青いシャツを着た青年
Twitterのタイムライン上に現れたそのツイートには、横浜F・マリノスの青いユニフォームを着た青年の後ろ姿を写した画像が貼り付けられ、彼が出現したのが岐阜メモリアルセンター長良川競技場であったことから、この青いユニフォームを着た青年を批判するコメントが書かれていました。
そのツイートには3桁台の「いいね」がつけられ、リプライを読んでみても、概ねこの青いユニフォームを着た青年を批判する内容で、そもそもこうして赤の他人の姿を勝手に写真に撮って、勝手にSNSを通じて全世界に発信していること自体(しかも彼を批難する内容で)を咎めるようなリプライが1つも書き込まれていないことに、気持ち悪さを感ぜずにはいられませんでしたが、そうした社会通念としてのモラルについては一先ず横に置いておくとして、どうして長良川でマリノスのユニフォームを着てはいけないのか、今回はココの部分について私が思うことを書かせて頂きます。
(当該ツイートについては敢えてリンクを貼りません)
どうしてマリノスのユニフォームを着てきたのか
まず最初に状況を少し整理しましょう。
この「青いシャツを着た青年」が現れたのは、恐らく8月25日の長良川競技場で、画像はスタジアム周辺の公園部分で撮られたものだと思われますが、これがJ2リーグ「FC岐阜VS柏レイソル」戦の当日であったことから、対戦する両チームとは関係のないマリノスのユニフォームを着てスタジアムへやってきたこの青年が批難の対象になったものと思われます。
この前日の土曜日に名古屋・パロマ瑞穂スタジアムでJ1リーグ「名古屋グランパスVS横浜F・マリノス」戦が行われていましたので、この青年も土曜日の晩にその試合を観戦し、翌日のJ2リーグ観戦とセットでサッカー観戦旅行をしていたのでしょう。
彼がどんな気持ちで青いユニフォームを着て長良川に行こうと思ったのか、それは当人しか分からないことですし、挑発しようと思ったのか、スタジアムの雰囲気をぶち壊そうと思ったのか、「俺はJ1クラブのサポーターなんだぞ!へへん!」と優越感に浸ろうと思ったのか、そのいずれであっても別にどうということはありません。
可能性的には、当初土日に渡っての宿泊も考えておらず、名古屋でマリノスを応援したら横浜に帰ろうと思っていたけれど、あまりにも爽快な大勝劇をマリノスが見せてくれたので、ついつい名古屋で気持ちよく呑んでしまって、気がついたら新幹線の最終も無くなって、仕方なく駅周辺のマンガ喫茶で朝が来るのを待っていたら
「あれ?明日岐阜でJ2やってるじゃん」
となり、どうせ一泊するんだし、18:00キックオフならその日のうちに横浜まで帰れるジャンとばかりに、長良川へ向かおうとしたものの
「あ、泊まるつもりなかったから着替えないや、どうするユニクロで無地Tシャツ1枚買うか?俺。」
と一瞬考えたものの
「いや、それだけの為にTシャツ買うのは無駄遣いだな、だって想定外のマンガ喫茶代まで出費しちゃってるし、仙台とか鳥栖とかまだ遠方アウェイも残っているのに、例え1000円でも節約しなくちゃ」
と思いとどまり、少々汗臭いマリノスのユニフォームを単なる「洋服」として長良川に着ていった。という線も否めないわけで、つまりこの青年が長良川にマリノスのユニフォームを着ていった理由がどうであろうと、それはどうでもいいと言いますか、単純に受け取る側の感性次第なのです。
ドレスコード?トラブル回避?
