地域リーグも大詰め
全国に9つある地域リーグも、この9月がいよいよ大詰めで、多くのリーグが9月第4週の週末(9月21~22日)で全日程を終了することから、その先にある全国社会人サッカー選手権(全社:10月開催)、或いはその全社を勝ち上がったチームと各リーグ優勝チームが、JFL昇格を懸けて争う全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL:11月開催)を視野に入れながら、リーグ戦に挑むチームの姿も顕著になってきています。
「視野に入れる」
これは即ち、リーグ優勝の可能性とリーグ上位にしっかりと食い込む目標(全社で上位に入ってもリーグ戦3位以内に入れなければ地域CLへの出場権は与えられない)とを秤にかけながら戦うことや、全社の行われる10月、そして最終決戦の地域CLが行われる11月に向け、チームの完成度をいかに高めていくかといったことを意味するわけですが、こうして文章にしても割と難しいのですから、これを実際にピッチ上で体現しようとするのは、相当難しいことであるはずで、血気盛んな若いサッカー選手たちをまとめあげ、チームとしてひとつの目標を掲げ、そこに力を収斂(しゅうれん)させる指揮官、つまり監督の役割は非常に大きいのも間違いのないことです。
そして、私がリーグも最終盤に差し掛かったこの時点で、こうした思いを強く感じるに至ったのは、日頃の地域リーグ取材で何人もの監督の言葉を聞いてきたことが非常に強く影響していて、その中でも、関東リーグを戦う東京ユナイテッドFCの福田雅監督の言葉からは、特に強いインパクトを受けたと思っています。
今シーズンの東京ユナイテッドFC
東京ユナイテッドFCについては、過去にこのブログ内に記事を書いてきましたが、必ずしもその全てがポジティブな内容ばかりでは無かったと記憶されている方もおられるかも知れません。
私も、昨シーズンまでの東京ユナイテッドというチームが、「チーム」と言うよりも、岩政大樹選手をはじめとした「個」の印象の方が強く伝わってきて、その魅力もそれほど高いものと思っていませんでした。
とはいうものの、このクラブから伝わってくるイメージや印象が、決して万人に受け入れられるものでは無かったとしても、それはそれで「ヒール」としてのキャラ立ちがしているのだから、周りはそれを存分に楽しめばいいとも思ってきました。
しかし、そんな東京ユナイテッドに対する印象が、今シーズンのある試合をきっかけに私の中で大きく変わったのです。
それは5月4日に行われた東京23FCとの「‟新”東京ダービー」
この試合は雷雨の影響で、後半が別日程に延期してしまったので、私が観戦したのはその前半だけでしたが、東京ユナイテッドがチームとして躍動する姿を強く印象づけられた試合になりました。
昨シーズンのチームと比べて、明らかにネームバリューのある選手は少なく、突出した選手も存在しないのに、俊敏性、機動力、スピード、連動性、、その全てにおいて対戦相手の東京23FCを凌駕していたと言っても良かった。
そして何よりも、そのチームの姿が昨年の東京ユナイテッドとは比較出来ないほど「私好み」に変化していた。
これは私が今シーズンの関東リーグを見てきた中で、間違いなく序盤戦における大きなトピックスでもあって、ただ、実際にはその後彼らの試合を見る機会がなかなか作れず、この時に抱いた印象を確信に変えることまでは出来ていなかったのです。
福田雅監督

東京ユナイテッドFC 福田雅監督
『ふざけんなよって思う一方で、僕の中では理想的な組み合わせですけどね。
下手に何も狙っていないチームとやる方が嫌なんですよ。だからTIAMO枚方さんにも権利(リーグ王者としての地域CL出場権)を失ってから来て欲しいし、FC.ISE-SHIMAさんにも権利失ってから来て欲しい、ガチンコで来て欲しい。下手にリラックスした状態で来られる方が最悪です。だから栃木シティさんにも3位の状態で乗り込んできて欲しい。』
これは、9月1日に行われた栃木シティとのリーグ戦を終えた後の福田雅監督に、全社のトーナメント組合せについて伺った際に発せられた言葉です。
既にリーグ優勝の可能性が現実的に難しくなっている東京ユナイテッドにとって、全社は地域CL出場権を獲得するための大会。
そこでベスト4に進出すれば、JFL昇格を懸けた地域CLに出場できるという状況の中、同じ山の中に現在関西リーグで首位を走るFC TIAMO枚方、東海リーグ首位のFC.ISE-SHIMA、同じく東海リーグで優勝争いをするFC刈谷、そしてこの日戦って引き分けた‟プロチーム”栃木シティFC、他にも九州リーグからおそらく地域CL出場権を狙ってやってくるJ.FC MIYAZAKIと、強豪チームばかりが名を連ねてしまったことを『ふざけんな』と言いながらも『理想的』と評する心境は、まさに自身の気持ちに素直に話されているという印象を私は持ちましたが、こうした言葉の端々からも、福田雅監督が、そして今シーズンの東京ユナイテッドというチームが、今シーズンの佳境に向けてさらに面白い存在となっていく予感がしてならないのです。
『とにかく、全員守備全員守備の繰り返し、しつこいくらいのチェイシングとハードワークで、最後は泥にまみれてでも1点獲る。そういう戦いを、チームのブランドイメージとサッカーのスタイルは真逆でありたいんですよね。(笑)
別に金満チームでも何でもありませんし、元プロで輝かしい経歴のある奴がそんなにいるわけでもないし、ほとんどが雑草で、毎年「サッカーこれが最後かな」と思いながらやっている奴らが最後の輝きを、この地域リーグってそういう場所じゃないですか。だからこそ面白いし、だからこそみんな真剣だし、貯金でサッカーする奴は勝てないし、そういうところが面白いなと感じながらやっています』
福田監督は、東京ユナイテッドというサッカークラブを作った当人でもあり、そういう意味で他のチームを率いている監督と単純な比較は出来ないものの、チームの掲げるJFL昇格という目標を成し遂げる為に越えていかなくてはならないハードルの高さ、門の狭さから、得てしてナーバスになりがちな指揮官も少なくない中、どこかその状況を客観的に楽しみながら、真の意味で「チャレンジャー」としての在り方に徹する姿勢を強く感じます。
今シーズンは関東リーグだけでなく、様々な町で地域リーグの強豪の試合も見てきましたが、そのいずれとも異なる強さが東京ユナイテッドにはあるように思います。
自ら『アップセット(番狂わせ)が好き』とも話してくれた福田雅監督が、10月に鹿児島で行われる全社でどんな戦いを見せてくれるのか、そしてそこに至るまでのリーグ残り試合をどう戦っていくのか、その1つ1つに更なる関心が湧いてきます。
東京ユナイテッドFCの関東リーグ残り試合日程
9月8日(日)16:00キックオフ 対VONDS市原FC(ゼットエー・オリプリスタジアム)
9月15日(日)16:00キックオフ 対桐蔭横浜大FC(桐蔭学園多目的グラウンド)
9月22日(日)14:00キックオフ 対流通経済大FC(小石川運動場)