COVID-19 備忘録 外出自粛要請とアウェイサポーター

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Jリーグの「準備」とファン・サポーターへの「お願い」

3月25日、Jリーグは新型コロナウイルス感染拡大により3度目の「リーグ再開見送り」を決定し、GW前後でのリーグ再開(J1は5月9日、J2は5月2日、J3は4月25日)を目指すことを発表した。

その中で、マスク・消毒液・サーモメータ―などの「お客様を守るための装備の準備」に必要な配備をリーグが進める一方で、再開を待ちわびているファン・サポーターに向けても「お願い」として、既にJリーグ実行委員会で合意されている5項目に関連させ、その具体的内容について説明した。

上記資料が挙げられた5項目だが、この中の「3.密集に関して」について、リーグ再開後2カ月を目処に「アウェイサポーターの現地観戦自粛」が盛り込まれていたことから、多くのJリーグファン・サポーターの間で議論が沸き起こっているようだ。

遠距離の観戦

件の内容について、会見発言録の中には以下のように記されている。

~いわゆるイベント開催についての留意事項は「①密閉した場で②密集したお客様が③密接に応援する」ということで、この密集とは全国から多く集まるような、そしてお客様の手が届くような範囲で、大きな声を出すということが、新型コロナウイルス感染症感染拡大の可能性があるという話でございました。

この3要素のうちの、Jリーグは幸いに密閉というところの心配は、多くのケースで回避されているという認識の中で、密集・密接について議論を重ねました。

まず、密集ですが、全国規模の大型イベントは、全国各地から集まるということが懸念されております。

例えば、クラスターが拡大する際も1箇所のイベントに全国各地から集まることによって、終了後、全国に持ち帰ることが想定されるものです。

詳細はこれから決めますが、再開後、2ヶ月を目処に、遠距離で観戦に来られるアウェイのお客様の自粛をお願いするということを想定しております。~

2020年3月25日 第2回臨時実行委員会後メディアブリーフィング発言録より

図らずも、Jリーグによる会見が行われた3月25日の夜に、小池都知事が都民に向け「週末の外出自粛要請」をする事となり、埼玉県・神奈川県といった周辺自治体も、それに続く形で「外出自粛要請」に動く流れが出来ている。

東京オリンピックの延期が決定して以降、一気に感染者が増加している東京都においては、感染ルートの特定が出来ていない感染者が新たに10人規模で発生しており、今後の感染爆発が危惧される状況だ。

考えようによっては、総人口のおよそ10%が生活している大都市東京と、その周辺から集まってくる人々の間で起こり得る感染爆発を何とか抑えることで、この国難に対し、ポジティブな影響を与える可能性を見い出せるのかも知れない。

そうしたことからも、現在首都圏で生活している人々に対し、なるべくその行動範囲を狭くすることが今まさに社会から求められているのは自明で、それがどれくらいの期間強いられるのか見えてこない状況にあって、Jリーグとしても「遠方への移動」を制限する施策を打たざるを得ないのが実情であろう。

ただ、この発言録の中にもあるように「遠距離で観戦に来られるアウェイのお客様」と表現してしまったことで、若干のミスリードが発生しているようにも思うが、ここで重要なのは「アウェイのお客様」ではなく「遠距離で観戦に来られる」であるはずで、「近距離から観戦に来るビジターサポーター」について、それを問題視することがあってはいけないし、そうならないアナウンスをJリーグ側にも期待したい。

数千人規模の大サポーター集団

またJリーグは、「4・密接に関して」の中で「スタジアム収容率50%以下」を目指すことも挙げており、それを果たす上で「アウェイ観戦席を設けない」という方向性も示しているが、特にJ1リーグのスタジアム環境などを考えれば、数千人規模のアウェイサポーターが遠征してくることも珍しくなく、それを制限することが「3・密集に関して」と「4・密接に関して」という2つの事項を実現する上で大きな助けになる可能性も高い。

特に数千人規模のサポーターを抱えているクラブの多くは、首都圏や関西圏といった大都市をホームタウンとしており、そうした「感染拡大リスクの高い地域」から地方に向け、大勢の人が移動する状況を避ける意味でも、賢明な判断と言えるのだろう。

優先されるべきはその地域の人々

と、ここまで冷静を装って書いてきたものの、やはり「サッカーツーリズム」の楽しさや味わい深さを、私自身、身をもって理解しているつもりだし、日本のあらゆる地域と接点を持つことが出来るのが、サッカーの素晴らしさを表わす、大きな要素の1つであるとも感じている。

しかしながら、JリーグTVの中で村井チェアマンが「簡単に無観客は出来ない」とメッセージしたように、スタジアムにあるいつもの光景を大きく変化させてでも、サッカーを続ける重要性を全うしたいとするJリーグのポリシーが、少なくとも私にとって強く共感出来るものであるし、仮にそれが不完全であったとしても、その際に先ず優先されるべきは、試合が行われる地域社会の人々であって、そこを大事にしていくことで、Jリーグは未来に向かってもいけるのだと思う。

GWがやってくる頃、既にこの新型コロナウイルス禍はすっかり収束に向かっていて、ひと月前に掲げられた「感染拡大防止策」の全てが杞憂となる可能性も全くゼロではないだろう。

それでも、Jリーグが考え得るリスクを取り除こうとする姿勢を見せていくことは、非常に重要であり、価値の高いものだと私は感じている。

何故なら、そうした姿勢を見せ続ける事こそが「社会に寄り添う姿勢」そのものであり、必ずJリーグが社会から必要とされることに繋がっていくはずだからだ。

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