Jリーグ開幕 そしてガラガラのスタジアム
Jリーグが開幕して改めて痛感させられているのが、その観客数の少なさ。
それでも公式情報によれば、この第4節を終えた時点でJ1リーグが集めた観客数は過去最高とされているようですが、そりゃあチーム数がもっと少なかった時代もそれなりに長かったわけですし、「観客数過去最高」なんてあまりに安っぽい印象操作だよな、なんて思ってもしまうわけで、私が「観客少ねぇ~」と痛感させられているのは、そのスタジアムに広がっているガラガラな光景が突き付けてくるものなのでありまして
「そこに危機感を抱いておかないと恐ろしい未来が必ずやってくる!」
と私みたいな人が言い続けることの必要性も自覚しているのです。
一見夢がありそうで実際は絶望的に夢のない話

2019シーズンのJリーグは、ヴァンラーレ八戸が加わって55クラブで行われていますが、その55クラブの中でリーグ戦のチケットが完売、或いは入手困難となっているのは、川崎フロンターレのホームゲームと、ヴィッセル神戸の絡む試合だけです。
前者はJ1を2連覇中のチャンピオンチーム、後者は言わずと知れたイニエスタとその仲間たちを見られるチーム。
もちろん、こうした状況だけで、この2つのクラブにおける観客動員の実情を創り出せていると言い切るつもりはありませんが、それでも例えばフロンターレが未だ「無冠ターレ」であれば、等々力に空席は出なくともチケットがすぐさま売り切れてしまうようなことにはなっていなかったかも知れませんし、ヴィッセルにやってきたのが「イニエスタではなくアイアム野田」であったなら、味スタや埼スタのチケットがプラチナ化することは絶対なかったでしょうし、ホーム、ノエスタにだってアイアム野田目当ての観客がどれくらい集まっていたことか。
つまり、今現在スタジアムを満員に出来ているクラブであっても、その状況次第ではいつ「空席の目立つスタジアム」へと転落してしまってもおかしくはないし、他の53クラブについても「J1で勝ち続ける」か「イニエスタを加入させる」ことでしか観客を一杯に出来ないなんて、そんな一見夢がありそうで、実際のところ絶望的に夢のない話を強いるのはあまりに酷だと言えるのではないでしょうか。
酷で虚しい夢
少々ややこしい書き方になってしまったので、いろいろ端折って単刀直入に書きます。
「長野Uスタジアムを満員にするのには、長野パルセイロにJ1優勝してもらうしかないっス」
「ミクスタを満員にするのには、ギラヴァンツ北九州がC・ロナウドを獲得するしかないっス」
「埼スタを満員にするのには、浦和レッズがベップ・グアルディオラを監督に迎えてACLを連覇するしかないっス」
「いわぎんを満員にするのには、ナイター設備を公金使って増設するしかないっス」
「フクアリを満員にするのには、ジェフがJ1昇格するしかないっス」
最後に挙げた「ジェフがJ1昇格するしかないっス」についてはややリアルな夢ではありそうですが、他の「しかないっス」も概ね、かなり大袈裟に書いてはいるものの、何となくコレに近い希望や夢がJクラブを熱心に見ているファンの間でも持たれているんじゃないでしょうか。

つまり
「うちに本田圭祐帰ってこないかな」(by ツエーゲン金沢ファン)
みたいにですよ。
いや、別にこういう夢や希望を抱くことがダメだと言うつもりはありません。
正規職員に学生バイト並みの給料しか支払えていないクラブに「年俸10億円とかのスター選手を獲得しろ」とか「年間予算40億円必要なJ1で優勝しろ」なんてあまりに酷すぎますけど、そう考えることが全く虚しくないのであれば一向に。
ただ、じゃあそんな酷で虚しい夢、それを叶えないとスタジアムを満員に出来ないと考える人ばかりなのであれば、多分そのスタジアムは未来永劫いっぱいになることは無いとも思えてくるわけで、少なくともそうした「酷で虚しい夢」を唱える人が「Jリーグを応援している人たち」や「Jリーグの中の人たち」の間で主流派であっては非常にマズいのであります。
胡散臭い「錦の御旗」

