地域CL決勝ラウンド 初日レポート いわきFCの色気とおこしやす京都が捨ててきたもの

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ついに地域リーグサッカーの最終決戦

いよいよ全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)の最終決戦である、決勝ラウンドが11月20日(水)より福島県・Jヴィレッジスタジアムでスタートしました。

このステージまで勝ち上がった4チームが1回戦総当たりのリーグ戦を20日から1日おきに22日(金)24日(日)と行うこの大会のレギュレーションは、2017シーズンまでは中日のない3日3連戦で行われていたわけで、それを思えば現行日程が、その「過酷さ加減」のかなり緩和されたスタイルであるのも事実でしょうが、それでも5日間で90分のゲームを3試合、それも上位2チームに来季のJFL昇格権が与えられるという大会特性から来る「1分とて気を抜くことが許されない」ムードと、それを得るが為に高テンションな3試合を戦う選手、そしてチームスタッフの身に立てば、美しく新装されたJヴィレッジをじっくり堪能する精神的余裕すらないかも知れません。(時間的余裕は十分にあるはず!)

とは言え、私を含めそれを見る者たちにとって、この5日に渡る大会期間中は、半ば年イチの祭りの如く、抑えようにも抑えきれない気持ちの昂ぶりと付き合うことを強いられるのです。

これは、決勝ラウンドを戦う4つのクラブ(福井ユナイテッド、いわきFC、おこしやす京都、高知ユナイテッド)を日頃から応援しているファン・サポーターはもちろん、それらのクラブが所属する地域(北信越、東北、関西、四国)で生活しアンダーカテゴリーサッカーに関心を持たれているファンの方々にしてもそうでしょうし、私のように特にどこか1つのクラブや地域にだけ思い入れを持っていないサッカーファンであっても、少なからず「気分の昂ぶり」を感じる期間にもなっているはずです。

ただし、その「気分の昂ぶり」の中身については、それが仮に特定クラブのファン・サポーターの間であっても、全く異なっていることは自然で、いや、むしろそうであった方が健全な状態であると私は感じていますが、「何がなんでもJFL昇格を掴みとって欲しい(と言うか、俺らが掴みとらせる)」と昂っている方もいれば「今回JFL昇格を逃したらクラブはどうなってしまうのか」と刹那的な昂ぶりを感じながら大会を見つめている方もおられるでしょうし「今シーズンをウォッチしてきた限り〇〇と〇〇が昇格を勝ち取るだろう、さて私の眼力に間違いはなかったか!」と予想屋さながらに昂っている諸兄もおられるかも知れません。

こんな風に、たかだか「ボールゲーム」に対して、抱くことの出来る感性の容量をフルに活かしながら、それを堪能しようとする人間を生み出すこと、これこそがスポーツの力であり、それが次のフェーズで多くの人々の間で共感されることで、文化が創造されていくのだと私は考えますが、そう考えるからこそ、この「ボールゲーム」のどこにより多くの人々の琴線に触れるポイントを発見することが出来るのか、それを日々自問したり、現場の生の声からヒントを得ようと無鉄砲に突っ走ったりしているわけですが、そんな少々小難しい物言いをするよりも、この決勝ラウンドを見ながら感じたこと、それを備忘録代わりに記していこうと思います。

というわけで、20日(水)に行われた決勝ラウンド初日の2試合について今回は書いて参ります。

地域CL2019決勝ラウンド 初日 第1試合 いわきFC VS 高知ユナイテッド(3-0)

この試合で私が最も見たかったものは、秋田・にかほ会場で行われた1次ラウンドを通じて「確変期」に入ったとも言われている、いわきFCの戦いぶりでした。

これは怠慢だと言われても仕方のない話ですが、私は今シーズンの東北リーグでいわきFCの試合を現地観戦したのはたったの2度で、そのうちの1試合は女川で行われたリーグ開幕戦ですので、もう7か月も前のことなのです。

そしてその際、私はいわきFCに対して「大味な巨大ハンバーグ」とチームの戦いぶりを表現し(ちなみに対戦相手のコバルトーレ女川は「つぶ貝」でした)少なからずいわきFCファンの方々を不快に思わせたと自覚しておりますが、その後7月の半ばに盛岡で見たいわきFCに対しても「大味な巨大ハンバーグ」としたイメージが大きく変わってはいなかったので、このシーズン最終盤に入っての「確変期」がこのチームにどんな進化をもたらせているのか、そこに最大の関心がありました。

結論として、この試合のいわきFCからは「大味な巨大ハンバーグ」と言い切ってしまうのには相応しくない「風味」が十分に感じられました。

と申しますか、地域CLの決勝ラウンドともなると、もうその時点で全国から猛者たちが集まっているので、いわきFCから感じられる肉体的なアドヴァンテージは、もうさほど感じることは出来ず(これは単純に「筋肉」などの見た目的なものです)「ハンバーグ」を表現として使うこと自体がやや的外れな気がしておりまして、そこで考えに考えた表現が

「色気が出てきた」

なのです。

この日の対戦相手、高知ユナイテッドが私の中で「かなり色気のある」チームとして認識されていることから、まさかその高知ユナイテッドを前に、いわきFCから「色気」を感じるとは想定していませんでしたが、あの女川で見たいわきFCからも、盛岡でガンジュ岩手をボコボコにしていたいわきFCからも感じることの出来なかった「色気」

