Twitterアンケート集計結果「Jリーグサポーターの半分はサッカー経験がない」

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盲点

「もしかしてJリーグのスタジアムへ集まってきているファン・サポーターの多くはサッカーをしたことがないのかも」

この視点は私の中で実は盲点でした。

でも、少なくとも私がtwitterで募ったアンケートにお答え頂いた217人の皆様のケースを見ると、この視点は概ね間違っているとは言えないものだったのです。

Jリーグサポーターの約半分が、チームに入ってサッカーをしたことが「ない」

ある程度予想していた事とは言え、改めて数値結果として目にするとこれは驚きでもありました。

Jリーグスタジアムから受けた衝撃

こうしてJリーグ(柏レイソル)を糸口に、20数年ぶりにサッカースタジアムに行く機会の出来た私にとって、少年期から青年期に掛けての「サッカー観戦」の記憶を辿ると、共にスタジアムへ行っていたのは、一緒にボールを蹴っている仲間であり、私にボールを蹴ることを最初に教えてくれた父であったわけで、『サッカー観戦者=サッカーをする人」という既成概念が出来上がってしまったのも当然なのかも知れませんが、既に自分自身がほとんどボールを蹴る機会を作ることもしなくなった現在にあっては、そんな既成概念を改めて感じることもほとんどありませんでした。

ただ、「サッカー観戦」という行動とこうした付き合いをしてきた私であったから、久しぶりに訪れたJリーグスタジアム、つまり柏レイソルの本拠地である日立台にあった熱狂が、衝撃的な出来事として心に刻まれ、それが大きなきっかけとなって、今こうして様々なサッカーの現場に‟取材”するまでに行きついてしまったのは間違いありませんし、あの時に私が受けた衝撃を約2年半が経過した今振り返って見ても、それは明らかに「サッカーであんなに興奮している人たちを日本国内で初めて体感した」ことに拠るのだと、そう確信しているのです。

つまり、かつて私が仲間とともに通っていた日本サッカーリーグや高校サッカー、そして日本代表戦やTOYOTACUPの試合会場では、今現在Jリーグのスタジアムに見られるような観客の熱狂ぶりはほとんど感じませんでしたし、画面を通じて伝わってくる欧州や南米のサッカー場に見られるような熱狂が、日本のサッカーシーンに現れるなどとは露ほども思っていませんでした。

それでも日本代表の試合についてだけでは、容赦なく日本代表に肩入れしたスタンスで観戦をしていたのは間違いありませんが、その勝敗が試合を評価する全てという感覚は持ちようもなかったわけです。(ドーハの悲劇くらいからですね、代表が負けて物凄く悲しい気分になるようになったのは)

そして、そうしたスタイルが、私以外の仲間の間でもオーソドックスで、サッカー部で一緒にボールを蹴っている仲間も、サッカー戦術については一言家でもあった我が父も、日本代表が韓国に負けようが、W杯出場を逃そうが、取りつく島がないといった具合に不機嫌になってしまうことなど皆無だったのです。

サッカーは熱狂の対象ではなかった

ただし、不機嫌になったり、ヒステリーを起こしたりしない代わりに、その試合が重要な試合であったり、関心度合いの高い試合であれば、試合終了の笛が鳴った段階から、試合についての感想を皆が自然と話し出す、そんなムードはあったと記憶しています。

「相手は今の日本代表より1枚も2枚も上手で、木村(和司)でも金田(喜稔)でも難しい、やっぱり戸塚(哲也)やジョージ与那城が入らないとダメじゃないか?」とか

「森(孝慈 )監督のサッカーは消極的すぎる。あれじゃいいところ引き分けにしか持ち込めない」とか。

当時はサッカー情報を扱っている大メディアなど無かった時代。

各々が自分自身のプレー経験をベースに、あとはサッカーマガジンや三菱ダイヤモンドサッカーで岡野俊一郎さんが話していたような言葉だけを頼って、今まさに観戦した試合についての意見を交わす(時にはちょっとした口論になったりもする)という文化・習慣があって、でもそんな習慣は「サッカー仲間」の中でしか通用しない、つまり学校の教室でサッカーが話題の中心になることはなく、そこに幾ばくかの切なさ、寂しさを感じていたサッカー少年、青年がほとんどであったはずですが、だからこそ、そんな言ってみれば「日陰の話題」にしかなり得ていなかったサッカーが、時を経て、Jリーグスタジアムという過去には存在しなかった場所で、大勢のファン・サポーターによる熱狂の対象となっている光景を見た時、大袈裟ですが、私がそれまでの人生で感じたことのないような衝撃を受けることになったのだと思っています。

Jリーグで育まれた勝利至上主義

と、ここで冒頭の疑問

「もしかしてJリーグのスタジアムへ集まってきているファン・サポーターの多くはサッカーをしたことがないのかも」

に戻します。

私がこの疑問を抱いたのは、Jリーグファン・サポーターの一部が常に孕んでいる「勝利至上主義」的な「サッカー観・Jリーグ観」が浸透してしまっているのかについて、思いを巡らせていったことがきっかけでした。

つまり、サッカー観戦を楽しむ上で、その勝敗というものが大きな要素であるのは間違いない一方で、その勝ち負けだけが楽しみの全てであるはずもないし、ピッチ上で90分間繰り広げられる幾多の戦いと、その勝敗が必ずしも結びつかない時もあるという、私の思いが先ずあって、だからこそ、その試合が勝敗だけで評価され、価値が決められてしまうような「勝利至上主義」的な思考に、私はどうしても釈然としない気持ちが湧いてきてしまう、そしてそういう気持ちが湧いてくるのは、きっと自分がもともと仲間とボールを蹴ることに楽しみを見出して成長し、その過程で、自然とサッカーを我流で解釈しようとする習慣を持ち得たからだと思えるようになってきたのです。