「受け取る側の感性」
つまりこれは、この青いマリノスのユニフォームを着た青年がやってきた長良川競技場にいた「FC岐阜VS柏レイソル」を観戦しに来た人たちの感性であるわけですが、まあほとんどの方は「感性」などと言う面倒くさい感覚を「発動」しないままに、この青いシャツを着た青年を受け入れる、或いはその存在すらも気に留めない状態であったはずですが、中にはこのツイートをした当人のように、不快指数が100%に限りなく近い状態に陥って、社会的モラルを顧みることも忘れ、無我夢中で青いマリノス青年を盗撮し、それをSNSで全世界に発信するという「私刑執行人」になる人もいて、だからこそ「受け取る側の感性」次第だと思うわけです。
そしてこの「私刑執行人」になってしまう、或いは「道徳自警団」が出動してしまう、こうした形で「受け取る側の感性」が現れてしまうJリーグにある一部の世界観には、ホトホトついていけないと思えてくるのです。
と、こういうことを言っていると、必ずその反論として「ドレスコード」だの「トラブル回避」だのと言ってくる方々がおられるわけですが、先にも述べたように「受け取る側の感性」さえ穏やかであれば「トラブル」など起きようもありません。もしご自身の身の回りで「着用している服の種類でトラブル」が発生しそうになっていたら、是非ともそれを諫めてお止めになって下さいと私は申し上げたいし、「ドレスコード」についてはそれが必要と思われるのであれば、是非ともそれを観客の間で徹底出来るように、そのガイドラインを先頭きって明確に定めて下さいと申し上げたい。
私からすれば「ドレスコード」も「トラブル回避」も質の悪い難癖でしかありませんし、青いマリノスユニフォームの青年を長良川から排除する正当な理由になりようもない。
特定の民族や人種に対する差別ワードがこれでもかと言うくらいに書かれたTシャツや、明らかに特定の政党支持を意味するTシャツを着用してJリーグスタジアムの周辺をウロついている観客がいれば、それはJリーグの方針に照らして「ちょっとそれ脱いでもらえますか」と言うことは出来ますが、Jリーグスタジアムに当該外Jクラブのユニフォームを着てくることを「NG」にしようとするのには、相当無理な理由をこじつけない限りは無理でしょう。
と、ここまで言うと今度は「対戦する両チーム以外のユニフォームを着た観客がスタジアムにいると応援の士気に影響する」とか言われてしまうんでしょうが
「その程度で士気が下がる応援じゃナイーブ過ぎでしょ」
と申し上げたい。
Jリーグ道徳自警団
と、勢いに任せてツラツラと書いてきましたが、ここからは少々真面目に私の思いを書いて参りますので、もう少しお付き合い下さい。
私はこうした「Jリーグ道徳自警団」が湧いてきてしまう状況が非常に由々しき事だと思っています。
それは、Jリーグがあたかも「対戦するどちらかのチームを応援する人」だけがスタジアムへやってきているという思い込み、またはそうであって欲しいという希望的観測が、Jリーグの間口をどんどん狭いものにしていると感じているからです。
もちろん、スタジアムで特定のチームを全力応援することは楽しいと私も思っていますし、この感動をより多くの人が味わって欲しいと思ってもいます。
しかしながら、サッカースタジアムでどう過ごすのか、その普遍的スタイルが「全力応援」だとは思っていません。
むしろ対戦しているどちらかのチームに寄ることなく、純粋にサッカーというゲームを楽しむ、サッカースタジアムで過ごすひと時を楽しむスタイルにモデルケースなどはなく、Jリーグが多種多様な楽しみ方を受け止められる存在であって欲しいと思っています。
スタジアムを見ればゴール裏はそこそこ人が入っているのに、メインスタンドやバックスタンドはガラガラなんていう光景も少なくありません。
入場料の違いがそこに現れている面も否めませんが、それ以上に「全力応援以外の楽しみ方」をJリーグが提示出来ていないことが、こうした光景を生み出している大きな要因の1つであるようにも思っています。
長良川にマリノスのユニフォームを着た青年が現れたくらいで、彼を犯罪者のように晒してしまうJリーグの文化が発展していくように私にはどうしても思えません。
いいじゃないですか
「あ、そうか!昨日名古屋でマリノスが試合してたんだ。。なるほど」
で終わりでしょ本来は。