Jリーグクラブライセンスの示す「スタジアム基準」なんて必要ない

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スタジアム基準なんてそれ自体必要ない

正直言って、Jリーグクラブライセンスに定められている「スタジアム基準」なんて、それ自体が必要ないと私は考えているんです。

あるサッカークラブがJリーグクラブになろうとする時、先ずは「Jリーグ100年構想クラブ」の認定を受け、その上で今度は「Jリーグクラブライセンス」のうちの「J3ライセンス」の交付を受け、その次は「J2ライセンス」の交付、「J1ライセンス」の交付と続いていくわけですが、「Jリーグクラブライセンス」が示す3つの基準「競技基準」「施設基準」「財務基準」の中でも、「施設基準」に関わる部分、つまり本拠地としてスタジアム基準をクリアする施設を用意出来るのか、ココがカテゴリーを上げていく上で最大のネックとなっているのは明らかです。

もちろん「競技基準」も「財務基準」もそれらをクリアするのは簡単ではないですが、「施設基準」が圧倒的にカネを必要として、もはやクラブ単体の予算だけでは到底なし得ないものとなってしまってもいるわけです。

スタジアムは魔法の杖か

と、Jリーグクラブ昇格の難しさと、その最大理由が「施設基準」つまり、その多くは「スタジアム基準」にあることを書いた上で、冒頭の

「スタジアム基準なんてそれ自体が必要ない」

に展開して参りますが、だからと言って私は「スタジアム基準さえ無ければ昇格出来るクラブがどんどん増えるのに」といったお花畑的発想をしているわけではございませんで、「スタジアム基準なんてそれ自体が必要ない」と思う大きな理由は、この基準が日本サッカー界におけるJリーグ理念の深化を考えた時に、決して本来的ではないと考えているからなのです。

J3からJ2へ、J2からJ1へとチームが昇格していく時、否応なしにクラブ経営規模の拡大という現実が「降りかかって」きます。

所属選手の質を上位カテゴリーで戦えるものとしていく為に、既存の選手たちを強化するにしても、新たに実力ある選手を獲得し補強するにしても、それをするだけの資金が必要になりますし、クラブ運営に関わるマンパワーも大きくせざるを得ない。

現在の実勢を見ても、J3クラブ約5億、J2クラブ約15億、J1クラブで約40億円の事業規模となっています。

事業規模ですので、大雑把に言ってしまえばこれは「入ってくるお金」であり「出ていくお金」の大きさだと言えますし、私はこの事業規模がJリーグの最終形態だと思ってもいませんが、いずれにせよ、カテゴリーを上げるということが、イコール「経営体としての規模拡張」を意味することだけは間違いありません。

つまり物凄く簡単に言ってしまえば

「昇格したカテゴリーで戦えるチームを作るために、それまでとは次元の異なる額のお金を集める必要が生じる」

となるわけで、果たしてこれを達成させるのに、リーグの定める「スタジアム基準」を満たす本拠地の存在が必要不可欠であるのか、言い方を変えれば「基準を満たしたスタジアムが魔法の杖となってお金を集めてしまう」なんてことがあり得るのかと、そう思うからこその「スタジアム基準なんて必要ない」なわけであります。

スタジアム建設のパッケージ

もちろん、Jリーグクラブが既存のスタジアムを大改修、或いは新スタジアムを建設、そうした事業を進めていく中で、地域行政や地域コミュニティを巻き込み、クラブの存在価値やその将来像についてのコンセンサスが図れていく。こうした現象も多分にあるでしょうし、Jリーグ側がライセンス制度を導入している意義がそこにあるという解釈も出来るでしょう。

しかしながら、それ(地域を巻き込みクラブの存在価値や将来像についてのコンセンサスを図る)がJリーグの定める「スタジアム基準」に則ったホームスタジアムを新たに用意することでしかなし得ないものであるのかと言えば、私はそうは思わないわけです。

むしろこうした一連の流れが、Jリーグ側によるリスクヘッジ「自治体からカネを引き出させてスタジアム建設を実現させる」という1つのパッケージビジネスとしても事実上成立しているわけで、非常にうがった見方をすれば、Jリーグ側にとって「Jクラブを目指します!」と言っているサッカークラブが「カモネギ」であると取ることすら出来ます。

実際に「Jクラブを目指します!」の第1段階、つまり「Jリーグ100年構想クラブ」の認定を受けているクラブの中には、必ずしもJクラブになることが、絶対的な目標となっていないケースもあるわけで、状況的事実だけを見ても、Jリーグ側からの積極的な働きかけで「Jリーグ100年構想クラブ」の認定を受けてしまった側面が否定できないケースもあります。

スタジアムを造ることは是?

10あれば10通りの、100あれば100通りの「地域におけるサッカークラブの価値向上」を果たしていく方法があって然るべきだし、そこにこそ、Jリーグの目指す「サッカーと地域社会の在り方」が存在している可能性もあるのに、それを全て端折って「クラブライセンス制度」で縛り上げた上に「基準を満たしたスタジアムを造ることこそ是」とした認識を植え付けてしまっている実情がある。

FC町田ゼルビアの観客数が野津田をやっと半分埋めるくらいの規模なのは、バクスタンド部分にスタンドを増設出来ていないからなのか。

ブラウブリッツ秋田がBリーグのノーザンハピネッツより秋田市民の心を掴めていないのは、J2基準に沿ったスタジアムが用意出来ていないからなのか。

いわてグルージャ盛岡のホームスタジアムにナイター照明が増設されると毎試合5000人の観客で一杯になるのか。

こういう事を私が書くと「妄想だ」とおっしゃる方も少なくありませんし、中には「証拠を示せ」と言ってくる方もおられますが、そんなものが無くたって状況的に見ればそう考えるのが自然ですし、Jリーグ側だって「はい。パッケージでご提案させて頂いております」なんて言わないでしょう。

サッカーが人々の寄り辺になるには

「スタジアム基準なんてそれ自体が必要ない」

私がこう考え、それをこうして意見として述べているのは、現状では「スタジアム基準=是」という認識がされてしまっているからです。

日頃Jリーグに対して苦言を呈している人でも、いざ新しいスタジアムが建設されるとなると、それをコロッと忘れて途端に尻尾を振りだす様子を目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。

本当は不必要で、ただただ地域財政の負担となるだけで、最悪そのスタジアム自体が不良債権化してもおかしくないようなケース、それでも「クラブが発展するためには必要」と妄信してしまう傾向。

サッカーが、スポーツが地域社会に対して出来ること、果たしていくべきこと、これをもう少し平常心を以て考えられる、つまり「スポーツ文化に対するリテラシーの向上」が社会の中に起きてこない限り、Jリーグクラブライセンスにただ沿っているだけのサッカー文化が日本社会の中に溢れていってしまう。

それではサッカーが人々の寄り辺となり、その生活を幸せにしていく助けにはなり得ないように私は思います。

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