JFL東京武蔵野シティ 池上監督が語る「土曜日は得意じゃない」

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土曜日は得意じゃない

『ただ、土曜日なんですよね、うちは土曜日あまり得意じゃないんですよ』

これは、5月19日に行われたJFL第8節「東京武蔵野シティFC VS 鈴鹿アンリミテッドFC 戦」の試合後監督会見の席で、武蔵野シティの池上寿之監督が、次節のFCマルヤス岡崎戦に向けたコメントを求めらた際に第一声として出てきた言葉です。

これまで絶好調とは言えなくとも「JFLの門番」と呼ばれる2つのチーム、つまりHonda FC とソニー仙台に敗れた以外は全ての試合で勝利を飾り、この日も素晴らしい修正力で後半一気に流れを変え、今シーズンの昇格チームとは言え、エフライン・リンタロウという圧倒的なストライカーを擁し、全く油断できない相手だった鈴鹿アンリミテッドを一蹴し、次節はいよいよ今シーズン絶好調のマルヤス岡崎とアウェイで戦うという状況の中、十分勝算はあるとした雰囲気を醸し出しながらも、池上監督は試合が開催される曜日を気にする発言をしたのです。

『土曜日はあまり得意じゃない』

この言葉が持つ意味、これが単なる「苦手意識」といったものではないこと、そしてこのカテゴリーで戦うチーム、選手たちの多くがおしなべて「土曜日はあまり得意じゃない」と考えていること。

それを池上監督のコメントから改めて認識した私でしたが、その一方でこの「土曜日はあまり得意じゃない」という要素が、社会人サッカーを知る上で1つの大きなヒントとなるのではないかと考えたりもしたわけです。

武蔵野シティの選手たち頑張れ! でいいのかな。。

池上監督が「土曜日はあまり得意じゃない」と話したその大きな理由。

それは東京武蔵野シティというチームが、体面上は「Jリーグ100年構想クラブ」の認定を受ける「Jリーグを目指すクラブ」のチームでありながら、実情としては所属するほとんどの選手がサッカーとは異なる本業に勤しみ、そこで生計を立てるアマチュア選手だということが大きく影響しています。

東京武蔵野シティと言えば、どうしても前身の横河電機サッカー部がイメージされてしまいがちですが、現在チームに所属する選手で横河電機の社員として働いている選手はほんの一握り。

すると当然ながら選手たちのスケジュールを合わせるのは簡単ではなく、土曜日にリーグ戦が組まれている場合は、その前日練習に集まる選手も平日であることから限られてしまうわけです。

そしてこれが遠征試合であったりすればさらに大変です。

前日金曜日の午後移動バスを運行させようにも、数人の選手しか乗車出来ないのでは意味がなく、仕事を終えた選手たちを集合させ夜間に遠征先へ新幹線移動するにも宿泊費用が余計に掛かってしまう。そうすると試合当日にチーム全体で移動するしか手段がなくなってしまうのです。

次週に控えたマルヤス岡崎戦については、それでも移動距離が比較的短い(愛知県豊橋市)方でしたが、それでも池上監督は「当日全員で新幹線移動ですね、宿泊費までは出せないので」と話されました。

結果的にこの試合、6月1日に行われたJFL第9節でマルヤス岡崎を1-0で下した東京武蔵野シティは、順位を一気にリーグ3位にまで挙げることに成功しましたが、その背景にこんなチーム状況があったのかと思うと、何とも言えぬ感情が湧き上がってもきます。

ちなみに東京武蔵野シティの今シーズンリーグ日程で、土曜日に行われる試合数は10。

うちホームゲームは4試合、残りの6試合はアウェイゲーム。

その中には、大分や奈良といった日帰りするとなるとかなり慌ただしくなりそうな地方での試合も含まれており、現状としては「武蔵野シティの選手たち頑張れ!」としか言えないのですが、せめてそれらの遠征先でスタジアムが沢山の観客で溢れかえっていて欲しいと切に願うのであります。

越えていかなくてはならない?

と、東京武蔵野シティのことばかりを書いて参りましたが、こうした現実は先にも書きましたが、JFLや地域リーグなどで戦っている社会人チームが共通して抱えている難題と言えるでしょう。

そしてこうも思うのです。

「この難題は必ずしも越えていかなくてはならない壁なのだろうか」と。

月~金でガッツリ働ているサラリーマンが、土曜日の早朝から地方に移動し、そこでかなり高い強度でサッカーを行い、試合が終わったと思ったらすぐに家へと帰る。

それだけでも心身に与える負担は計り知れないのに、時によっては「何で勝てないんだ!」と批難されてしまう可能性すらある。

さすがにJFLや地域リーグでチームや選手たちにブーイングが浴びせかけられているシーンはほとんど目にしたことがありませんが、JFLと大して変わらない実態がJ3リーグにはありますし、彼らが負けてブーイングされているシーンは決して珍しくない。

もう一度書きます。

「この難題は必ずしも越えていかなくてはならない壁なのだろうか」

つまり何が言いたいかと言えば、JFLやJ3レベルのクラブ運営体制、選手たちの置かれている就労環境、これが今のまま何一つ変わっていかない、変わっていく兆しが見えないのであれば、即刻「全国リーグ」の体を放棄した方がいいのではないかと言うことです。

全国リーグの是非

もちろん、そんな困難な環境にあっても選手たちは必死になってプレーするはずですし、仮にブーイングされたとしてもそれを真摯に受け取ってくれるでしょう。

また、そうしたある意味で「人間臭い」チームの在り方に共感する人たちもいるかも知れません。

ただ、もしこれが、例えば「どんなに遠い遠征先であっても車で2時間圏内」くらいの地域内で行われているリーグであれば、そこで戦う選手たちも、仕事、サッカーの両方ともにより力を注ぎこむことが出来るのではないでしょうか。

現状の「全国リーグ」による負担の大きさがあり続けると、仕事かサッカー、そのいずれかを諦めざるを得ない選手は減って行かないでしょうし、もしかしたらそれによって日本サッカー界が失ってしまうものもあるかも知れません。

そうした事態を最低限にする為に、例えば東京武蔵野シティのようなチームが、年に2回も宮崎へ遠征して、他にも大分、松江、今治、滋賀、大阪、奈良、三重、青森、、、といった具合に、リーグの約半分を遠方で戦うアンバランスさは是正していく必要があるかも知れません。

新幹線や飛行機、乗り心地抜群な移動バス、ホテル宿泊費、こうしたおカネを平然と出せる、その段階にならないうちは、全国リーグが時期尚早なんじゃないかと、私はそう思うのです。

そう言えば、昨シーズン、事実上のJ3昇格を決めた直後、ヴァンラーレ八戸の選手、チームスタッフの全員が、試合の行われていた三重・桑名近辺から在来線で名古屋駅まで移動しているところに偶然乗り合わせたことを思い出しました。

全員が大きな荷物を抱えているのに立ったままの乗車です。

当時のヴァンラーレ八戸 葛野昌宏監督に「J3へ行ったら在来線には乗らなくても済むんじゃないですか?」と聞くと「いや、どうですかね。。でも俺は電車好きなんですよ」と答えてくれました。

その後、八戸の選手たちは東京まで東海道新幹線で移動し、そこから東北新幹線に乗り換え、地元八戸に到着したのは23時を過ぎていたと記憶しています。

監督も選手もタフなんです。常人では考えられないくらいに強いんです。

でも、だからってそこに甘えて無理をさせ続けるのが果たして正しいことなのか。

皆さんはどうお考えになりますか。

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