地域CL決勝ラウンド 最終日レポート いわきFCのスター選手と3度目の失敗

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オットナー参謀長

今回の全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)取材は、私がいま行動を共にしているネット配信サッカー情報番組「蹴AKE11(シュウアケイレブン)」で放送るくことが前提にある取材だったので、決勝ラウンド開催中は番組MCのオットナー参謀長とともに過ごしていたわけですが、大会自体は試合と試合の間に1日の休養日があった中、我々はなかなか忙しくもしておりました。

いや、忙しいどころか、特に第2日目(11月22日)が終わってから、翌日(11月23日)の晩に地域CL特番の収録をするまでは完全な不眠不休状態で、ロクに食事も取らずに番組内で使用する動画編集をし続けていたのです(23日の早朝に暖かいオニギリを作って差し入れて下さったり、何かと我々の世話をして下さった○○さん・〇〇〇さんには猛烈に感謝しております)

と、こんな風に書いてしまうと、何だか苦労自慢のように取られてしまいそうですが、少なくとも私にとっては「苦労」でも何でもなく、むしろこの齢にしてこれほどまでの情熱を注ぎ込む対象があるということ、そして私が恥ずかしくなるくらいの情熱をずっと放ち続けているオットナー参謀長のような人と共にサッカーに向き合う時間は、実に爽やかでもあるのです。

そう言えば、私がオットナー参謀長と初めて直接会ったのは2018年の1月頃でしたが、この人が常人離れしたエネルギーを持つ恐ろしい人間なんだと気づかされたのは、昨年のこの大会、つまり松江で開催された地域CL1次ラウンド開催中のある晩のことでした。

初日岐阜会場での取材を終え22時過ぎに松江入りしたオットナー参謀長と、初日から松江に入っていた私が合流し「メシでも食いましょう」とコンビニ弁当を買ってオットナー参謀長が取っていた畳10畳ほどのボロ旅館の一室に向かい、そこからあらゆるサッカーの話をしているうちに、徐々に窓の外が明るくなり、ついには「やばい、もう試合会場に向かわないと」という時間になってしまったことがありました。

オットナー参謀長は私より少し年上なので、もちろん私も含めちゃんとしたオッサンの年代にあるわけですが、まるで学生時代のように、後のことを考えず何かに没頭したのが(没頭出来たのか)私の中では妙に爽快で、もちろん体力的なダメージはかなりあったものの、比較的ポジティブな衝撃があったわけです。

ただそれと同時に「この人ヤバいな」というオットナー参謀長への思いもにわかに湧いてきて、それは以降、今日に至るまであらゆる場面でその「ヤバさ」を再認識させられ続けています。

ということもあって、今回の地域CL取材についても、半端な気持ちでそこに乗っかると痛い目に遭うだろうと覚悟はしておりまして、だからこそ、オットナー参謀長による鬼の如く編集へのこだわりについても、体力がある限り付き合おうと、そう思って取り組んだわけです。

ただそうであっても、オットナー参謀長のこだわりは細部にまで至り

『えっと、このコメントの「~でした」で切ってその後の「まあ~」につなげてください』という指示に対して、私が覚えたての動画編集ソフトを駆使したり

『あのチャンスシーンは後に出てくるこのコメントに関連するので、必ず入れて欲しい』という指示に対して、試合のどの時間に出てくるのかはっきりとは分からないそのチャンスシーンを動画を早送りしながら探し続けたり、

それを完全なる睡眠不足と飢餓状態で乗り切るのは、結構大変でしたが、それでも互いに不愉快な感情を持つことなく、最終日を終え東京に向かう車中でも相変わらず、日本サッカーに対して我々が出来ることは何なのかについて、何時間も話をする関係性は保てていたのには、やはりオットナー参謀長のこの情熱の大元にあるものが、単なる自己完結的な、いわばサッカーオタク的なものでは決してなく、日本サッカー界をもっと良くしたい、参謀長の言葉を借りると『みんながハッピーになれればいいですよね』という思いと、このままでは日本サッカーが衰退の一途を辿ってしまうといった危機感であるのを私も同じように感じているからであって、だから地域CL取材については、選手たちと同じように過酷な「レギュレーション」を強いられても、それを乗り越えようと自然に思えていたのです。

と、やや青臭いことをツラツラ書いてしまった自覚は持ちつつ、地域CL決勝ラウンド最終日の試合レポートをして参ります。

地域CL2019決勝ラウンド 最終日 第1試合 いわきFC VS 福井ユナイテッド(1-1)

