「Jリーグ入りを目指します!」
そろそろね、気づいていらっしゃる方おられるはずなんですよ。
いえ、気づくどころか既に確信されている方もおられるはずだ。
そうです、アレですよアレ。
「Jリーグ入りを目指します!」問題ね。

2014年にJ3という生き地獄なリーグがスタートし、それから5シーズン目を迎える2019年。
Jリーグクラブはスタート時の10から55にまでこの四半世紀の間に激増してきたわけですが、そのJ3に所属するクラブ数が現在15クラブ(U-23は除く)。
聞くところによると、これを将来的に22まで拡大させる案があるとか、東西に分かれた地区制に移行する案があるとか、まあどうせ半分は出たとこ勝負みたいな感じで推移していくのでしょうが、それにしたってこっから新たなJクラブが誕生するとして、その数はせいぜい10にも満たない限られたイスであるのは間違いないことでしょうし、その以前にどこかのJ3クラブが経営破綻してしまう可能性だってあるんでしょうが、それであっても
「Jリーグ入りを目指します!」
と叫んで憚らない都道府県リーグや地域リーグの小さなサッカークラブが後を絶たないこの現状。
どう考えたって「マルチ商法」を疑ってしまいそうになるじゃないですか。
「Jリーグ入りを目指します!」は果たして本意なのか

何故ニコニコ笑いながら踏み込もうとしているのか
もちろん「Jリーグ入りを目指します!」と大きく掲げているクラブの全てが「マルチ商法」だと、そう思っているのではありませんので皆さん怒らないで下さいね。
ただ実情としてですよ、Jリーグだけではなく世界のあらゆるフットボールリーグを見まわしても、サッカークラブ経営が「決して儲けやすいビジネスじゃない」のは明らかですし、J3リーグだってほとんどの選手が副業(収入額だけで言えばむしろ本業?)をしながらプレーしている実態が変わらず存在しているわけです。
なのに何故、わざわざそんな「世知辛い」世界にニコニコ笑いながら踏み込もうとしているのか。
そりゃ中には
「日本社会が失いつつある地域コミュニティ再生の為にJクラブがマストなのだ!」
みたいな使命感を抱いているクラブ代表もいるのでしょうが、その割にその辺りのビジョンが強く訴求されている場面にも遭遇しないし。
いや、やっぱりコレ相当怪しいと思った方がいいんじゃないでしょうかね。
「Jリーグを目指します!」を掲げざるを得ない?

ただね、これって単に「Jリーグ入りを目指します!」って掲げている小さなサッカークラブの側だって、掲げたくて掲げているわけじゃない、そういう見方も出来ますよね。
本当はJリーグクラブになろうなんて思っていないのに、とりあえず地域リーグやJFLで戦っていれば、そのクラブを作るに至った目的はある程度果たせると考えているはずなのに、
「Jリーグ入りを目指します!」という錦の御旗を掲げないことには、そのクラブを維持していくだけの支援者や資金を集められない苦しい台所事情があるだろうことは容易に想像がつきます。
本来であれば
「この地域で暮らす全ての世代の人と人とを繋いでいくハブとしてのサッカークラブを目指します!」とか
「高校大学を卒業するとサッカーを辞めてしまうこの残念な常識を変えていくアイコンとなるべくサッカークラブを目指します!」とか
「地元にある高校・大学の強豪サッカー部にいる人材をこの寂れてしまった地域の活性化の為にフル活用出来るようなそんな役割を担うサッカークラブを目指します!」とか

そういう真の目的があったとしても、それを訴求することよりも「Jリーグ入りを目指します!」と掲げることの方が、人の目を惹き、人を集め、カネも集まってくる、その現実がクラブの叫ぶ言葉を変化させてしまっている側面、これは大いにあるのではないかと私は推察しているのです。
もちろんこうなってしまっている大元には、「Jリーグ入りを目指します!」という旗以外に、そのクラブが掲げようとしていた本来の目的をマネタイズ(=収益化)する力が圧倒的に欠けていると言うか、そうした発想自体が欠如していることによって引き起こされているのも事実なのでしょうが、まあ結局のところそうしたクラブも含めて、日本社会におけるスポーツの価値、スポーツの可能性といったものが、もの凄く過小評価されていることの現われでもあるのでしょう。
で、その真意はなんなん?

そこで提案
そこで私から提案ですが、これから先、或いは既に「Jリーグ入りを目指します!」という小さなサッカークラブが自分の周りに出現してきたとして、それに対し諸手を挙げて「頑張れ!」と無責任に賛同してしまうのではなく、実際にそのクラブがどういう未来図を描いているのか、もちろんその中には本気で鹿島アントラーズに代わる日本サッカー界の盟主になろうと、しっかりとした裏付けもあって取り組んでいるところも出てくるかも知れませんが、むしろ「Jリーグを目指します!」以外にどんな目的、どんな将来像を持っているのか、そこにも関心を向けて行こうじゃないかと。
もしかしたらそうやってサッカークラブの真意が理解されることで、そのクラブにはそれをマネタイズ出来る人材はいなかったとしても、理解者の中から支援する人材、白馬の騎士が現れるかも知れない。
先述したように、既にJリーグは飽和状態に近いわけですから、これから先の日本サッカーを支えていくのは、案外Jクラブではなく、社会に新しい価値創出をする町のサッカークラブたちである可能性だってあるわけです。
TOKYO CITY FC

確かにややこしい話かも知れません。
例えば今シーズン東京都2部に昇格してくるTOKYO CITY FC。
Jリーグでの活躍も記憶に新しい阿部翔平選手が加入したり、活動拠点が渋谷だったり、都リーグのチームでありながら海外遠征してみたり、SNS上ではなかなかの話題を振りまいているクラブであると認識していますが、実際のところ私は彼らが何を目指しているのか、どうしてあんなに情報発信するのか、その一番重要なところが正直あまり分かっていません。
分かっていないと言うより、私の頭では理解出来ないと言った方が正確か。
まさにややこしいわけですよ。「渋谷発サッカークラブってなんなん?」みたいな。
でももしかしたら、彼らこそが日本サッカー界をここから進化させていくカギを握っている可能性だってあるわけで、もしそうであれば一生懸命応援する必要もあるかも知れない。
そして最低限、「このクラブはマルチ商法じゃないよ」と社会的認知がされるくらいにはしてあげる必要があるんじゃないかと、そう思うのです。
で、その真意はなんなん?

Jリーグがスタートして25年の時が経ち、サッカークラブの役割、如何にして社会で必要性を増していくか、それが「Jリーグクラブを目指します!」だけであっては、この先間違いなく立ち行かなくなるでしょう。
しかし、Jリーグではない世界に、存在価値のあるサッカークラブが次々に誕生していけば、日本のサッカー文化はこれまでにない広がりと深度を見せながら社会的影響度を強くしていくはず。
みなさん「Jリーグ入りを目指します!」というサッカークラブに触れる際には
「で、その真意はなんなん?」
ここから始めてみませんか?