今あるJリーグの常識を疑え

「このままでは日本サッカーが間違いなく廃れていってしまう。そうさせない為に、例えば今あるJリーグの常識を疑うことも必要」
書き方は違うにせよ、私はこのブログの中でこうした主旨の記事を一貫して書いてきたつもりです。
それをいくつか具体的で挙げると
【「イニエスタの連れてきた客」を排除 これが浦和レッズ ゴール裏の常識!?】
などがありますが、このブログの記事カテゴリーで「Jリーグ」に分類されている記事のほとんどは、ある意味で一部のJクラブファン・サポーターにとって必ずしも耳心地の良いものとはなっておりませんで、大抵は猛烈な反論を浴びたりしております。(特に1番最初に挙げた【「イニエスタの連れてきた客」を排除 これが浦和レッズ ゴール裏の常識!?】については、公開して3日くらいはTwitterに反論リプライがつきまくって大忙しでした)
そしてその反論の多くは「現状を否定」する私に対する怒り、言い方を変えれば「今のままで何でいけないの?」といった主旨のもので、最終的にそれが「お前なんかJリーグ見なくていい」「お前なんか柏レイソルサポーターじゃない」といった罵声に発展しながら終結するのですが、まあ私のような無名の人間が「今あるJリーグの常識を疑え」と叫んだところで、単なる狂言師の如く扱われてしまうのも致し方のないことかなと思うと同時に
「でも既にJリーグの中にいて、あるいはそこに関わって生活を成り立たせている人の側からは『今あるJリーグの常識を疑え』みたいな言葉はなかなか出てこないよ」
と思ったりもするわけです。
DAZNが来てJリーグは変わったのか?

2017シーズンからDAZNとの間に10年で2100億円という大型契約を結ぶことが出来たJリーグ。
これによって、それまで放映権を持っていたスカパーでもフォローしきれていなかったJ3を含めたリーグ戦全試合がネットを通して生配信されるようになり、優勝クラブなどJ1を上位でフィニッシュ出来たクラブには多額の分配金(いわゆるDAZNマネー)も支給されるようになりました。
それと合わせるようにして、楽天の三木谷社長はポドルスキー、イニエスタ、ダビド・ビジャ獲得と、ヴィッセル神戸に投資を続け、J1クラブライセンス基準のスタジアムを確保できていないFC町田ゼルビアにはサイバーエージェントという超強力な‟ケツもち”がつきました。
こうして一見「景気の良さ」が感じられる昨今のJリーグですが、果たしてそれが真の姿であるのか、私はそこに対してかなり懐疑的な思いを持っています。
そう思う最大の理由は、DAZNとの放映権契約を結ぶ以前と後とを比較した時に、Jのスタジアムに見られる光景がほとんど変わっていないように思えることです。
もちろん、わずか1~2年でその環境がドラスティックに変化していくとは私も思っていませんが、DAZNが大型投資をした効果を3シーズン目がはじまったこの時点で感じることが出来ているのだろうかと、Jリーグに関する様々な情報を見ていると、そう思わされることの方が多い。
例えば『街の人口規模にかかわらず、概ねJ3よりもJ2、J2よりもJ1の方が観客数は多い』という実態。
そんなの当たり前だろと思われる方も多いのでしょうが、果たしてこれは本当に「当たり前」な現象であるのか。
「J1よりもJ2は観客が少ない」は本当に当たり前?

柏レイソルを例に出して書いていきましょう。
ご存知の通り、柏レイソルは今シーズンJ2リーグで戦っていますが、そのホーム開幕戦となったFC町田ゼルビア戦に動員出来た観客数は10,000人を僅かに超える程度のものでした。
これがJ1でのホーム開幕戦であれば、対戦相手がどこであろうと間違いなく満員に近い観客が日立台(約15,000人収容)に集まったはずです。
ではどうしてそうならなかったのか、まず1つ、ビジター側の観客数が少なかったことが挙げられます。町田サイドのゴール裏はどうひいき目に見ても6割の入りでした。
しかし、ホーム側の観客席にもところどころに空席が見られたのも事実で、その全てがそうとは言いませんが、柏レイソルがJ2に降格したことで来なくなった客層が確かに存在するはずです。
これを以て
「だからレイソルはJ1に上がらなくてはいけない」
と考えるのは、柏レイソルだけの視点で言えばあながち間違ってはいませんが、Jリーグ全体、さらに言えば日本サッカー全体といったマクロ的視点で考えると、全く解決策にはなっていないわけです。
何故ならレイソルがJ1に上がるのと入れ替わりに、今度は違うクラブがJ2に降格してくるシステムになっているからです。
つまりこの考え方(だからレイソルはJ1に上がらなくてはいけない)はJリーグ全体の観客数のパイを増加させていく発想とは全然連動していません。
「だからレイソルはJ2でも日立台を常に満員にしよう」
これならばJリーグ全体の観客数を増加させていくことに繋がっていきますが、少なくとも私が見聞きする限り、こっちの発想(だからレイソルはJ2でも日立台を常に満員にしよう)が「臆面もなく」主張されているシーンに遭遇することは意外に少ない。
もちろんこれは柏レイソルに限った話ではありません、J3にいるクラブは「J2に上がれば観客が増える」と思っていますし、J2にいるクラブは「J1に上がれば観客が増える」と思っている、そしてこれはクラブだけでなく、そのファン・サポーターも多くの場合そう信じていますし、そのクラブに投資をするスポンサーにとっても常識となってしまっています。
そしてこの常識が、そのクラブが存在する街の人口規模、つまりその街の潜在的ポテンシャルとは、ほとんど連動せずに信じられていることについても注目したいのです。
いつまでもあると思うなDAZNマネー
「Jのスタジアムに見られる光景がほとんど変わっていない」
こう感じる理由の中で、最も乗り越えることが困難であるように思うのが、この『街の人口規模にかかわらず、概ねJ3よりもJ2、J2よりもJ1の方が観客数は多い』という実態でもあります。
何しろ、Jリーグに限らず日本のスポーツ文化においては、そのトップリーグ以外は価値の無いものとして切り捨てるきらいがある。
それについて書き始めてしまうと、また長くなってしまうので止めておきますが、私はこの潜在意識、常識と信じられている発想が薄まっていかない限り、Jリーグは永遠にイニエスタに頼る体質から抜けていけないと思いますし、DAZNが投資効果を評価して2027シーズン以降に契約の更新をすることも無いと思っています。
いつまでもあると思うな「DAZNマネー」
ただ、少なくとも今年を含め残りあと8シーズンは、Jリーグにも発想転換の猶予が残されてもいるのです。
そしてその発想転換の一歩、そこに対して直接的に影響を及ぼせるのはニーズの側、つまりスタジアムへ行く観客の側にあるのだと思います。