「低価格で高機能なJリーガー」 今後0円Jリーガーは増えてくる。でも安いだけじゃ意味がない。その0円Jリーガーはどんな機能を備えているのか。自分の価値の作り方は普段から浪費や消費と考えず”投資”と考えること。生き様を投影できる場所こそがサッカーなんだ。投資とは価値を時差で作ること。
「0円Jリーガー」安彦考真選手(YSCC横浜)がツイッター上で呟いたこの言葉が持つ意味。
それを少しでも理解しようと、安彦選手ご本人と会って参りました。
安彦選手がそこでお話下さったこと、それを安彦選手の言葉とともに綴っていくシリーズ【0円Jリーガー安彦考真選手の行動原理】
その3回目は『0円Jリーガーのアイディア』というテーマでお送りいたします。

ー これまでは「思い」を伝えようとしてきましたけど、これからはそれを何かしらの「カタチ」にしていかなくちゃいけないと、もちろんピッチ内のこと、ゴールを決めるとか、それは言うまでもなく僕のマスト事項で、歯を磨くのと同じで当たり前にやらなくちゃいけないことですが。
Jリーガーが自分自身でライフスタイルを作っていかなくちゃ「君たち来年ないじゃん?」って思っちゃう。サッカー界がグローバルな世界だという観点で語られますけど、社会全体から見たら滅茶苦茶小さいじゃないですか。でもそこが世界の中心であるかのような感覚に陥っている選手も多いんですよ。
ただ、昨シーズン一緒にやった水戸の選手たちはそこに結構敏感になってくれて、色々な選手から相談も受けますし、この先どうすればいいのかという話をしたりもするんですが、僕も何かモデルケースのようなこと、ひとつの形を作ってあげないとと思って、アセンダーズの出資で無料のオンラインサッカースクール「ゼロスク」を立ち上げました。そこに協力してくれる選手も増えてきています。
無料のオンラインサッカースクールなので、協力してくれている選手たちも現在は「0円」で参加してくれてます。いずれはマネタイズ(収益化)していく必要も出てくるかも知れませんが、それよりも僕がサッカー選手の新しい生き方、ブランディングの仕方を見せなくちゃいけないという思いが強い。
「ゼロスク」に参画する現役Jリーガーは、YSCC横浜の選手を中心にその輪が徐々に広がってきているそうです。
敢えて「無料」にすることで、選手たちの所属クラブ、或いはスポンサーとの調整といった作業が軽減され、選手が参画する上でのハードルも低くなっているのでしょう。
SNSで自らをアピールすることですら「選手の目を気にして」躊躇してしまいがちなJリーガーであっても「サッカー技術を教えること」は自然に出来ることなのかも知れません。
ー 選手が互いに「それぞれだよね」となっていくのには、選手たちがみんなアクションを起こしている状態になっている必要があります。
無理にでもそういう環境を作んなきゃと感じているんですが、「勝利給のクラウドファンディング」をずっとやりたいと思っていて、クラウドファンディングの何が良いかって言えば、ファンやサポーターの方にとっても勝利につながる可能性が生まれるので嬉しいとは思うんですけど、選手たちがどんな努力や思いで戦っているのか、それを可視化しないとペイしてもらえないんです。
ピッチで最後まで諦めない姿勢とか、フィジカルトレーニングに必死で取り組んでいる姿とか、その選手の人間性についてまで、それらを日常的に情報発信しながら、応援してくれる人を巻き込んでいく。当然選手たちにもそれによって自覚が生まれてきます。
もし実際に「勝利給のクラウドファンディング」がされるようになっておカネが集まるようになってきたら、選手たちはトレーニング場や試合会場に来るときの態度や服装も変わるでしょうし、アルバイト先での立ち振る舞いだってきっと変わっていくはずです。
アルバイト中に接するこの目の前のお客さんが、勝利給を支払ってくれるかも知れないと思えば、なるべく好感を持ってもらおうとなりますよね。もしかしたら最初は拙いかも知れませんが、それを心から出来るようになれば徐々に人間力形成にも繋がっていくんじゃないかと、確かにそこには「おカネ」が介在するんですけど、そのおカネを得る為に「お前はどういう人であるんだ」と、そういう世界観を「勝利給のクラウドファンディング」は表現出来ると考えているんですが、僕は現実的に出来なくはないと思ってます。
まさに「クラウドファンディング」でファンを作り、そこからJリーガーとなった安彦考真選手であるからこそ、この「勝利給のクラウドファンディング」が何を選手たちにもたらせるのか、それを自身の経験を重ねることで明確にイメージ出来ているのでしょう。
そしてこうしたアイディアが安彦選手から生まれてくるのには「Jリーガーが所属クラブから報酬を受け取る」という常識が、ことJ3においては成立していると言い難い現実、これが「Jリーガー」という大雑把な概念の中ではどうしてもぼやけてしまう。そんな側面もあるのでは無いでしょうか。
ー 「アスリートのシェアハウス」もやりたいですし、「入場料の後払い制」もやってみたいというのはあります。アイディアレベルでは他にもいくつかありますが「アスリートのシェアハウス」については知り合いの不動産屋さんに物件探しも依頼していて、どうやってマネタイズ(収益化)出来るかは分からないですけど、最初はYSCC横浜の選手だけでシェアハウス作っちゃおうかなとか、他のアマチュアアスリートも含めた形にしてもいいのかなと考えてもいます。
「入場料の後払い制」についてはどうしてもやりたいと思っていますけど、クラブやリーグとの兼ね合いもあって直ぐには全てを変えられないので、例えば僕自身が20枚くらいチケットを買って、僕がその20席分の企画を打ち立てる。仮に¥2000×20枚で4万円だとして、その分の赤字を出すかも知れないし、もしかしたらそれが8万円になって返ってくるかも知れない。で、僕が1分も出場していないのに¥5000くらい払って下さる方がいたら面白いなとか(笑)
ー 単にインパクトを残したいっていうのではなく、こうしたチャレンジをすることで、旧態依然とした「サッカームラ」にメスを入れたいんです。チケット代にしても例えば1枚¥2000だとして、その¥2000の根拠ってないと思うんです。それならば今後「投げ銭」方式のアプリを作っていくとかそういうのもいいんじゃないと。
「クラブが自前でカネ稼げ」とか、色々バッシングも出てくるかも知れませんが、おカネが入る入らないと言うことよりも、それによって選手たちのマインドチェンジが生まれるんだよと、それは理解して欲しいですね。
Jリーグというプロスポーツ興行の話であるので、それが例えJ3の話題であったとしても「金銭」に関するキーワードが数多く安彦選手の口からも出てきますが、ここまでに触れた「勝利給のクラウドファンディング」も「入場料の後払い制」も、その本丸は「J3リーガーが自らの価値を高めていく」ことを促す、その仕組みについての話であって、「サッカームラ」の常識の中でだけ生きていってしまえば、それほどハッピーな将来は待ち受けていないと、それを安彦選手自身が自らの行動で指し示していると言えるのかも知れません。
それにしても驚くべきことは、こうした様々なアイディア、その全てを安彦選手自身が発案していることです。
もちろん、それを具現化していく上で「プロ契約」を結んでいるアセンダーズをはじめとして「知り合いの不動産屋さん」までも巻き込んでいるわけですが、実は私にとってこの事実が意外でもあり、不思議とホッとする部分でもありました。
【0円Jリーガー安彦考真選手の行動原理】というタイトルでお送りするシリーズの3回目、今回は『0円Jリーガーのアイディア』というテーマで綴って参りました。
次回は『0円Jリーガーのモチベーション』をテーマにお送りいたします。