そこで、どうしてリーグのファン・サポーターの間では「勝利至上主義」的な思考に対する一定の支持があるのかを考えた時に、推測として浮上してきたのが

「勝利至上主義に疑問を感じないファン・サポーターは、そもそも自分でサッカーをしたことがなくて、だからサッカーを自分自身の尺度で測れず、評価をしようにもその勝敗という事実だけに大きく頼らざるを得ないのかも知れない」

というものだったのです。

(これはあくまでも推測ですので、多分に偏見が入っていることはご理解ください。だからもちろん、サッカーをしたことがなくても、勝敗以外にサッカーを楽しむポイントを数多く持っておられる方の存在を否定するものではありません。ただ、傾向として「サッカー経験がない=勝利至上主義に走りやすい」はあるのではないかと、そういうことです)

そして、この推測が浮上したのには、Jリーグがスタートしたことで、その観客動員数が約10倍にまで一気に大きくなった事実も、私の中では大きな裏付けとなっています。

それまで2~3000人を集めるのがやっとだった日本サッカーリーグが、Jリーグがスタートした途端に2~30,000人を集めるだけの興行となるには、サッカー観戦をしたことのない人たちをスタジアムに大量に集める必要があり、そうして集まってきた観客の中には当然ながらサッカー観戦はおろか、サッカーと言うスポーツそのものに触れた経験を持っていない層が相当数いたのは間違いありませんし、そうした「サッカー未経験者」でも‟楽しめる・興奮出来る・熱狂できる”観戦スタイルとして、Jリーグはそれまでの日本サッカー界にほとんど存在していなかった「応援文化・サポーター文化」を積極的に提示した、そしてそこに共鳴した人々が、この四半世紀というJリーグの歴史を大きく支え続けてきた。

『Jリーグに存在している「勝利至上主義」的な思考には、こうした日本サッカー四半世紀の流れが大きく影響しているのではないか』という仮説を思いつくとともに、一部のクラブを除き観客動員数を著しく増加させることの出来なくなっているJリーグのビジネスモデルにあって、Jリーグ創設時においてファン・サポーターを一気に増やすことに成功した「応援文化・サポーター文化」だけでは実は既に頭打ちで、新たな集客が難しくなっている実態も示しているのではないかと、思えるようになってきたのです。

サポーターの半数はサッカーをしたことがない

ただ、この仮説にもう少しリアリティをつけようと、現在Jリーグクラブを応援しているサポーターの方々が、どんなサッカー経験を持っているのか、さらに言えば「Jリーグサポーターの何割がサッカー未経験者」であるのか、それを調べさせてもらおうと思い、つい先日Twitterの機能を使い、以下のようなアンケートを取りました。

「Jリーグサポーターと自認・他認されている方々に質問です」

◇小学生までチームに入って蹴っていた(いる)

◇中・高までチームに入って蹴っていた(いる)

◇大学・社会人でもチームに入って蹴っていた(いる)

◇これまでの人生、チームに入って蹴ったことはない

アンケートには冒頭にも書いた通り217人の皆様がご協力下さり、以下の集計結果が出ました。

ある程度の予想はしておりましたが、私が冒頭に書いた疑問

「もしかしてJリーグのスタジアムへ集まってきているファン・サポーターの多くはサッカーをしたことがないのかも」

を裏付けるだけの結果は出ているように思います。

例えば日立台であれば、10,000人のうちの約5,000人はサッカーチームでボールを蹴ったことがない、埼スタであれば35,000人のうち、17,500人はサッカーチームでボールを蹴ったことがない。

それ故に、「自分の観戦したサッカーの試合を評価する時に、その勝敗に大きく依存する傾向が強くなる可能性がある」

『だから何?』

とお思いの方もいるでしょう。

『スポーツなんだから勝敗は大切でしょう』

と言われる方もいるでしょう。

だから、今回は私のこの疑問と推測

「もしかしてJリーグのスタジアムへ集まってきているファン・サポーターの多くはサッカーをしたことがないのかも」

「勝利至上主義に疑問を感じないファン・サポーターは、そもそも自分でサッカーをしたことがなくて、だからサッカーを自分自身の尺度で測れず、評価をしようにもその勝敗という事実だけに大きく頼らざるを得ないのかも知れない」

に、217人の回答数とは言え、約半分のJリーグサポーターが「サッカーチームでボールを蹴ったことがない」と答えて下さったという事実だけを添え、疑問と推測にほんの少しだけエビデンスをつけられたいうところで留めておきたいと思います。

Jリーグの、日本サッカーの将来、その発展を考えた時に、現在の立ち位置を知ることは重要かつ欠かせないものです。

現在の立ち位置を知るべきはJリーグ側の問題とお考えになる方も少なくないと思いますが、既にそれを享受し、この先もそれを楽しみたいと思っている私のような者が、そうした実態をなるべく正確に理解したいと思うことにご共感下さる方もおられるでしょう。

つまり、私は特定の人や組織、既存の仕組み等をただ批判したいのでは決してありません。

このままで、この先に発展が見込めるのか見込めないのか、こだわっているのはそこだけです。

簡単に言ってしまえば、Jリーグがこの先にどうすれば観客数を増やし、社会的関心事としてより多くの人々の生活に欠かせないものとなっていけるか、そしてそれが成されなければ、残念ながら日本サッカーの未来はそれほど明るいものにはならないだろう。といった危機感なのです。

私がそうした危機感を抱くのは、サッカーが日陰の存在であったあの時代にはもう戻りたくないという思いが強いからなのかも知れません。

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