地域CL1次ラウンド 龍馬とカツオと高知ユナイテッド

アンダーカテゴリー

関連リンク

 

Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

龍馬、カツオ、高知ユナイテッド

想像以上に「龍馬」だった。

想像以上に「カツオのたたき」だった。

そして、想像以上に「高知ユナイテッドSC」だった。

全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)1次ラウンドグループC。

高知市の春野総合運動公園球技場で3日間に渡って開催された、あまりに過酷な熱戦の取材は、同時に私にとって初めて訪れる高知という街と出会う旅にもなりました。

地域CL1次ラウンド高知会場

大会が始まる金曜日の前日から高知入りし、大会が終わった翌日の月曜日まで5日間滞在した高知。

そこで出会ったものは、冒頭にも書いたように、維新の英雄、坂本龍馬を中心とした幕末志士の残像であり、広く太平洋に面した地理環境から恵まれたカツオのたたきを中心とした豊富な食であり、街の中心にあるはりまや橋周辺でも頻繁に目にした高知ユナイテッドのポスターであったわけです。

ただ、高知龍馬空港から街の中心へのアクセス事情、また街の中心から桂浜や坂本龍馬記念館といった観光名所へのアクセス事情の素晴らしさを感じた一方で、高知ユナイテッドSCにとっての今シーズン総決算とも言える地域CL試合会場、春野総合運動公園へのアクセスが想像以上に難儀だったのも事実で、公共交通機関の時刻表に沿って、毎朝8時半に試合会場入りし、試合が終わった約2時間後の18時近くまで春野で時を過ごす私がいました。

もともと街の中心から春野までは路線バスで直行出来ていたのに、それが今年の10月に廃線になってしまった。

人口減少の波が地方都市をどんどん過疎化させ、その地域の体力を奪っていく中で、あの立派な春野の運動公園でさえこの街にとって不要なのだと、そんな事実を突きつけられているのか?

つまり、地域CLはもとより、高知ユナイテッドがリーグ戦のホームゲームをここで開催する上で「アクセスを改善しなくちゃね」とは簡単に言えない事情がそこにあるわけで、これはサッカーに限った話ではなく、日本中の特に地方社会におしなべて存在している光景とも言えるでしょう。

高知から目指せJリーグ

高知県の人口は約70万人。その約半分が高知市に集中しています。

言ってみれば周辺に頼るべく街・コミュニティがほとんど存在していない中で、高知市を活動拠点とする高知ユナイテッドは戦っている。

彼らがピッチ上でどんなに素晴らしいサッカーを披露してみせたとしても、このバックボーンを無視してチームを、そしてクラブを見つめるのは、少々罪深いことではないかと、私は思うのです。

確かに高知ユナイテッドは「高知から目指せJリーグ」という言葉を掲げ、その将来にはあたかも鹿島アントラーズや浦和レッズと対戦する日が待っているかのように思われてしまっているかも知れません。

しかしながら私はあの春野で、世間的認知度の限りなく低い「JFL昇格を懸けた短期決戦」の為に集まった人々が創り出していた熱気に「これが2週に一度ここで感じられればそれでいいじゃないか」と感じていました。

それが四国リーグであろうと、JFLであろうと、J3、J2であろうと、試合会場に集まってくる人々が、心から楽しみ、心から興奮出来るコンテンツになり得ているかどうか、それこそが最も重要であって、さらに言えば、そうした場に永続性を持たせることが出来るかが、そのコンテンツをひとつのスポーツ文化へ昇華させるカギであるように思うのです。

悲壮で刹那

地域リーグから「Jクラブ育成リーグ」として認知されているJFLへ昇格する時、そのあまりに狭き門、そしてその決定をする上での過酷な大会レギュレーションから、私自身も、とかく悲壮感や刹那的な印象を受けてしまいがちです。

特にその狭き門を抜けることが出来なかったチームに対しては、声を掛けることすら憚れるようなムードが感じられることも少なくありません。

ただ私はこうも思うのです。

仮に高知ユナイテッドがJFLに昇格出来たとしても、出来なかったとしても、何よりも大事なのは、その試合会場を1つのスポーツ文化、高知という街にとっての生活文化としていく為にどう努力していけるかであって、四国リーグであろうとJFLであろうと、高知ユナイテッドがそこに所属する一員として、リーグの価値を高めていくことだって出来る。

そこには悲壮感も刹那的なムードもありません。

選手やチームスタッフはピッチ上を主戦場とし、クラブ運営に携わる方々はピッチ以外のどこで価値を見いだせるのか、その可能性を模索し続ける。

応援するファン・サポーターも、自分がそのクラブに、そしてそのチームにどんな魅力を感じているのか、それをどんどん世に発信していく。

「坂本龍馬」や「カツオのたたき」のように、高知ユナイテッドがより街の中に入り込み、高知の人々にとって存在して当たり前のクラブになれば、必然的にそれを支えようとする人も次々と現れるはず。

そしてこれは、カテゴリーを問わず、Jクラブも含め日本中にあるクラブに共通して求められる価値創造なのではないでしょうか。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で