関東サッカーリーグ開幕!
いよいよ先週末から関東サッカーリーグも開幕。
全国に先駆けて3月最終週に開幕した中国サッカーリーグに続き、この4月第1週に開幕した地域リーグは関東を含めて5つ。
各都道府県における天皇杯代表決定戦も佳境に差し掛かり、私自身にとっても、忙しく刺激的な週末生活がスタートしておりまして、身の引き締まる思いを感じたりもしているわけですが、まあそんな風に「タダ見ているだけ」の私が妙な緊張感に苛まれてしまっているのも、その要因はあらかた分かってもおりまして、その要因と言いますのもズバリ
「開幕戦独特の緊張感に溢れるチーム」
に触れたせいであるのは間違いないのです。
東国大FC VS エスペランサSC
「今年は地域リーグに注力していくぞ!」
と年の初めに決めた私にとって、その最初の試合となったのは関東リーグ2部の開幕戦「東京国際大FC VS エスペランサSC」
埼玉県坂戸にある東京国際大学サッカー場で行われたこの試合。
試合会場に備え付けられた小さなスタンドには、チーム関係者を除いて観客らしい観客もおらず、地域リーグにあっては至って普通の光景があったわけですが、そのピッチ回りだけは明らかにピリピリとした空気で包まれておりました。
今年1月。横浜・野七里の練習場で取材させて頂いたご縁で、エスペランサSCの方々とはその後もいいお付き合いをさせて頂いておりますが、それでもこの日ばかりは、選手たちもチームスタッフの方々も、もちろんヘッドコーチのグスタポさんも、監督の‟パパ”オルテガさんも、この日の開幕戦で対戦する難敵、東国大FCとの戦いを前に
「余計なことは考えたくない!とにかく今は試合のこと、試合に勝つこと、それだけを考えていたいんだ!」
というムードが尋常じゃないくらいに漂っておりまして、私も挨拶をそこそこに済ませると「このムードに私が水を差してはいけない!」という思いが湧いてきて、なるべくその「輪」を俯瞰(ふかん)出来る間合いを保つことに注力しておりました。
もちろん、このカード「東京国際大FC VS エスペランサSC」であれば、現時点では間違いなくエスペランサ側に親近感を覚えるわけですが、それでもこの開幕戦を出来るだけ客観的に見る必要もあるんじゃないか、今後東京国際大サッカー部の皆さんともいいお付き合いをさせていただく時もやってくるかも知れないんだから、と自戒の念を抱いてみたりして。
だからこそ試合前からあまりにチームに近づき過ぎてはならんのではないかと、そういう少々理屈っぽい私の「質」が顔を見せたりしながら、まあ結局はエスペランサの方に目が行ってしまうのですが、こういうリーグ戦ならではの、それも開幕戦であれば尚更、いろいろと余計なことを考えてしまった結果、「タダ見てるだけ」なのに「身の引き締まる思い」に繋がっていくわけです。
サッカーとは90分間続く駆け引きだ
と、そんな私(40代後半・男)の「身の引き締まる思い」エピソードにいつまでもお付き合いさせるわけにはいきませんので、この関東リーグ2部開幕戦「東京国際大FC VS エスペランサSC」がどんなゲームであったのか、それを書いていこうと思います。
で早速結論から書くスタイルをここでいきなり使ってしまいますが、私がこのゲームから感じたもの、それは
「サッカーとは90分間続く駆け引きだ」
です。
エスペランサSCの戦いぶりにそれを強く感じたので、この言葉を敢えてスペイン語で書きますと
‟El fútbol es una ganga que dura 90 minutos.”