最終日の第1試合は、大会2日目の段階で「JFL昇格」という目的を果たしたチームと、果たす可能性を失ったチームとの対戦となりましたが、ある意味で「消化試合」と扱われてしまってもおかしくないこの対戦がなかなか見応えのあるゲームとなったのは、荒天でありながら大勢集まったいわきFCを応援するファン・サポーターの作り上げたムードが大きく影響したのは間違いないことですが、既にJFL昇格の可能性を失っている福井ユナイテッドが、決してこの決勝ランドにおける「アウトサイダー」では無かったと感じさせる戦いぶりを見せてくれたことが大きかった様に私は思います。

初日に決して劣勢ではなかった試合を0-2で落とした段階で、福井の選手たちの言葉から感じたのは「俺たちはこんなもんじゃない」といった自信にも近いムードでした。

望月一仁監督は初戦後に「蹴るのか繋ぐのか、その判断が」と話されましたが、橋本真人主将もエースの山田雄太選手も初戦の難しさから自分たちのやろうとすることが明確に出来なかったというコメントをしてくれました。

しかし第2戦で高知ユナイテッドに1-3で完敗してしまったことで、彼らの「こんなもんじゃない」といった自信が大きく音を立てて崩れていく様子も私は感じていました。それは選手たちが口々に自分たちの不甲斐なさを述べ、橋本主将に至っては「このままでは第3戦も難しい」と話していたことからも、今季の福井ユナイテッドの地域CLは完全に終わってしまったかのような印象を私は受けていました。

しかし、2日目から降り続ける雨によって、所々に水たまりが出来、連戦も影響し明らかに悪コンディションとなってしまったピッチ上で、最終戦でいわきFCに挑んだ福井ユナイテッドの選手たちは躍動しました。

自陣で追い込まれた状況であっても単純に蹴り出すのではなく、近くにいるフリーの選手を見つけ、そこから局面を打開しようと挑戦し、第2戦を終えた時に「攻撃に関わる人数が少なすぎた」と山田選手が語った攻撃面においても、明らかにそこが改善され、特にアタッキングサードでは金沢で行われた1次ラウンドで爆発した攻撃陣のイメージそのままに、質の高い連動と連携からチャンスも数多く創出出来ていた。

もちろん、この時点でいわきFCが既にJFL昇格という最大の目標は既に獲得出来ていて、この大会が持つ独特の緊張感を帯びにくい状況下で行われた対戦であったことは無視出来ませんが、それでも、この日の福井ユナイテッドからは、彼らの創ってきたサッカーが、このカテゴリーにあって魅力ある上質なものであったのだいうことを証明したと私は感じています。

一方でいわきFCも、大会1次ラウンドからの「確変」を経て、序盤の2試合でともに堅実な試合結果を得たことで、ややもするとオーラのようなものを感じさせるようにすらなっていました。

特に1点を先行されてから同点に追いつくまでの時間帯は、スタジアムに集まった大勢のいわきFCファン・サポーターとともに、福井との勝負を楽しみ、この舞台を堪能していたのは間違いないでしょう。

中でも大会を通じて我々が注目し続けたバスケス・バイロン選手は、彼がいわきFCにおける初代スター選手であることを、彼自身が自覚出来た試合になったように思います。

つまり、地元福島の大手メディアにとって、いわきFCは「震災復興の象徴」として扱われることも多く、今大会がまさしくその前線基地であったJ-ヴィレッジで開催されたことで、選手取材と言えば福島・JFAアカデミー出身の平岡将豪選手をはじめとした数人の選手に集中していました。だから意外と思われるでしょうが、バイロン選手は取材者からすると比較的いつも「フリー」で、だからこそ毎日長尺で話を聞くことも出来ていたのです。

もちろん、いわきFCというクラブ自体、あの東日本大震災を大きなきっかけとして誕生した側面を持ち、チームの活躍を自らの人生になぞらえながら受け取っている地元ファンの方々も多く存在しているのは間違いのないことで、それがこのクラブの大きな存在意義であるのは素晴らしいことです。

ただ、もはやいわきFCというクラブ、そしてそこで戦う選手たちが創り出しているサッカーは、そうした切り口だけで語るのが勿体ないレベルのものに進化してきているのも事実で、その象徴がバスケス・バイロン選手であるようにも思えるのです。

