる人は決して多くないのかも知れないが、それによって一般感染者のプライバシー保護が著しく軽視される社会通念醸成に繋がってはいけない。

また、当該選手がJ1のスター選手でもない限り、彼はごく普通の一般市民と何ら変わらない環境下で生活しているわけで、感染の事実を実名公表された場合のリスクは決して小さくないだろう。

ともあれ、今後この新型コロナウイルス禍が、数カ月では収束せず、半年、1年と長期化する可能性も囁かれている中で、「プライバシー保護」と「個人の権利抑制」との折り合いをどうつけて行けるのか、私自身も社会を構成する1人として、真剣に考えていきたい。

今後も

この難局にあって、サッカーの試合を観戦することは全く出来ていないが、Jリーグをはじめとする日本のあらゆるサッカーシーンが、間違いなくこの日本社会の中に存在しているということ、そして、この関係性を抜きに、日本サッカー界の発展、フットボールカルチャーの醸成はあり得ないということも痛感させられている。

今後も「COVID-19 備忘録」として、サッカーに視点をおいた新型コロナウイルス禍を綴っていこうと思う。

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