大型連休となった2019のGW 果たしてJリーグは本当に盛況だったのか?

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J1リーグ第10節でリーグ史上最高の観客を集める

改元による影響で超大型連休となった今年のGWも残りわずか。

連日のようにあらゆるスポーツイベントの情報が届けられてくる中、どこも連休ならではの「盛況」があったかのような印象を持ってしまいがちですが、実際のところは果たしてどうであったのか。

J1リーグ第10節(5月3・4日開催)が、リーグ史上最高の観客動員を集めたという報道もありますので、間違いなく「サッカーが盛況」であった事実はあるのですが、じゃあその内実はどんな様相であったのか。

Jリーグ全体として、つまりJ1だけではなく、J2やJ3でもやはり「盛況」な状況がこのGW期間中にあったのか、それをちょっと調べてみたのですが、ひとつ面白い傾向が見て取れたので、それを少しまとめてみようと思います。

題して「GWのJリーグは本当に盛況だったのか?」

「GWのJリーグは本当に盛況だったのか?」

まず初めに、今回のGW期間中に「今シーズン最多観客動員」を達成したクラブをJ1から順に挙げていきます。

J1リーグ(10クラブ/18クラブ)

大分トリニータ (5月4日 対サガン鳥栖戦 24,516人)

サンフレッチェ広島 (5月3日 対横浜Fマリノス戦 23,559人)

ヴィッセル神戸 (4月28日 対川崎フロンターレ戦 25,929人)

名古屋グランパス (4月28日 対サンフレッチェ広島戦 40,000人)

清水エスパルス (4月28日 対浦和レッズ戦 18,246人)

湘南ベルマーレ (5月4日 対名古屋グランパス戦 14,221人)

横浜F・マリノス (4月28日 対鹿島アントラーズ戦 38,561人)

川崎フロンターレ (5月3日 対べガルタ仙台戦 25,789人)

鹿島アントラーズ (5月3日 対清水エスパルス戦 31,182人)

コンサドーレ札幌 (5月4日 対ヴィッセル神戸戦 34,591人)

ご覧のように、18クラブ中10クラブがこのGW期間中に行われたホームゲームで、今シーズン最多の観客動員を記録しています。

ただ、ここに出てこない8クラブについても、今シーズン2番目に多い動員となったところがほとんどで、それらをよく見てみるとこれまでにヴィッセル神戸をホームに迎えた試合が今シーズンの最多動員記録となっているクラブも多く、期せずしてヴィッセル神戸人気がどれほど人を集めているのか、それを強く感じさせられました。

では次、J2リーグに参りましょう。

J2リーグ(7クラブ/22クラブ)

鹿児島ユナイテッド (5月4日 対柏レイソル戦 7,965人)

ファジアーノ岡山 (4月28日 対東京ヴェルディ戦 9,339人)

東京ヴェルディ (5月5日 対V.ファーレン長崎戦 7,085人)

柏レイソル (4月28日 対横浜FC戦 13,056人)

ジェフユナイテッド千葉 (4月28日 対大宮アルディージャ戦 13,656人)

水戸ホーリーホック (4月28日 アルビレックス新潟戦 9,023人)

モンテディオ山形 (5月5日 ファジアーノ岡山戦 10,257人)

J1と比較すると、J2リーグにおいては「GW効果」がそれほどは発揮されていない印象です。

ただし、柏レイソル、ジェフ千葉、モンテディオ山形など、特定のクラブについては、これまでのリーグ戦観客動員数がこのGWで一気にジャンプアップしている印象も間違いなく感じられます。

また、ここに挙がってこないクラブについては、今シーズンの最多観客動員がホーム開幕戦、或いは柏レイソルを迎えたホームゲームであるケースも傾向として見て取れました。

では最後にJ3リーグです。

J3リーグ(4クラブ/15クラブ※U-23の3チームは除く)

ギラヴァンツ北九州 (5月5日 ザスパクサツ群馬戦 7,553人)

カマタマーレ讃岐 (5月5日 藤枝MYFC戦 2,914人)

アスルクラロ沼津 (4月28日 ロアッソ熊本戦 3,327人)

カターレ富山 (5月5日 アスルクラロ沼津戦 3,047人)

