秩父宮ラグビー場に儚く散ったJリーグへの淡い期待

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秩父宮でルヴァンカップ

先日、秩父宮ラグビー場で行われたルヴァンカップ「FC東京VSべガルタ仙台戦」を観に行ってきました。

この秋に開幕するラグビーW杯に向けた改修工事との兼ね合いで、味の素スタジアムを平日のホームゲーム会場として使用できないFC東京の事情があったことで、日本ラグビー界の聖地でもある秩父宮でJリーグの公式戦がカップ戦とは言え開催されたことは、多くのサッカーファン、中でもとりわけJリーグを日常的に関心の対象とされている人々からは特に注目を集めていたように思います。

私自身「ラグビー場で行われているJリーグの光景」をこの機に観ておきたいと、そういう動機がまず初めにあったのは間違いありませんし、ゴール裏スタンドの背後にビルがそびえ立つ景色にはそれなりの感慨もあったのですが、それならば実際にスタジアムへ行かれた方々撮られた写真や、もっと言えばフジテレビNEXTで試合中継画面、それらを見ていれば大方の目的は達成してしまうわけでして、それでもわざわざ外苑前まで行こうという思いに至らしめたのは「秩父宮に集まってくる観客」に関心があったからなのです。

秩父宮に対する「淡い期待」

「秩父宮に集まってくる観客」

これは、単純にこの試合がどれくらいの観客を動員出来るのか、それを体感したかったことに尽きるのでありまして、まあそれであっても動員数は公式発表されますし、その人数規模をとにかく知りたかったと言うよりは、その観客数を「構成する」人々の属性を実感したかったとでも申しますか、つまり私はこの秩父宮開催試合に仮説とでも呼ぶべき「淡い期待」をしていたのであります。

「淡い期待」その正体は非常に簡単なものです。

「東京の中でも特に沢山の人々が生きているこの青山という立地」

「球技専用スタジアムというサッカーを観戦するのに最適な試合会場」

この2つの要素が、現状のJリーグスタジアムでは見ることが出来ない、新たな世界、新たなムードを創り出すのではないか。

アクセスや箱そのものの魅力、そうした要素が「観客動員力の弱さ」に対してのエクスキューズとして使われることも珍しくない中で、そうしたハンデの一切存在しないこの秩父宮というシチュエーションが、これまでのJリーグには成し得なかった「抜群の観客動員力」を示してしまうのではないか。

Jリーグが開拓出来ていない新たな観客層が秩父宮へ集まってくるのではないか。

Jリーグの現在地

結果的に、私が抱いたこれたらの「淡い期待」はほとんど叶うことなく、基本的にはいつものJのスタジアムの光景が広がっていたわけで、アクセスや箱の魅力、そうしたエクスキューズを「観客動員力の弱さ」に使ってこられた方々には、是非ともこの日の秩父宮の光景を知っておいて頂ければと思うのですが、

何しろこの日の対戦カードは現在のJ1首位チームが、グループステージ突破を掛けて引き分け狙いの相手に対して、リーグ戦でのテンションにかなり近いレベルで戦いを挑んだ、まあ言ってみれば

「この晩日本国内で行われていたサッカーの試合の中でも1~2を争う好カード」であったという事実、そしてそのピッチ上には今まさに「旬」な男、久保建英選手がいたという、これ以上何を望めようとも言うべき「優良コンテンツ」であったわけです。

それでも27,000人収容のスタジアムにその半分にも満たない9,910人の観客を集めるのがやっと、これが「日本サッカー、Jリーグの現在地」なんだと、それを思い知らされる夜でもあったのです。

Jじゃない種族

確かに、秩父宮のメインスタンドには普段Jのスタジアムではあまり目にしないような観客が全くいなかったかと言えばそうではありません。

「お前オフサイド知ってる?俺知らないよ」とコンパ的なノリで互いを茶化しあう若手サラリーマン風グループ(女子含む)も目にしましたし、

いわゆる「クラブ(パリピの方の)」へこの後行くのかな?と思わされるようなイカツいルックスの男性3人組も目にしましたし、

ひたすらにビールを飲み続ける若い白人男性グループも目にしました。

彼らは少なくとも日立台で見ることが出来る「種族」じゃなかったし、これは恐らく味スタでも吹田でもひやごんスタジアムでも同じでしょう。

ただ、私が期待していたのは、彼らのような「Jじゃない種族」がメインスタンドにいながらも、ゴール裏から聞こえてくる「ヒーローチャント(ラグビー場開催と言うことで、FC東京サポーターはドラマ「スクールウォーズ」の主題歌である「ヒーロー」をチャントにして歌っていた)に合わせて踊りだす、極端に言えばそんな光景であったわけで、まあ全然そんなムードになるほど、つまりゴール裏サポーターの勢いを凌駕しちゃうほどには「Jじゃない種族」は集まりませんでしたし、印象としては観客の8割方がFC東京のタオマフを首に巻いていたわけです。

つまり飛田給から秩父宮へ、同じ東京の中でも多くの方が「どうせならやっぱ都心にあった方が観に行きやすいっしょ」と思う、まさにその典型的なケースであったこの試合。

これが場所は変わったけれど、その中身はさほど変わっていないと、平日のナイターだったことで、いつもより3,000人くらい観客は多かったかも知れない、ですがこれ青山ですから、青山で3000人って、最寄り駅である外苑前駅の1日の平均乗降客数8万人以上なんですよ?隣の青山一丁目駅もプラスしたら一気に20万超えです、それなのに3000人しか増えないって、Jリーグがいかに世間から知られていないか、それを痛感しないで何を感じればいいのかと、私は思っちゃいます。

Jが身近な存在

結局、私は秩父宮ラグビー場開催のルヴァンカップを観戦しに行って、観客を増やすカギは「アクセス」でも「箱」でも「コンテンツ」でもなく、「サッカーが身近であるか」「Jリーグが身近であるか」なんだと、その思いを強くさせられました。

もちろん「駅からバスに乗ってさらにそこから歩いて」みたいなスタジアムと、駅前にあるスタジアム、おんぼろな陸スタと最新鋭の専スタ、J3とJ1、これらが観客の大小に影響を及ぼす部分がゼロとは言いません。

でも、そこだけを「観客動員力の弱さ」に対するエクスキューズとしてしまえば、それは結局のところ課題解決を先送りにしているようなもので、これは最寄りの駅を使っている人が1日に20万人もいるのに、3000人の観客増効果しか生み出せなかった秩父宮がそれを物語っていると、私は思うわけです。

で、まあそんなことは絶対にあり得ませんが、仮にあるJクラブが秩父宮をホームスタジアムにしたとして、やっぱり20万人の人にとって「サッカーが、Jリーグが身近な存在」とならない限り、そう簡単に大勢の観客で溢れるスタジアムの光景は作り出せないんじゃないかなと、そうも思うのです。

さあ頑張らなきゃ。

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