大本命がリーグ序盤で出遅れ 栃木シティFCと南葛SCの共通点

コミュサカ

関連リンク

 

Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

栃木シティと南葛SCのリーグ序盤戦

大本命だと思われていたチームの調子がリーグ序盤になかなか上がってこない状況は、洋の東西を問わずどの世界にも良くあることですが、私が日頃取材をしている非常に身近な2つのリーグにおいても、そうした状況が今まさに出てきておりまして、その1つは関東リーグ1部の栃木シティFC、もう1つが東京都1部の南葛SCなのであります。

かたやJFL昇格を命題とし、かたや関東リーグ昇格を命題とするチームでありますが、この2つのチームに共通しているのが、今シーズンも掲げているその「命題」を昨シーズン叶えていてもおかしくなかった、つまり「かなり本気で昇格をイメージしていたのにそれを果たせず、今シーズンこそはと更に強い思いでリーグ戦に挑んでいるチーム」であるということです。

栃木シティFCは、昨シーズンこのチームを牽引した森島康仁選手(藤枝MYFC)こそ移籍してしまったものの、ザスパクサツ群馬を退団した松下裕樹選手を筆頭に、クラブがJFLからの降格に伴い経営を一新し「地域リーグチームでありながら全員がプロ契約選手」という驚くべき体質変換を遂げた昨シーズンのチーム編成を上回る勢いで実力ある選手たちを次々に補強し、新たな指揮官として‟赤帽”岸野靖之CSOの懐刀、チョン・ヨンデ監督を迎え入れ「JFL昇格」という命題を叶えた瞬間から逆算しながら着実に「勝てるチーム」を作り上げようとしているように私には見えていました。

一方の南葛SCについては、栃木シティFCのソレが霞んで見えてしまうほどの力の入れようで、到底このカテゴリーでプレーしている光景が想像出来ないような選手たちまでもが補強され、その指揮官として昨シーズンの終盤に選手としてこのチームに加わり、関東リーグ昇格の潰えたあの試合にも出場していた福西崇史さんが監督に就任。リーグ開幕と同じ時期に行われた「天皇杯への道トーナメント」である東京カップでも次々と格上である関東リーグ勢を破り、そのチームの力がもはや東京都リーグのレベルではないのかも知れないと私自身も感じていました。

それでも、この2つのチームのこれまでのリーグ戦績は、栃木シティFC(1勝1敗3分)南葛SC(3勝2敗1分)と、およそ「大本命」と呼ぶには物足りないどころか、昨シーズンの彼らの戦績を大きく下回る結果しか出せていないのです。(※リーグ戦績は5月19日日程終了時点)

リーグ戦の先にあるステージ

この戦績を以て「関東リーグは難しいリーグだ」「東京都1部は魔境だ」と片付けてしまうことも出来ますが、その背景やチームの情報を知れば知るほど、どうも釈然としない思いも湧いてきてしまい、そこに一旦の落ち着きどころを見出そうと、あ~でもない、こ~でもないと考え抜いた挙げ句、それでも完全にスッキリしたわけでは決してありませんが、もうひとつ、この2つのチームに共通する要素を見出すことが出来たのです。

釈然としない思い、それを完全にスッキリさせることは出来ないかも知れませんが「栃木シティと南葛が苦しんでいるらしいけど、どうしてなの?」と言った疑問に30%くらいの満足度でお答えするとしますと、それはズバリ

『栃木シティも南葛もリーグ戦の先にあるステージで勝つことを目指しているチームだから』

なのであります。

もちろん、そうであっても、この2つのチームがリーグ戦を決して軽視しているということでは無いでしょう。

ただ、栃木シティFCも南葛SCもリーグ戦を戦いながら、常にその先にある戦いに向けたチーム作りを並行して行っているように私には感じられています。

「リーグ戦の先にあるステージ」

JFL昇格を命題とする栃木シティFCにとって、それは11月に行われる全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)であり、関東リーグ昇格を命題とする南葛SCにとっては、同じく11月に行われる関東社会人サッカー大会(関社)であるわけです。

これらの大会を勝ち抜くのがどれだけ難しいことなのか、これは私のように昨日今日、このカテゴリーのサッカーを見始めた人間では正直計り知れないところもあるのですが、昨シーズンこの2つの大会を取材した際に感じた過酷なレギュレーション(リーグ方式連戦の地域CL、一発勝負トーナメント連戦の関社)そしてそこに漂う異様な空気、それらを体感しただけでも、件の2チームが「リーグ戦の先にあるステージ」に対して、並々ならぬ思いと最善の準備を図ろうとする心情くらいは理解するのにそれほど難しくはないのです。

今度こそ11月に勝つために

リーグ戦が開幕する以前、栃木シティFCのトレーニングマッチを取材した際、このチームの戦い方、その指針を決めている岸野CSO(当時)は、地域CLの1次ラウンド(松江開催)を振り返り、今シーズンこそはあの時の松江シティが見せたような圧倒的な強さをそこで発揮するんだと、強い語気で話して下さいました。

また南葛SCについても、リーグ2敗目となったホームゲーム、対CERVEZA戦を終えた後に、今シーズンから福西監督をヘッドコーチとしてサポートし、自らもCBとしてチームをまとめている柴村直弥選手から「11月の関社で勝てるチームを作っていくこと」がこのチームにおいて高いプライオリティが常にそこへ置かれておりことを改めて聞くことが出来ました。

ともにリーグの「大本命」であることが、対戦相手のモチベーションを最大限に引き出してしまっている実情もあるでしょうし、なかなか情報を取るのが簡単ではないこのカテゴリーにあって、栃木シティFCと南葛SCは、ある意味「丸裸」にされていると言ってもいいかも知れません。

そんな状況を堂々と受け止めつつ「一戦必勝」で立ち向かってくる相手に対し、その先を見据えた戦い方でそれを退けることの難しさ。

「大本命」とされるチームがリーグ序盤で苦戦しているのは、こんなところにも理由があるのかも知れません。

とは言え、栃木シティFCと南葛SCが持っている潜在能力の高さは明らか。ゆえに、たかだかリーグ序盤で少々出遅れてしまったくらいで、その価値に傷がつくようなものでも無いでしょう。

私自身は、2つのチームが孕んでいる、このカテゴリーでは目にしたことのないような素晴らしいサッカーを見せる可能性と、そうであるからこそ生み出される新たな価値創造、そしてその先にあるサッカー文化の醸成。

これらを大いに期待する気持ちは全く変わりませんし、今後もより熱心に関東サッカーリーグと東京都リーグを見つめていきたいと考えております。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で