天皇杯2回戦 東京ヴェルディと法政大のどっちが【ジャイアント】だったのだろう?

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西が丘 天皇杯2回戦

アマチュアチームがプロチームに勝つことを「ジャイアントキリング」とするのであれば、西が丘で行われた天皇杯2回戦。西が丘で法政大が東京ヴェルディを破ったこの一戦がそうであったのは間違いありませんが、実際に現場でこの試合を見ていた私にとっては、「ジャイアントキリング」という言葉が全くしっくり来なかったわけです。

と言っても、J1を頂点とするカテゴリーのピラミッドに、大学サッカーは入っていないのだから、大学チームがJクラブ勢を破ったとしても、それが「ジャイアントキリング=格下が格上を負かすこと」にあたらない。といったやや屁理屈めいた理由からでは決してなく

「東京ヴェルディと法政大のどっちが【ジャイアント】だったのだろう?」

という、2つのチームの立ち位置、それが揺さぶられる試合であったことが、大きな理由だったのです。

法政の方が【ジャイアント】

 

【ジャイアント】を「大きい」と定義するならば、この試合における【ジャイアント】は間違いなく法政大でした。

GKの中野小次郎選手(3年)は身長200㎝。先制ゴールを決め、前線で力強いポストプレーを繰り返していた松澤彰選手(4年)は身長189㎝と、特に背の高い選手が法政大にはいましたが、彼らだけでなく、法政の選手たちは全体に身体が大きく、体格もガッチリしている。もちろん着用していたユニフォームの色がそうした印象をさらに強めたこともあったのでしょうが、この日の東京ヴェルディで明らかに法政の選手たちよりも恵まれた体格をしていると思えたのは、GKの柴崎貴宏選手、DFの近藤直也選手、FWのネマニャ・コイッチ選手の3人くらいで、他の選手たちは単純に身長が低いだけでなく、やや華奢にさえ見えました。

ユースからトップ昇格したばかりの選手、つまり18,9歳の選手も何人か先発に名を連ねていましたので、21,2歳の選手が中心の法政大と比較した時に、彼らの身体が小さく感じられたのも当然だったのかも知れませんが、ピッチ外で試合を見ている人たちがどう思おうと、中で戦っているヴェルディの若手選手たちは、相手を「格下」などとは全く考えていなかったはずです。何しろ相手の方が【ジャイアント】なんですから。

圧倒的熱量

たださすがに、身体の大きさで「格上」「格下」とするのは少々乱暴な話ですので、もう少し試合の中身にも触れていきましょう。

サッカーの戦術については、理論的に人に説明できるような能力を持ち合わせていない私であっても、法政大の方が遥かに「人を惹き付ける力」を持ったサッカーが展開出来ていたように思います。

法政大は体格にも勝っていますので、競り合いにも強いし、走力もあるのでポジショニングも適切で、ボールを拾いまくる。

攻撃の形もシンプルではあるものの、狙いは明確でしたし、実際に彼らが挙げた2つのゴールは、その狙いを追求した結果生まれた、つまり必然的に生み出された得点でした。

一方の東京ヴェルディは90分間を通して、チャンスらしいチャンスは作ることが出来ず、前線の外国人選手が個の力で打開しようとするシーンは何度か見せましたが、いずれも法政大の守備網に対しては全く通用していなかったと言っても過言ではありませんでした。

そして何よりも、この両者の戦いで最も印象的だったのは、ベンチから指示をする監督やヘッドコーチも含め、圧倒的に法政大チームの方がその熱量が高かったことです。

それが単に「Jクラブに一泡吹かせてやろう!」程度のモチベーションであるようには、私には感じられず、彼らにとって「この段階(対戦相手がJ2クラブである段階)」で敗れることなどあってはいけないのだ。と思っているのではなかろうかと、感じさせるほどに、終始高いテンションで戦っているように見えました。

ピッチ上の強者

しかし、それもある意味では当然なのかも知れません。

法政大は昨年のインカレで優勝した大学王者。

大学リーグ最高峰とも目される関東大学サッカーリーグ勢が全て2回戦までで敗退してしまった中、大学勢唯一3回戦へと駒を進めたのが九州大学サッカーリーグの鹿屋体育大。

まさに法政大は、関東大学サッカーのプライドを一身に背負って、東京ヴェルディとの天皇杯2回戦に臨んでいたはずで、素直に彼らが「チャレンジ」と言い切れる戦い、つまりJ1クラブ勢と対戦するまでは、絶対に負けられないと思っていたはずです。

ただ、私がここで言いたいのは、何もこうした大学サッカーの背景についてだけではなく、少なくともこの日の夜、西が丘のピッチに現れた2つのチームを見比べた時、プレーしている選手も、チームがやろうとしているプレーも、戦う姿勢も、そのどれを取っても、間違いなく法政大の方が「強者」であったということなのです。

そしてこの思いは、恐らくあの試合を西が丘でご覧になられた多くの方が共通して感じたことではなかったかと思います。

正直言って、タイムアップの笛が鳴ると同時に、西が丘はもっと騒然とするのではないかと想像していました。しかし、実際にはそうではなかった。

『どう考えても今日のヴェルディに勝ち目は無かったし、この試合が「ジャイアントキリング」に相応しい戦いであったかと言えば、甚だ疑問だ』

と思われた方も多かったはずです。

それでも多少はゴタゴタがあったようですが(私の座っていたメインスタンド中央付近でヴェルディサポーター同士の揉め事があったのですが、大騒ぎするようなものでも、大騒ぎするべきものでもありません)全体としてはクールにこの試合結果が受け入れられている印象でしたし、敢えて言うなら「法政大のサッカーは素晴らしかったね」が大勢を占めていたように思います。

どっちが【ジャイアント】だったのだろう

確かに「ジャイアントキリング」という言葉はキャッチーで、便利な言葉でもある。

ただ、サッカーの面白さ、奥深さを追求しようとした時に、「ジャイアントキリング」という言葉のバイアス掛かってしまうと、その向こう側にあるモノが見えにくくなってしまう傾向も間違いなくある。

この場合の「モノ」が指すもの、それは実像であっても偶像であっても、主観性がありさえすれば、私はそれこそがサッカーを楽しむ本質だと思うのです。

というわけで、今回のこの対戦。

天皇杯2回戦「東京ヴェルディ対法政大」について私がタイトルをつけるとするならば

「東京ヴェルディと法政大のどっちが【ジャイアント】だったのだろう?」

となるのでした。

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