これをほんの僅かではあっても感じることが出来たのは、私にとって嬉しい発見でした。

圧倒的なテクニックと瞬発力で相手を切り裂くバスケス・バイロン選手は「体力の限界まで野原を駆け回る」無邪気な少年の印象が強く、そこに「色気」を感じることは難しかったものの、中盤でチームにスパイスをかけ続けている前田尚輝選手や、相手選手の嫌がるポジショニングを常に取り、黙々とプレーをし続けていた日高大選手からは、サッカー選手が放つ独特の「色気」が強く感じられました。

こうした色気がチームに伝播していけば、きっといわきFCは今よりも遥かに大きな魅力を発するようになるでしょうし、今大会はそのきっかけとなる大会になり得ると私は感じることが出来たのです。

ただ、この試合に出場した全選手の中で、私が最も「色気」を感じた選手は、高知ユナイテッドの朴利基選手でした。

彼は常にピッチ上の全選手(相手も味方も)との関係性の中で自らのプレー判断をしているように見えます。つまり彼のプレーには全て「思考」という理由が感じられるのです。

つまり、試合自体はいわきFCが3-0で完勝しましたが、ピッチ上の90分間を構成するものは、決して「勝敗」という結果だけで語りつくせないものが無数に転がっていると、そう思わせてくれる選手が、敗者の側にもいたということです。

地域CL2019決勝ラウンド 初日 第2試合 おこしやす京都 VS 福井ユナイテッド(2-0)

私はこの試合を本当に久しぶりにメインスタンドからカメラも何も構えずにじっくり見ていました。

そうしたかったのは、1次ラウンド高知会場で目撃した、あの著しく強度の高い「ミッション遂行集団」おこしやす京都と、恐らくこの決勝ラウンドに残った4チームの中で最も「エレガント」な戦い方をする福井ユナイテッドが、どんな化学反応を起こすのか、それをしっかりと見届ける使命のようなものを感じてしまったからです。

もちろん、その戦術的な考察について、私が深く論じようというものではありませんが、この試合が「地域CLを勝ち抜く為に鍛えられたチーム(京都)」と「見る者を魅了する戦い方をしてきたチーム(福井)」との対戦であるように私には思えていたわけです。

もちろん、チームの個性や傾向は「0か1」では語れませんので、おこしやす京都にも「魅了」する要素はありますし、福井ユナイテッドが「地域CLを勝ち抜けるために捨てたもの」もあるのでしょうが。

試合の前半は「見る者を魅了する」側が「勝ち抜く為に鍛えられた」側を圧倒しているように、私には見えていました。

しかし、たった1つのミスを逃さずゴールに繋げた「勝ち抜く為に鍛えられた」チームが、まさにそのままゲームを自分たちのものとし、2-0という理想的な試合結果を得ることとなりました。

試合中、ピッチ上の選手たちが自陣から足元で繋いで前へ出て行こうとするのを、ベンチの望月監督が制している場面が何度か見られたので(繋がずに大きく前へ蹴れという指示)私は福井ユナイテッドがこの舞台に来てやや戦い方についての判断に迷ってしまったのかも知れないと思い、試合後コメント取りで福井側を担当したので、主力選手数名にその疑問を投げかけてみました。

しかし彼らの口から出てきたものは「判断の迷い」が全てではなく、むしろ「相手の術中に嵌って本領を発揮できなかった」といった言葉の方が多かったように思います。

卓越したスピード、技術、ゴールセンスで、実力者揃いの福井ユナイテッドの中にあっても圧倒的存在感を放つ山田雄太選手は、自分自身のプレーに対する反省を語りながらもチーム全体として力を出し切れなかったことを悔いていました。

試合が終わってすぐに言葉ですので、その全てを正確に語れという方が酷ですが、少なくとも彼らの言葉の間からは「勿体ない試合だった」という思いも感じ取ることが出来た。

ただ、そうした感じ方、見方がある一方で、今シーズンの「地域CLを勝ち抜く為に鍛えられた」おこしやす京都は、常に圧倒的に相手を凌駕して勝利してきたチームではないのです。

1次ラウンドでも石田監督は『昨シーズンまでは「接戦での勝利」に物足りなさを感じていたが今はそこに迷いがない、勝利出来る戦い方を得る為に捨てたものもある』と何度も繰り返し話してくれましたが、まさにこの地域CL決勝ランド初戦でも、ある意味で割り切った戦いをし、しっかり結果を手にしたと取ることも出来るでしょう。

第2節、第3節もトライしてみます

こうして私は、物凄く個人的な見解や思い込みを、こと「ピッチ上」で起きていることについては、どんどん主観論で発信していくことが「サッカー文化」を育む一助になると思って、恥ずかしげもなくこうして書いておりますので、異論や反論があることは承知しつつも、そこで論戦を繰り広げ、何らかの成果を生み出そうとは思っておりません。たかだか「ボールゲーム」如きに昂りやがってと、笑っていただければ本望です。

というわけで、地域CL決勝ラウンド第2節、第3節も今回と同じようなレポートにトライしてみようと思っております。

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