湘南・曺貴裁監督にパワハラ疑惑「我々は何を求めているのだろう」

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衝撃的?いやそうだろうなぁ??

衝撃的と言えばそうなのでしょうが「あぁきっとそうなんだろうな」とも思えるようなニュースが飛び込んできました。

湘南ベルマーレの曺貴裁監督のパワハラ疑惑報道です

曺監督と言えば2012年以来、実に今シーズンが湘南で指揮を執る9年目にもなるクラブの象徴的存在で、これまでもその言説などで非常に人間味の溢れるサッカー指導者として、Jリーグの世界に欠かせないキャラクターであるのは間違いのないことですが、そんな曺監督に対してにわかに浮上したパワハラ問題に、湘南を応援されているファン・サポーターの方々に限らず、多くのJリーグファンが戸惑ってしまっているのが実情でしょう。

報道を見ると

現時点(8月12日午後)で湘南ベルマーレは公式サイト上で以下のコメントを発信しています。

一部報道について

8月12日(月)発行のスポーツ報知と日刊スポーツにおきまして、湘南ベルマーレの監督である曺貴裁がパワーハラスメント行為を行った疑惑があるという内容の記事が掲載されております。
クラブとしましては、記事内容の詳細を確認し、Jリーグと協議の上で、報道された内容に関する事実関係の調査を速やかに行ってまいります。

応援して下さるサポーターの皆さま、ご支援いただいている企業の皆さまに、多大なるご心配をおかけすることにつきましては、大変申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。

既にこの件については、Jリーグ側もヒアリング調査に入る方針を示しているとのことで、もはやクラブ側の意向を越えた部分で何らかの判断が下される可能性が高い状況になっているはずですが、報道によると

同監督は、複数人の前でチーム関係者の能力を疑問視したように「どれだけ無能なんだ」「お前はウソつきだ」などと人格を否定するような発言を行った。また机をたたいたり、扇風機を蹴りながら選手に罵声を浴びせる行為が日常的にあった、とされる。

 精神的な苦痛や過度のプレッシャーから練習場に行けず、うつ病などを発症した関係者もいたという。クラブ親会社の「ライザップ」関係者によると、同社から今年1月に出向したスタッフは精神的に追い込まれ、6月からチームを離れたという。クラブの幹部は取材に「現地点で調査が入るという情報は聞いていない」、広報責任者は「クラブ内で問題にしているようなことは全くありません」と話した。

スポーツ報知8月12日配信より抜粋

といった情報も表に出てきており、事実関係がどうなのかは別にしてクラブの親会社であるライザップを巻き込んだ形で進展していくことも予想されます。

湘南のロッカールーム

と、ここまで書いてきて私が思うのは、サッカー選手やその指導者である監督やコーチに対して、我々は何を求めているのだろうということです。

選手には素晴らしいプレー、素晴らしいゴール、そしてピッチ上で最後まで戦う姿勢を求め、監督にはそんな選手たちをまとめ上げ、素晴らしいチーム、勝利できるチームを作り上げることを求めるのであれば、今回の件のように(事実かどうかは別にして)監督が扇風機を蹴りながら選手に罵声を浴びせようが、チーム関係者に対して「どれだけ無能なんだ」と言い放ったりしていたとしても、それらも全て「ピッチの為」なのであれば、問題視するのはナンセンスであるようにも思えます。

そもそも湘南ベルマーレは最近、2018シーズンを振り返るドキュメンタリー『NONSTOP FOOTBALLの真実 第5章』が大きく話題を巻き起こしたばかりで、このイヤーDVDに収録されているドキュメンタリーの中では、曺監督がハーフタイムのロッカールームでモノを蹴っ飛ばしながら選手たちに檄を飛ばしているシーンも出てきますし、曺監督だけでなく、選手たちが互いに激しい口調で言い合いをしている(取りようによっては罵倒しあってる)シーンも出てくるわけで、むしろこうした光景を改めて目にしたファンの間では、これらが好意的に取られたからこそ、他のJクラブの中にもこれに追随するような動き(リアルなロッカールームの様子を映像で見せる)も出てきていたはずです。

つまり、曺監督が『前の2トップ誰が行くんだよ!!!』と叫びながらテーピングなどが入ったカゴをバシっと蹴っ飛ばしていても、ある選手がある選手に対して『やることやってからキレろよ!』と怒りを思い切りぶつけたとしても、彼らが何を目指してそうしているのか、それを共感出来るからこそ、我々はそこに感動すらしていたわけです。

