関西サッカーリーグ FC TIAMO枚方のホームスタジアムで感じたこと

Jリーグ

関連リンク

 

Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

大阪の地域性

「大阪」と一言で言っても、そこには当然ながらいくつかの地域性があって、ガンバ大阪の本拠地、吹田スタジアムがあるのは「北摂」エリア、セレッソ大阪の長居スタジアムがあるのは「大阪市」エリア、そして今回私が取材したFC TIAMO枚方の本拠地、枚方市陸上競技場があるのは「北河内」と呼ばれるエリアであって、大都市大阪に存在しているJクラブ、或いはそこを目指すサッカークラブ間で、地域的な棲み分けが案外出来ているのだということは、試合会場でお会いした関西サッカーリーグの豊浦太郎さんに教えて頂いた受け売りなのですが(ちなみにJFLのFC大阪については東大阪(中河内エリア)をホームタウンとしJリーグを目指すことが市から承認されている)こうやって一見すると飽和状態にあるように感じられる大阪のJクラブ事情であっても、そこに地域という要素を加えてみると、それがなにか一気に立体化して新たな認識を与えてくれるわけであります。

とは言え、その「北河内」エリアにあって中心的な街として存在している「枚方」が一体どんな街であるのか、前出した豊浦さんのお話によると、そもそもは松下電器の城下でもあって、そういう意味でガンバ大阪への帰依心も少なからずある地域ではあるそうですが、大阪の地理に疎い私のような者にとっては、関東から枚方へ移動するにあたって新幹線の新大阪からではなく、京都から入った方が便利が良いという事実を知るだけでも、その地域性の一端を垣間見たような気持になり、やや小さめながらお洒落な京阪電車で最寄りの枚方市駅へ向かう道中では、新世界や道頓堀のようなコテコテの大阪とは全く異なる大阪を感じることも出来たのです。

FC TIAMO枚方のホームスタジアム

と少々前段が長くなりましたが、今回最も書きたいのはFC TIAMO枚方についてなのでありまして、このJリーグ昇格を目標として掲げる地域リーグのクラブが、ホームゲームで作り出している風景についてなのであります。

FC TIAMO枚方と言えば、どうしても今季から加入した実力者たち、二川孝弘選手、野沢拓也選手、田中英雄選手に注目が集まりますし、実際私もそこに対して全く関心が無かったかと言えば全然そんなことはなく、長くJリーグで、それもJ1リーグを中心とした舞台で戦ってきた選手たちが地域リーグでどんな姿を披露しているのか、ここに対してはかなり大きな興味を抱いていたと言っても過言ではないわけです。。

そして実際にゲームが始まると、直前に行われた天皇杯2回戦でセレッソ大阪を延長戦まで持ち込んだアルテリーヴォ和歌山を向こうに回し、野沢拓也選手も田中英雄選手も(二川選手はベンチ外)際立つ存在感でチームを牽引し、決定的な場面を何度も演出しながら、勝負を決するゴールを自らが、或いはそのお膳立てをし、それぞれが驚くばかりの質の高さを90分を通して披露し続けていたのが事実でして、率直に「これを無料観戦させるなんて少し気前が良すぎるんじゃない?」などと余計な心配をしてしまうほどでしたが、それと同じくらい、いや、それよりも大きなインパクトを与えてきたのが、暑かったこの日の試合会場に集まった人々が作りだしていた(公式発表は820人)サッカーを楽しむ「スタジアムの風景」だったのです。

これでもう十分なんじゃないか

1つ言えることは、そんな「サッカーを楽しむスタジアムの風景」を演出していたのが、両軍サポーターのトランペットを使った応援であったのは間違いないでしょう。

打楽器には打楽器の良さがありますが、メロディを奏でることの出来るトランペットの調べには、独特のムード、言い方を変えれば少し叙情的と言うか、心を揺さぶられる何かが確実にあって、ピッチ上で繰り広げられる熱戦にBGMが付けられているかのような快感すら覚えたわけで、鳴り物を使用した応援に制限の掛かることも少なくない地域リーグの試合会場事情にあって、トランペットを思う存分吹くことの出来る枚方市立陸上競技場で毎回ホームゲームを開催しているFC TIAMO枚方にとって、この風景がきっとスタンダードな姿であるはずですが(枚方にとって今季のホームゲーム平均観客数を加味すると「820人」はやや少ない人数なので、私が感じたムードはMAX状態では無かったのかも知れません)ピッチ上でプレーしている質の高いプレー、そしてこの快感すら覚えてしまうスタジアムの風景、これらを以てすれば、必ずしもこのクラブがJリーグに昇格しなくても、それはそれでいいのではないかと、そんな風にすら思わされられたのです。

そう思えたのには、現状あるJFLやJ3リーグの風景が多分に影響しています。

FC TIAMO枚方のホームゲーム今季平均観客数は1466人(第9節終了時点)で、これは9つある地域リーグに所属しているチームの中でナンバーワン。

原則有料試合であるJFLやJ3と単純に比較は出来ないとは言え、この観客数はJFLベスト5に確実に入ってくる規模ですし、J3リーグと同等と言ってもいい人数規模です。

そして何よりもこの日の試合会場からは、JFLやJ3の試合会場でもなかなか感じられないような熱気をも感じることが出来ました。

もちろん、そうした熱気が生み出されるその大きな要因として、野沢拓也選手、田中英雄選手といった実績ある元Jリーグ戦士の素晴らしいプレーがあったのは間違いのないことでしょう。

そして、現状のクラブ経営を考えれば、そうした(コストの掛かる)選手たちを抱えた状態でずっと地域リーグで戦うことがイメージされていないのも当然のことです。

それでも私はこう思えてしまいました。

『これでもう十分なんじゃないか』

クラブが標榜するものの「棲み分け」

先にも書いたようにFC TIAMO枚方の試合は有料にしてもいいと思えるくらいに魅力あるものでもありました。

しかしながら、ピッチ上から感じられる華やかさ、それが最大のセールスポイントなのだとすれば「820人」或いは「1466人」では何とも寂しい。

ただ、そうした華やかさ、野沢選手や田中選手のような地域リーグには少し不釣り合いと思えるような選手が仮にいなかったとしても、試合会場にトランペットの音色が響き渡り、それに乗せられるようにして熱気を帯びていく「1466人」さえいてくれれば、その空間が既に十分な魅力を備えていると考えることも出来るのではないだろうか。

そしてその「魅力」を感じられる人を1466人から1500人に、そして2000人、3000人と、枚方という地域で新たに作って行くことさえ出来れば、FC TIAMO枚方というクラブの価値が、単に「Jリーグに昇格」出来るか否かだけでは測れない、その地域にとって代えがたいものとなっていくのではないだろうか。

ガンバともセレッソとも地域的な棲み分けは出来ている。

であれば、クラブ自体の標榜するもの、それも「Jリーグ勢」と棲み分けすることを追求するクラブが日本のサッカーシーンで存在感を増していくようなことが起きてくれば、更なるサッカー文化の深化にそれが直接寄与するように私には思えてきたのです。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で