試合前、エスペランサSCのオルテガ監督は選手たちに
「試合は90分間あるんだぞ」
と声を掛けておられましたが、まさにこの日の試合はその「90分間」の駆け引きに勝ったもの、敗れたもの、その明暗がはっきりと分かれたゲームであったように思います。
もう少し平たく言えば
試合序盤。この時点でこの試合結果を想像出来た人はほとんどいなかったはず(まあ先にも書いたように観客もほとんどいなかったのですが)
それくらい東国大FCの選手たちは個々の能力が高く、相手のスキをつくのも巧いチームでした。
それでも最終的に彼らは1ゴールも挙げることが出来ず、反対にエスペランサSCに2ゴールを奪われ完封負けを喫するのですが、この結果は偶然に生まれたものでも、運がそうさせたのでもなく、私が見る限り
「エスペランサが駆け引きを仕掛け、ことごとくそれに勝った」
ことによって起きた試合展開であったようにも思えてくるのです。
「マジ」な東国大FC 「演じる」エスペランサSC
その駆け引きは主にピッチ上で戦っている選手たち全員が仕掛けているものなので、その全てを具体的に書くことはほとんど不可能ですが、それらを総合して表現すればこうなるのかも知れません。
「エスペランサは東国大FCをイライラさせた」
やや激しいコンタクトがあって、レフェリーの笛がなりプレーが止まった時、双方の選手が文句を言ったり、相手を睨みつけて歩み寄ったり、そういうシーンもサッカーの一部でありますが、その立ち振る舞いがエスペランサSCの選手たちは非常に上手い。
「上手い」という言葉は少し適切ではないかも知れません、「老獪」と言ったほうがいいのか。
これをもう少し具体的に書くと、こういった小競り合いが起きた時、東国大FCの選手たちが割と「マジ」になっているのに対し、エスペランサの選手たちは「演じている」風に見えるのです。
東国大FCの選手の中には、顔を真っ赤にして怒ると、それが次のプレーにも影響してしまったり、周りの仲間たちからなだめられたりするシーンも珍しくないのに、エスペランサの選手たちは、つい10秒くらい前まで顔を真っ赤にして怒りをあらわにしていても、すぐに普通のテンションで次のプレーに戻れてしまう。
これが試合の中で1回や2回ではなく、90分間に渡って延々と繰り返されるわけです。
「駆け引き」を間近で目撃出来る関東リーグ
前半の終了間際に数少ないチャンスをものにし、昨シーズンのリーグ得点王、古川頌久(のぶひさ)選手が決めた先制ゴールも、後半に新加入のジョアン選手が頭で決めた追撃ゴールも、駆け引きに勝ったことで必然的にもたらせられたもの。
DAZNのJリーグ中継では、ハーフタイムや試合終了後にゲームスタッツが事細かに表示されますが
『シュート数が何本であろうと、ボール保持率が何%であろうと、結局は「駆け引き」に勝てるかどうか、そこが勝敗に直結するのだよ』
エスペランサSCの2019シーズン開幕戦を見ていて、そんなサッカーの側面を教えられたように思います。
そしてそれに付随して、エスペランサのベンチや選手同士が試合中に多用する言葉
‟bien!”
意味を調べると「大丈夫」とか「いいよ」といったニュアンスを持つスペイン語ですが、これにスタンドから”ママ”が絶叫している「ゼッタイ デキール!」が加わると、ピッチ上で戦っている選手たちはもうほとんど迷いなくサッカーに、そして「駆け引き」に向き合うことが出来てしまう。
もちろん、この日の試合結果が勝利であったことで、その全てがポジティブに感じられているのも間違いのないことではありますが、スポーツという一見「偶発性」にその勝敗が左右されると思われているものが、実は「必然性」によって手繰り寄せることも出来るんじゃないか、私はこの日のエスペランサSCからそんな思いを持つに至りました。
そして何よりも、その「駆け引き」を限りなくピッチに近い場所から感じることが出来るのも、関東リーグの非常に良いところ。
エスペランサSCがホームゲームで使う「かもめパーク」も「保土ヶ谷公園」も「90分間続く駆け引き」を目撃するのに最適な試合会場です。
私は「人生という名の駆け引きを学ぶ」という目的で、今後エスペランサSCの真剣勝負をその参考書にしていきたいと思っています。