天皇杯茨城県代表となった流経大 中野雄二監督が優勝会見で話してくれたこと

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流通経済大中野監督の話されたこと

『大学チームの存在をもっと現実的に考えた方がいいと思うんです。以前のように大学連盟枠を設定したり、各都道府県代表枠を見直したり、実力のある大学チームが本大会に出場しやすい仕組みにしてみてもいい』

天皇杯の茨城県代表決定戦である「茨城県サッカー選手権」優勝会見で、流通経済大サッカー部の中野雄二監督「私が大学サッカー側の人間であるからではなく」と前置きされた上で、こうした主旨のお話をされました。

私の「流通経済大はもちろん、関東大学リーグ所属チームの天皇杯本大会における戦いで、何を一番見て欲しいとお考えですか?」という質問にお答えいただく中で、天皇杯実施委員でもある中野監督は、年代別代表選手も少なくない関東大学リーグ所属の「プロ予備軍」が『アマチュア(学生)でもプロと普通に戦えること』を見て欲しいと述べられたあと、現存する天皇杯本大会出場枠レギュレーションと、その実情との‟乖離”を埋めていくことをしなければ、天皇杯自体の価値を維持できない、つまり『天皇杯の質を高めていく為』に、大学サッカーが果たしていく役割を「天皇杯本大会出場枠の見直し」に見出してもいいのではないかと、そう話されたのです。

「1枚も2枚も上手」

確かに出揃った天皇杯本大会出場チームの顔ぶれを見ていくと、大学サッカー界における2大リーグ「関東大学リーグ」「関西大学リーグ」勢の存在感は際立ち、特に関東大学リーグについては、その所属チームが戦った都県代表枠のほとんどを獲得する格好となりました。(千葉県で順天堂大が代表権を獲得出来なかった)

天皇杯都県代表顔ぶれ(関東地方)

東京都 明治大学(関東大学リーグ)

神奈川県 桐蔭横浜大学(関東大学リーグ)

埼玉県 東京国際大学(関東大学リーグ)

千葉県 ブリオベッカ浦安(関東リーグ)

茨城県 流通経済大学(関東大学リーグ)

栃木県 栃木シティFC(関東リーグ)

山梨県 山梨学院大ペガサス(山梨県リーグ)

試合後、流通経済大を相手にしたジョイフル本田つくばFCの小松祐己監督

『自分たちと同じく関東サッカーリーグを戦っている流通経済大FC、準決勝で対戦した流通経済大ドラゴンズ龍ヶ崎(JFL)と比較しても、今日の相手はその全てが1枚も2枚も上のチームだった』

と話されましたが、この日のつくばFCは非常に丁寧な戦い方が出来ていたと私は思いますし、チーム自体の完成度だけで言えば流通経済大よりも優勢であったようにも見えました。

これは裏を返せば、それだけつくばFCがこの日の対戦相手を分析し、その対策を講じた上で戦いに挑んでいたことを表わしていると思いますし、実際に選手たちの口からも「ゲームプラン」という言葉が度々出てきました。

一方の流通経済大については『つくばFCさんが相手だからと言う対策は準備段階では考えていなかった』と中野監督も話されていたように、彼らが育成段階にあるチーム(この決勝を戦ったメンバーには多くの1~2年生が含まれていた)だからと言うこともありますが、相手が関東サッカーリーグの強豪クラスであれば、余程のことが無い限り下手な試合にはならないだろうと言うような強い自信も感じさせたわけです。

実際、東京都予選ではJFLチーム(東京武蔵野シティ)を破った明治大が、神奈川県予選ではJ3チーム(YSCC横浜、SC相模原)を立て続けに破った桐蔭横浜大が優勝を遂げ天皇杯本戦への出場権を獲得しているのですから、それも当然でしょう。

大学チームの存在をもっと現実的に考えた方がいい

つまり大学サッカーという「Jリーグを頂点とするピラミッド」に含まれていないこのサッカー世界が、事実上はJFLやJ3のチームと比較して遜色ないどころか、それらを打ち破ってしまうレベルの実力を持っていながらも、それを十分に発揮できる形に現状の天皇杯はなっていないと、中野監督はそうお考えになっておられるのでしょう。

そして、その「打ち破ってしまうレベルの実力」が、ピッチ上で戦う選手たちの質、その将来性(決勝に出場した選手の中には何名かのJリーグ内定選手もいた)だけに留まらず、チームスタッフを含めた運営体制、練習環境などハード面、選手たちの生活環境までもがそうであるという事実。

そんな「ヒト、モノ、カネ」といった「サッカー資産」がある意味で潤沢に存在している大学サッカーの世界をどうすれば、より日本サッカー発展の為に活かしていけるのか。

大学サッカー界を長く牽引されてきた、流通経済大中野監督の『実力のある大学チームが本大会に出場しやすい仕組みにしてみてもいい』というお考えは、その一端であるように私は思いました。

当然ながらこれには賛否あるでしょう。

昨今の大学チームの勢い、私も以前このブログで書きましたが、現在、9つある社会人による地域リーグで戦っているチームの約2割が学生チームとなっていて、それは今後も増加していくはずですし、リーグによっては学生チーム抜きには運営が成立しないようなところまで存在しています。

ただ、そんな大学チームの勢い、それが全て肯定的に受け止められていない現状も間違いなく存在しているわけです。

その多くが「社会人サッカーの世界に学生チームの影響度合いが増していくのは本来的ではない」とした思考から始まっているように思いますが、これに対する一つの考え方、それが冒頭に書かせて頂いた中野監督の言葉

『大学チームの存在をもっと現実的に考えた方がいい』

なのではないでしょうか。

大学サッカーを如何にして日本サッカー発展に繋げるか

きっと今年度の天皇杯でも、大学チームが躍進する姿を目にすることになるでしょう。

J2やJ1クラブ勢を破ってラウンドを勝ち進むチームも現れるかも知れませんし、そうなれば「ジャイアントキリング」とちょっとしたニュースにもなるのでしょう。

しかし、いつまでもそんな安っぽい言葉で、大学サッカーの進化を片付けていていいのでしょうか。

そもそも「Jリーグを頂点とするピラミッド」に属していない大学サッカーなのですから、厳密に言えば「ジャイアントキリング(番狂わせ・格上喰い)」という言葉が適切であるのかも怪しい。

「大学チームの存在をどう現実的に考えるか」

そして、それを如何にして日本サッカー界の発展に繋げていけるのか、今後これが非常に重要なテーマとなっていくはずだと、私は考えます。

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