プロスポーツは人気商売

ただ、例えば会社の上司が日常的に『そこの営業先誰が行くんだよ!!!』と部下を怒鳴りつけ営業資料の入った段ボール箱を蹴っ飛ばしたり、自分はそれなりに頑張っているつもりなのに同僚から『やることやってからキレろよ!」と後輩のいる前で怒鳴り散らされたりすることがあれば、場合によってそれらがパワハラ問題へと繋がっていく可能性もありますし、例えその上司が会社の業績を上げることに本気で取り組んでいて、それ故に段ボール箱を蹴っ飛ばしていたとしても、許されないケースの方が多いのかも知れません。

それでも仮にこの上司が会社にとって非常に有益な存在であったとすれば、会社は彼を守ろうとするでしょうし、今回の曺監督についてもその構造だけを見れば同じことが言えるはずです。

そういう意味で、既にこうした情報がマスコミに漏れている時点で、曺監督にとって旗色はかなり厳しいわけですが、「Jリーグはプロスポーツ、プロスポーツは人気商売」という側面から考えてみれば、曺貴裁監督が選手たちも含めたクラブの関係者に対して日常的に人格を否定するような言動を繰り返し浴びせ、その言動を被った側の中に『精神的な苦痛や過度のプレッシャーから練習場に行けず、うつ病などを発症した』人が出ていたとしても、曺監督が指揮する湘南が、ベルマーレの挑戦するサッカーが支持され、絶大なる人気を博している事実があって、クラブが曺監督を「非常に有益な存在」だと再認識することになれば、万が一にも、この危機を回避できる道は残っていると考えることも出来ます。

ファンのJリーグ観が試されている

Jリーグがヒアリングしたところで、これは刑事事件でも民事事件でもありませんから、必ず「政治的な判断」が下されるでしょうし「曺さんが辞めたら嫌だ!」「曺さんのベルマーレが見たい!」という声が溢れてくれば、それを完全に黙殺することは判断を下す側にだって難しい。

さすれば、少なくとも湘南ではダメだったとしても、曺貴裁という指導者の道がこの先に絶たれてしまうようなことがないように展開させることは可能でしょう。

ただここで改めて問い直したいのが「サッカー選手やその指導者である監督やコーチに対して、我々は何を求めているのだろう」ということなのです。

「曺さんがそんなことをするわけがない!」とか「親会社であるライザップの思惑が絡んでいる!」とか、そうやって現実(ドキュメンタリーが”やらせ”でなければ当然ロッカールーム以外でも曺監督のパワハラめいた態度があったと考える方が自然でしょう)から目を背けたり、他者に追求の矛先を向けても、それを発した本人が一瞬カタルシスを感じられるくらいで、その先に何も生みだすことは出来ない。

選手たちは一先ず置いておいたとして、クラブ関係者の中にはプレッシャーで練習場に行けなくなる人や、うつ病になってしまう人が出てきていたとしても、それでも曺貴裁というサッカー指導者を評価できるのか、そうしたパワハラめいた態度も含め曺貴裁の指導スタイルであると受け入れることが出来るのか、言ってみれば我々のJリーグ観、プロスポーツ観が試されている局面ではないかと私は思うのです。

我々は選手や監督に何を求めているのだろう

つい最近、Bリーグのあるチームで指揮官がリーグ側から1年間の職務停止裁定を受けました。

香川ファイブアローズのヘッドコーチ(サッカーで言えば監督)がある試合の終了後、ロッカールームで選手に対し跳び蹴りや胸ぐらを掴むなどして暴言を吐いたことが直接的な原因とされていますが、関係者は口々にこうした状況が常態化していたと話しています。

件のヘッドコーチは自ら辞任しましたが、曺監督は扇風機は蹴っても選手に飛び蹴りはしていないとか、そういう加減の話ではなく、少なくともJリーグのファンが「パワハラめいた曺監督の指導法」を受け入れることを出来なければ、社会通念的には曺監督もこのBリーグヘッドコーチと同じと取られるでしょうし、実際にJリーグ側もBリーグのこの事案を相当意識するでしょう。

ただ、そしてそうした「社会通念」を作り上げてきたのも紛れもなく我々なのです。

3回目ですが改めて書きます。

「サッカー選手やその指導者である監督やコーチに対して、我々は何を求めているのだろう」

誰がこう言うから、多くの人がこう考えるからではなく、我々が、私自身が曺貴裁をどう思うのか。

これを問われているように私は思います。

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