最終日を終え、田村雄三監督はいわきFCのキャッチフレーズとして【Excited(エキサイテッド)】という言葉を挙げてくれました。

ピッチを躍動する選手たちの姿、それを見て心を熱くして欲しい。

素晴らしいプレーが表現出来た時には、スタジアムが熱狂で沸いて欲しい。

JFLという新しいステージに挑むいわきFCをどう堪能するのか、そこが強く問われている。そんな風に思わされるキャッチフレーズです。

もう「大味な巨大ハンバーグ」なんて言っていられません。

地域CL2019決勝ラウンド 最終日 第2試合 高知ユナイテッド VS おこしやす京都(3-1)

この試合を迎えるにあたって驚かされたのは、おこしやす京都のスターティングメンバ―でした。

高知で行われた1次ラウンドから、石田祐樹監督の目指すチームコンセプトを現実のものとする重要なピースであるガーナ人選手が1人もそこに入っていなかったのです。

危険を察知し相手ボールを回収し、それを速い攻撃へと繋いでいたサヴァン。圧倒的なスピードと身体能力の高さで前線の起点となっていたチャンスメーカーのイブラヒム。キレのあるドリブルと衝撃的なシュート力で相手に脅威を与えていたエリック・クミ。

勝利した方がJFL昇格という目的を果たすというこの大きな試合で、そのいずれもがベンチスタートだったのです。

大会を通じて石田監督は「地域CLで勝つためのチームを創ってきた」と話し、その「勝つチーム」を完成させる上でガーナ人選手たちが担う役割の大きさを感じていた私にとって、この試合に向けた京都の先発メンバーはあまりに意外でした。

そして、僅か2週間前に相手チームの地元で行われたこの対戦で、彼らガーナ人選手の活躍もあって高知ユナイテッドを完膚なきまでに叩き潰したおこしやす京都が、JFL昇格という目標に肉薄したこの段階になって、同じ手を使ってスタートしなかったことに、石田監督が何らかの策をそこに置いているようにも感じられたのです。

しかし試合は京都にとって非常に厳しいものとなりました。

第2戦で素晴らしい試合内容と結果を勝ち取った高知ユナイテッドの選手たちは、2週間前に完敗した相手を前にしても、ほとんど動じることなく、彼らにとって最高のパフォーマンスではなかったかも知れませんが、相手の嫌なタイミングでゴールを重ねていくことが出来た。

特に64分に決まった前原大樹選手の見事なミドルシュートは、直前にガーナ人選手3人が一気投入された直後だったこともあって、おこしやす京都の選手たちをかなり追い込んだはずです。

試合後、もちろん私は石田監督に先発メンバーを大きく変えてこの試合に挑んだ理由を質問しました。

石田監督は言葉を選びながらそれに答えてくれましたが、そこからはこのカテゴリーで外国人選手を多く起用する上での難しさのようなものも感じ取ることが出来ました。

0-1の状況からピッチに登場したガーナ人選手たちは、決してコンディションが良くは見えなかった。

それはフィジカル面だけに留まらず、メンタル面においても彼らが自分自身をしっかりとコントロール出来ない状態にまで追い詰められている様子が見て取れたのです。

石田祐樹監督は、前身のアミティエ京都時代も含めこの大会に監督として挑むのは3年連続3度目で、1次ラウンドの段階から「僕は2度失敗しているので」と口にすると同時に「2度失敗しているからこそ今やることに迷いはない」とも話していました。

恐らく、高知との2回目になる大一番に向けても、その先発メンバーを決めることも含め「迷いはない」ものであったでしょう。

しかし、結果としてそれは上手くいかず、高知ユナイテッドに2週間越しのリベンジをされるとともに、最大の目的であったJFL昇格と言う成果も勝ち取ることが出来なかった。

私は最後に石田監督にこう質問しました。

『3度失敗したことで、次の挑戦に取るべき道がより明確になった感覚はありますか』

試合が終わった直後に質問する内容としては、少し早計であるようにも思いましたが、私がこの質問をしたくなったのは、石田祐樹監督が必ずこの舞台に戻ってくるという直感があったからです。

『最後の最後に隙が出来てしまったのは指導不足だったと思う』

石田監督は自分たちが取ってきた道が間違っていたわけではないという意味を込め、こう答えてくれました。

そしてこの石田監督の思いは、この試合に勝利した高知ユナイテッドの選手が試合後に話してくれた、こんな言葉によっても、より多くの視点をこの対戦にもたらせてくれるように思います。

高知ユナイテッド 朴利基選手『僕らがやろうとしているサッカーと対照的なおこしやす京都のサッカーを相手にして、そこに負けてしまったらダメなんです。でも、今日の試合でそれが出来たかと言えば正直出来なかった』

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