で、ここでいきなり深く斬り込んでみちゃいますが
この「酷で虚しい夢を唱える風潮」これを助長していると言うか、意図的にそう仕向けようとしているのが、実は「現状のJリーグで既にうまみを味わっている人たち」であると考えるのはごく自然なことでありまして、それこそ何にもないような地方都市の郊外にサッカー専スタを建設することで、一番利益を得ているのがその地方の政財界であったり県のサッカー協会の幹部であったり地元の建設業界であったりするのと同じように
「(絶対そうなるはずはないけれど)J1優勝を目指そう!」とか
「(そんなおカネどこから調達するんだよと思いつつも)デブライネ獲得するぞ!」とか
そうやってもの凄く胡散臭い「錦の御旗」を掲げることで、それを半分くらい信じてしまった人たちから、小遣いをせしめようとしているのが実態であって、彼らがその先に「常に満員のスタジアム」とか「地域から愛されるクラブの姿」とか、そんなことはほとんどイメージしていないと思っておかないと、あとで涙を見るのは純粋なファン・サポーターであったりしちゃうわけで。
つまり今ある「ガラガラのスタジアム」を常に満員状態にしようとした時、そこに必要なのは「勝利」でも「スター選手」でもなくて
「そこがどれだけ多くの人たちから必要とされている場所になっていけるか」(胡散臭い錦の御旗を掲げていた人を含めずに)
これに尽きるんじゃないかと、そう思うわけです。
Jリーグ 真面目に考えてこなかった25年間

そしてこれはJ1クラブであっても基本的には何ら変わりません。
等々力やヴィッセルの試合が、今はたまたま「スタジアムを満員にする規模の人たちから必要とされている」からそうなっているのであって、その「必要とされている理由」については、冷静に分析し把握しておく必要がありますし、私はそれが「等々力=フロンターレ二連覇」「ヴィッセル=イニエスタとその仲間たち」であると考えている、つまり極めて一過性に近い要因で観客を集めているに過ぎないわけで、J3クラブがタダ券配って「J2ライセンス交付」に向けた体裁を整えているのと、そう大きくは変わらないと、そう思っているのであります。
まあこんな風に書いてしまうと、フロンターレの天野春香さんの功績とか、そういうのを無視するのか!?と怒られてしまうかも知れませんが、言ってみれば天野さんという天才が現れたのも「一過性」であるとも言えますよね。
いや本当にですね、Jリーグのスタジアムがおしなべてどこもガラガラの状態にあるわけですよ。
そして、どうしてそうなってしまっているのか、その答えはもう明らかで、Jリーグ理念をカタチにしていく為に挙げたその活動方針に出てくる
【「スポーツ文化」としてのサッカーの振興】【日本サッカーの強化と発展】【選手・指導者の地位の向上】【競技場をはじめとするホームタウン環境の整備】
中でも特に
【「スポーツ文化」としてのサッカーの振興】
【競技場をはじめとするホームタウン環境の整備】
この2つの方針について25年前にもっと真面目に考えるべきであったはずなんです。
真面目に考えなかったから「スポーツ文化」とは何たるか「ホームタウン」とは何たるか、そこの段階から社会に浸透させることも出来なかった。
この25年の間にJリーグが誕生させたのは「W杯でベルギー相手に接戦を演じた代表チーム」であり「欧州のトップクラブで活躍する日本人選手」であったのかも知れませんが、その一方で「プロとは名ばかりのサッカー選手」「タダ働きのボランティアスタッフ」を大量に生み出し、公金を突っ込んで建てたはいいが閑古鳥が鳴いているサッカースタジアムをいくつも造ってしまった挙句、それがしっかりと顧みられている状況にすらなっていない。
で日本のあちこちから未だに「Jクラブを目指します!」と言っていればOKでしょ?みたいな小さなサッカークラブが次から次へ登場し、それこそ小さいけど胡散臭い「錦の御旗」に引き寄せられる人たちを手をこまねい「おいでおいで」する光景も散見される。
どうしてこのスタジアムを満員にする必要があるのか?

FC琉球もヴァンラーレ八戸も、何でホームスタジアムが満員にならないのか、それがやっぱり「昇格」することで解決したのか、そこをちゃんと正視する必要があるのに、目先の勝利や目先の連勝に気を取られてしまいがち。
そしてこうした状況こそを歓迎しているのが、そこで「瞬間的」に利益を得ようとしている人たちなのであって、その人たちはそのクラブが立ち行かなくなれば他へ行きますから、彼らがクラブの存続とか発展とか、そういうことを考えていると思ってしまうと、ガッカリさせられてしまうのが目に見ている。
そこで私はこういう風に考えようと思います。
ガラガラのスタジアムを見て
「どうしたらスタジアムを満員に出来るのか?」を考えるのではなく
「どうしてこのスタジアムを満員にする必要があるのか?」これを考えていくべきだなと。
極端な話「満員になる必要」がないスタジアムなんて、そもそも要らないわけですよ。
そして「スタジアムを満員にする必要がない」Jクラブだって、もしかしたら必要がないのかも知れません。
だから先ずここなんだなと。
「どうしたらスタジアムを満員に出来るのか?」はマーケティングのプロフェッショナルにお任せして、ファン・サポーターを含む我々市井の人たちは「どうしてサッカースタジアムを満員にする必要があるのか?」これをとことん考え抜く必要があるのではないかと、この言葉で今回の記事は締めさせて頂きます。