Jリーグ「6つの参入時期」
現在Jリーグには、J1~J3で合計55のクラブ(J3所属のU23チームは除く)が存在していますが、この55クラブがある日突然一気に誕生したのではなく、Jリーグが創設された1993年からおよそ四半世紀の時を経て、徐々にその数を増やしてきたのであります。
まあそんなことは、日頃Jリーグをご覧になられている方にとっては基本中の基本であるはずですが、私はこの「徐々に増えてきたJクラブ」を一つの年表にしてみました。
題して『Jリーグクラブ J参入年表』
この年表を作って行く中で、私はそのJ参入時期を6期に分類することを思い立ったのですが、これによって現在ある55のJクラブの立ち位置が、少しだけ可視化されたような気がします。
まず初めに私が分類した「6つのJ参入時期」について、以下で簡単に解説します。
- 第1期(1993年)Jリーグ創設初年度。この第1期に参入したクラブは勿論「オリジナル10」と呼ばれる初期メンバー
- 第2期(1994年~1998年)Jリーグにとって最初のエクスパンション期(拡張期)5シーズンの間に8クラブ参入
- 第3期(1999年)J2リーグ創設初年度。このシーズンで一気に9クラブ参入
- 第4期(2000年~2013年)J2リーグのエクスパンション期 14シーズンで15クラブ参入 この第4期にJリーグ参入したクラブが最も多い。
- 第5期(2014年)J3リーグ創設初年度。一気に10クラブがJ参入。これによりJFLは約半分のクラブが入れ替わることに。
- 第6期(2015年~)J3リーグのエクスパンション期 多分クラブ数のMaxはもう決まっている。
では、これを踏まえて以下の年表をご覧ください。
Jリーグクラブ J参入年表

Jリーグクラブ J参入年表
表の左上から右下に掛けて第1期~第6期という並びになっています。
この年表には、各クラブがJ参入する以前、つまり前身となった組織についても書き記してみましたが(ざっと調べただけですので、異論のある方もおられるかも知れません)それによって、「6つのJ参入時期」が持つある傾向についても気づくことが出来ました。
「ある傾向」とはつまり、第1期~第6期のそれぞれでJ参入を果たしたクラブの「出自傾向」です。
1993年にJリーグがスタートした際の第1期。
このタイミングでJリーグ参入したクラブの前身はほとんどが実業団チーム。
それも日本有数の大企業(1990年代前半ですので、世界的に見ても有数の大企業だったと言えるでしょう)ばかりですが、この傾向は第2期、第3期と時が進むにつれ確実に薄れていきます。
第3期には東京ガス(FC東京)や富士通(川崎フロンターレ)もいますが、その一方で新潟明訓高校OBチーム発祥のアルビレックス新潟や、Jリーグ参入を目的として作られた大分トリニータのようなクラブも出てくるのです。
そしてこれが第4期になると、もう大企業実業団チームは贔屓目に見て大塚製薬(徳島ヴォルティス)くらいで、他の多くはJリーグ参入を目的として作られた、或いは俄かにその目的を纏うことになった社会人チームが前身であるケースとなっていきます。
第5期、第6期ともなると、前身が社会人チームであるのは当たり前で、企業や地方行政の大きな後ろ盾がない状態でJ参入を果たしてしまう時期になっていくのです。
「営業収益」と「入場料収入」をJ1~J3にカテゴライズ
では、少し目先を変えて、全Jクラブの2018年度決算数値の中からいくつかの項目をピックアップし、この「6つのJ参入時期」のそれぞれにJ参入を果たした各クラブが、どんな立ち位置にいるのかを確認してみましょう。(2019シーズン昇格のヴァンラーレ八戸は除く)
まず最初に各クラブ「営業収益」をもとに、54クラブをJ1~J3にカテゴライズしてみます。

次に各クラブ「入場料収入」をもとに、54クラブをJ1~J3にカテゴライズしてみます。

「営業収益」も「入場料収入」も、より注目度の高いJ1が有利であると考えれば、実際のカテゴリーと「営業収益カテゴリー」「入場料収入カテゴリー」がシンクロするのは当然なのかも知れません。
ただ、ここで改めて確認して頂きたいのは、その「色」です。つまり「営業収益カテゴリー」で言えば、オリジナル10メンバーの東京ヴェルディがJ2にいるのは非常に目立ちますし、「入場料収入カテゴリー」で言えば、第4期生の松本山雅が堂々とJ1に入っているのは特筆すべき点です。第6期のレノファ山口がどちらのカテゴリーでもJ2に入っているのも存在を際立てていますね。
しかし裏を返せば、このランキングが訴えてくる最大の印象として、限りなく「チームの戦力充実度」と関係性が深い「営業収益」や「入場料収入」については、Jリーグに参入した時期の早いクラブが圧倒的に優勢であると見る方が自然であるようにも思います。
結局のところ、どちらのカテゴライズもJ1が青緑っぽくて、J3はオレンジ黄色っぽいのです。
Jリーグは「チームの強さ弱さ」以外を愛でるフェーズに
では最後にもうひとつ、何とか違う指標でカテゴライズ出来ないかなと思い用意した表があるので、そちらもご覧ください。
各クラブの「固定資産」をもとに、J1~J3にカテゴライズした一覧です。
固定資産の大小が一概に企業経営の安定性を示すわけではありませんが、一方で経営基盤を測ることは出来なくもありませんので、今回はそうした指標として受け取ってみて下さい。

これまでのカテゴライズと見比べると、ガイナーレ鳥取がいきなりJ1昇格をしているのと、アスルクラロ沼津がJ2昇格しているのが凄く目立ちますが、よくよく見てみるとJ2の下位あたりが結構入り組んだ感じになっています。ただやはりオリジナル10を含め第1期~第3期にJ参入を果たした大企業実業団を前身とするクラブは強いですね。
そしてこの「固定資産カテゴリー」において特筆すべきは、そのランキングだけでなく、実際の数値上の格差。
この如何ともしがたい絶望的格差(かたや20億かたや300万)を目にしてしまうと、今現在J3に所属しているクラブが「目指せJ2!そしてJ1!」と叫んで、そのベクトルでファン・サポーターの心を掴もうとしたところで、そりゃ無理があるよ、完全なミスリードだよと感じてもしまいます。
或いは、「固定資産」も「営業収益」も「入場料収入」もJ3下位のクラブに対し「なんで勝てないんだ!応援なんてボイコットしてやる!」などと叫ぶ気も私は全く起きません。
まあそれでも、白馬の騎士のごとく大資本が、突然に自分が応援するクラブの筆頭株主になることも稀にはあるようですが、それでJ1チャンピオンになってもねぇ、、「その白馬の騎士のお陰じゃん」と白けてもしまう。
つまり、10クラブからスタートしたJリーグも25年以上をかけ55クラブにまでその数を増やしてきた中で、チームが強いの弱いのというだけでなく、「営業収益」や「入場料収入」や「固定資産」の圧倒的で絶望的な格差を愛でる時代に入っているんだなと、そう改めて感じたわけでございます。