自治体職員サッカーの世界に「社会人サッカーの理想形」を見つける

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自治体サッカー取材から得た貴重な気づき

きっかけは東京都サッカー協会の広報誌に掲載する大会レポートの取材依頼を頂いたことで、私自身、ほとんどその実態を知らない世界の話でしたし「知らないからこそ取材してみるか」くらいの軽い気持ちで現場へ行くことになったのですが、思いのほか気づかされることが多く、こうしてブログ記事にそれを書いてみようというところまで辿り着いてしまったわけです。

自治体職員によるサッカー大会。

1年の中でも最も蒸し暑い時期に行われている全国大会「全国自治体職員サッカー選手権」に向け、日本中の「役人サッカーチーム」が各地域で熾烈な予選を戦う中、東京都でもその出場3枠を争って、5月半ばから予選がスタートしておりました。

私が2週に渡り現地取材をしたのはまさにその全国大会出場権を懸けた試合である準決勝2試合と、3位決定戦、そして東京都ナンバー1を決する決勝戦の合計4試合。

そこまで勝ち上がってきた4つのチーム(東京消防庁、杉並区役所、町田市役所、八王子市役所)が戦う姿、また選手や監督の話された生の声、それらから得ることの出来た貴重な気づき。

それは私が日本サッカーに求めるひとつの理想形が体現されていることの「発見」でもありました。

10年後も今と同じようにサッカーをしている

第48回全国自治体職員サッカー選手権 東京都予選 優勝 東京消防庁

「あと10年経ったとしても今と同じように仕事をしながらこのチームでサッカーをしていると思います」

こう話してくれたのは、これまでに全国大会で何度も優勝した実績を持つ、東京都自治体サッカー界の絶対王者、東京消防庁のある若手選手。

彼は消防勤務の宿命である「24時間シフト」を縫うようにしてチームの活動にも勤しみ「勤務するときは必ず数時間の訓練がある」と言いながらも「でもサッカーで身体を動かすことはリフレッシュにもなるんです」と軽やかに話してくれました。

「勤務するときの訓練」とはもちろん、防火、救命を実行すべく厳しい消防訓練、或いは体力づくりを目的とする訓練を意味し、その上「24時間勤務中に仮眠は取れますが災害があれば出動する必要があります」と言うような過酷な任務に当たっているのに、その余暇でさらに身体を使うサッカーに取り組むというタフさを聞くにつけ、ひたすら自身のだらしなさを恥じるばかりでした。

彼らが皆屈強な身体の持ち主で、ピッチ上でも規格外の身体の強さを見せつけていたことに改めてその日常の過酷さを感じたりもしたわけですが、アスリートとはまた違った逞しさを感じさせる東京消防庁の若手選手が「10年後も今と同じようにサッカーをしている」と当たり前のように話すことに、私はある意味で「社会人サッカーの理想形」を発見することが出来たのです。

サッカーを楽しむ上でのハードル

第48回全国自治体職員サッカー選手権 東京都予選 準優勝 杉並区役所

高校や大学までサッカーに打ち込んでいた人がいざ社会に出ると、途端にそれが続かなくなってしまうという実情。

実際に私自身も、就職するとすぐに土日勤務が当たり前の部署に配属されたことで「ボールを蹴る習慣」が否応なしに激減しました。

「社会人になったからには本気でスポーツに打ち込むなんて出来っこないだろ」

こんな言葉もそれを当然のこととして受け入れてきましたが、この1年くらいの間に地域リーグや都県リーグでプレーする「社会人サッカー選手」の姿を近くで感じるようになって、果たして「社会人が本気でスポーツに打ち込む」ことは不可能なのだろうか、いや、不可能と言うよりも、それは「社会人としての常識」からかけ離れた特殊なことなのだろうかと思うことも増え、いわゆる「アスリート」と呼ぶに相応しいような地域リーグのサッカー選手とまではいかなくても、毎週のように仲間とサッカーを楽しむ程度のことをするのに、これほどハードルが高い社会なのであれば、それはむしろその社会の方がおかしいのではないかと思えてきたのです。

ここで言う「サッカーを楽しむ上でのハードル」には様々ありますが、例えば過去の私のように土日に仕事があるというのもそうですし、転勤や転職によって生活環境、生活パターンが著しく変化するといった事情、また結婚や出産などライフステージの変化なども含めれば、この社会で暮らす人々がスポーツを楽しむ習慣を持つことなど所詮「夢物語」とすら思えてくるわけです。

ただそうであっても、一般の民間企業に勤めている人と比べれば、市役所や区役所に勤めている人は転勤や転職のリスクも小さく、そういう意味で職業上の「ハードル」については若干のアドバンテージがあるでしょうし、そうだからこそ「10年後も今と同じようにサッカーをしている」という言葉を発することも出来ているのでしょう。

自治体サッカーは「社会人サッカーの理想形」

第48回全国自治体職員サッカー選手権 東京都予選 第3位 町田市役所

3位決定戦に勝利し2年連続で全国大会出場を果たした町田市役所のある選手は

「私は1度民間企業に入社しましたが、どうしてもサッカーがしたくて町田市役所に入ったんです」

と話してくれました。

まさかサッカーをしたくて市役所に入る人がいるとは想像もしていませんでしたが、それが地域リーグやJFLレベルで戦っている選手ではなく、週に1回の練習と週に1回の練習試合、そして年に数回の大会出場が活動の全てとも言える、一般的な「自治体サッカー」の活動頻度であっても、それを1人の社会人が自分の生活に取り込もうとした時に、勤めていた会社を辞め転職するという判断をせざるを得ない実態を表わしてもいるわけで、この社会のスポーツ文化がいかに脆弱であるのか、それが如実に表れているエピソードだとも言えるのかも知れません。

つまり、私が自治体サッカーの世界に「社会人サッカーの理想形」を発見したと書いたのは、少なくとも自治体サッカーの世界には毎週のようにサッカーに打ち込み、年に何度かは大きな大会にも出場し、しかもそうした生活を「10年後も同じように」続けていけるだけの環境があるという事実を指してのことで、本来的にはそうした世界を自治体サッカー以外にも広げていくのが理想だと考えますが、直ぐに何もかも変えられないのであれば、先ずは今ある「社会人サッカーの理想形」自治体サッカーの世界を大事にしていくことも必要なのではないかと、「発見」の先にそんな気づきがあったのです。

「自治体サッカーの世界を大事にしていく」

これを具体的に示すとすれば、単にその世界に関心を持つ人を増やす、例えば今回のような大きな大会に沢山の観客が集めると言ったことではなく、現在高校や大学でサッカーに打ち込んでいる若者に対し「社会人サッカーの理想形」としての自治体サッカーの世界をいかに提示し、その将来設計の選択肢の1つとして認識させられるかではないかと思ってもいます。

自治体サッカーにも「社会人サッカーの理想形」があるんだと、あらゆる世代、あらゆる立場にある人たちが認識していくことは、決して日本サッカー界、さらには日本社会の将来にとって悪いことではないように私は思うのです。

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