例外としてギラヴァンツ北九州だけが大幅にこのGWで観客を増加させているくらいで、もはやJ3リーグには「GW効果」で観客動員が増えるという実態はほとんど存在していないと言っていいと思います。

対戦相手がどこであろうと、ホーム開幕戦であろうとなかろうと、その観客数に大きな変動が現れないのがJ3リーグの特徴でもあるのでしょう。

GW中のJクラブ観客動員実勢から立てる二つの仮説

こうして見てくると、「Jリーグ」という単純なくくりではその観客動員の傾向を説明出来ないということがはっきりと分かってきます。

そして、そこに見られる傾向からいくつかの仮説を立てることも可能でしょう。

以下に私が立てた2つの仮説を挙げてみます。

仮説1『J1リーグとJ2リーグの一部の試合はGWレジャーのテーブルに辛うじて載っている』

仮説2『過去に上位カテゴリーで戦った経験のあるクラブはGWで観客動員を増やす』

仮説1については、実際に私がこのGWを過ごすにあたって、普段Jリーグを見る習慣のない人たちをスタジアムへ連れて行ったことから思いついた部分も多いのですが、このGW期間中に、サッカー観戦そのものが初めてという親子をJリーグに連れて行くにあたって、彼らが選んだ試合は5月4日に埼玉スタジアムで行われた「浦和レッズVSジュビロ磐田」であったわけです。

私個人としてはJ2でもJ3でも、もちろんJ1であっても、どこに連れて行っても「楽しんでもらう」自信はありましたが、彼らが選んだのはこのGW期間中に最も多くの観客を集めた試合だったのです。つまり、サッカーを日常的に観戦する習慣のない人たちをどれだけスタジアムに集めることが出来るか、これが観客動員増の全てであるわけですが、そのテーブルの上にJ1リーグとJ2リーグの一部の試合は辛うじて載っていると、そういうことではないかと私は思うわけです。

そして仮説2については、仮説1を補完する意味も持っていますが、過去にJ1リーグで戦っていたクラブ、またはJ2リーグで戦っていた経験を持つクラブについては「GWレジャーのテーブルに辛うじて載ってい(た)」時代があったことで、未だその恩恵にあずかることが出来ていると、端的にそういう推察なのであります。

先ずはその街の「レジャーのテーブル」に

そしてこの二つの仮説をもとに、今回私が主張したい結論は

『先ずはその街の「レジャーのテーブル」に載りましょう』

と言うことなのです。

Jリーグに限らず、サッカークラブが果たして行って欲しい役割、そして追求していって欲しい存在価値、それらは今のJ1クラブを見ていても私には決して満足な形、最終形態としては映っておりません。だから、単に「観客を増やせばそれで全てOK」などとは思っていませんし、それを即効で果たすのにはヴィッセル神戸に楽天が投資しているくらいの資金が必要なわけです。

ただ、そのクラブの価値を測る上で、それが非常に分かり易い形で現れているのは「ホームゲームでのスタジアムの風景」であり、言うなればそのクラブのある街で暮らしている人たちがどれくらい「ホームゲーム開催」に影響されながら生活しているのか、それを唯一測れる指標が「観客数」だと言うことも出来るはずです。

「今週末、Jリーグ観に行く?それともイオンモール行く?」

と言うような直接的な影響はもちろん

「今週末はJリーグあるから店開けておこう」

と言うようなスタジアム周辺の経済効果に影響する部分についても

先ずはその街の「レジャーのテーブル」にサッカークラブのホームゲームが載っていないことには、何も始まらないように思うのです。

そしてそれは、J3クラブはもちろんのこと、J2やJ1クラブであっても「所属カテゴリーに左右されることなく」テーブル上に載るだけの価値訴求が出来ているか、それについてはまだまだ追求していかなくてはならない領域も多いと私は思っています。

逆に言えば、現在地域リーグやJFLを戦っているクラブについても、「JFLに昇格すれば」「J3に昇格すれば」と「レジャーのテーブルに載る為の努力」を先送りしていれば、それは既にその時点で相当に深刻な将来が待っていると言わざるを得ない。

何しろJリーグで、GWとか開幕戦とか対戦相手とか、そういう要素に左右されることなく「レジャーのテーブルに載る」ことが出来ているのは、何十億も掛けて作られたヴィッセル神戸だけで、それを追随出来ているのは川崎フロンターレくらいなのです。

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