天皇杯東京都代表を決定する行程について

天皇杯東京都代表を決める大会は、何段階かに分けて行われています。
最終的に東京都を代表して天皇杯に出場するチームをきめる大会が「東京サッカートーナメント」(例年4月~5月に開催)で、この大会に出場するチーム数は4つ。
現在東京都にはJ3クラブが存在しない為(FC東京U-23は除く)JFL所属クラブである東京武蔵野シティFCだけが予選を要せずにこの大会に出場出来る唯一のチームです。
残りの3枠のうち大学連盟が2枠持っているので、関東リーグや都リーグなどに所属しているチームがたった1つの枠を巡って2段階に分かれた予選(東京カップ)を戦う仕組みになっています。(大学連盟傘下においても予選があります。実は大学時代の私もこの予選に毎年出場していました!)
「東京サッカートーナメント」のたった一つの社会人枠を巡る戦いでもある「東京カップ」には「1次戦」と「2次戦」とがあり、「1次戦」には東京都1部以下の社会人チーム、及び各市町村協会の代表として出場するチームによって争われ、この「1次戦」を勝ち上がった3チームが、関東リーグ所属チーム(東京23FC、東京ユナイテッドFC、日立ビルシステム、※早稲田ユナイテッド、エリース東京)と戦う「2次戦」に進出します。
※早稲田ユナイテッドは2019シーズンより早稲田大学ア式蹴球部のセカンドチームとして再編成 チーム名も「早稲田大学ア式蹴球部FC 」に変更
東京都1部所属のチームにとって「東京カップ2次戦進出」は果たしたい目標

現在、東京都1部リーグは16チームで構成されておりますが、この16チームとって東京カップに関しては「2次戦」へ進出することがまず1つの目標となってくるでしょう。
言ってみれば東京カップに出場している東京都1部のチームにとって、2次戦に進まない限りは「明らかな格上」と対戦することは叶わないわけで
「東京都2部リーグ以下の格下や同じ東京都1部で戦うことになる当面のライバルに敗れてこの大会を終えるわけにはいかない!」
と口には出さずともかなり意識はしているはずです。
そんな中、昨シーズンの東京都1部リーグで優勝した南葛SCにとっても、新加入選手の出場が可能になる2次戦で関東リーグ所属チームと本気で戦えるチャンスは是が非でも欲しいでしょう。(ちなみに東京カップ1次戦を勝ち抜くと、10月に鹿児島で開催される全国社会人サッカー選手権の関東予選出場権も与えられるので、そこに向けたモチベーションも相当高いはずです)
南葛SCに起きている変化

1月に行われた東京カップ2回戦(対FCエコ・プラン)では苦しい試合を強いられた南葛SC。
それでも向笠監督にとってのラストゲームで恩返しをすることだけには成功し、寒波に震える2月11日の晩、TOKYYO CITY FCとの東京カップ3回戦を迎えました。
その間、南葛SCにはいくつか大きな変化が起こっていました。
そのうち1つは南葛SC自慢のブラジル人選手たちが母国から戻りトレーニングに合流したこと。
そしてもう一つは、、そう、いよいよあの福西崇史監督が2月の初めからチームの指揮を執るようになったことです。
元日本代表にしてW杯戦士。
現在ではNHKのサッカー解説者としてもお馴染みで、日本のサッカーファンの間ではこの方を知らぬ人を見つける方が難しいでしょう。

そんな福西監督にとっての初陣が、この東京カップ3回戦でもあったわけです。
私は先日南葛SCのトレーニングを見学して、福西監督をはじめコーチ陣、そしてもちろん選手たちも、ほどよいテンションの高さで非常に雰囲気のいいトレーニングを行えているように感じました。
現在は育成ダイレクターに就任された向笠実先生もその晩のトレーニングを眺めながら
『去年の今頃と比べてカベッサもデイビッドソンも明らかにコンディションがいいし、チーム全体として身体が一回り大きくなったように感じる』
と話して下さいましたが、そうおっしゃるのも当然で、ロアッソ熊本から加入した「アントラーズの魂」青木剛選手を筆頭に、力のある新加入選手も続々と合流し、今まさに南葛SCはチームとして大きく飛躍する為に蠢き始めたように見えるのです。
印象的だったチームの光景

そして何よりも印象的だったのは、全体トレーニングが終了したあとの光景で、決まった時間でナイター照明が消されてしまうことは分かっているのに、選手たちがなかなかグラウンドから引き揚げていかないこと。
ボールを使って自主トレをする選手もいれば、軽いランニングをし続ける選手もいる中、特に新鮮だったのは、福西監督が選手個々あるいはグループとじっくりコミュニケーションを取っている姿が見られたことです。
時には身振りやアクションを使いながら、クールダウンをする選手たちに話しかけているその姿からは、福西崇史というサッカー指導者がこのミッションに対して真摯に真正面から向き合っていることが強く伝わってきましたし、この時期に南葛SCで戦うことが出来る選手たちにとって、このシーズンが間違いなく濃密な時間となるであろう予感も出来ました。
福西監督にとっての「東京カップ」。もしかしたら今は選手たちの方がそれを良く理解出来ているかも知れない。
それでも今シーズンの南葛SCの選手たちが、福西崇史という指導者を旗印に進んで行く覚悟を持っている。
たった1度のトレーニングを見ただけではありますが、これまでにこのチームから感じたことのないそんなムードがヒシヒシと伝わってきたのです。
東京カップ3回戦 南葛SC VS TOKYO CITY FC

東京カップ3回戦の対戦相手、TOKYO CITY FCは昨シーズンの東京都3部リーグで優勝し、今シーズンからその戦いの舞台を東京都2部リーグに上げてきたチーム。
「渋谷系スタートアップサッカークラブ※」と表現すればいいのか、チームが戦っているカテゴリーこそ都リーグですが、その情報発信力については他の追随を許さない領域にあると私は感じています。(クラブ公式サイトを是非覗いてみてください。もの凄く垢ぬけています。TOKYO CITY FC 公式サイトリンク)
そういう意味で、単に「格下」というだけでなく、南葛SCにとって絶対に負けてはいけない相手もあったと私は思っています。
彼らにもし負けようものなら、それが華々しくスピード感を以て情報発信されてしまう可能性が高かったでしょうし、試合会場となった駒沢第二球技場に集まっていたTOKYO CITY FCを応援する方々の間ではそうする為の準備も十分に出来ているように見えました。(このカテゴリーのこの段階の試合で試合会場にPCを持ち込んでいる人が何人もいるのを私は初めて見ました)

しかし終わってみれば南葛SCが3-0で勝利。
危ないシーンを何度も作られながら、クリーンシートで試合を終えられたのは南葛SCにとってラッキーな試合展開だと言えるのかも知れませんが、私にはTOKYO CITY FCの選手たちの「昂ぶり」を南葛SCの選手たちがクールにいなしているように見えました。
もちろん、チームも始動したばかりで互いに最高のパフォーマンスを発揮出来たとは思えていないでしょうが、それでも南葛SCの選手たちの方が「やるべきこと」を分かっていたように思います。
ただ、TOKYO CITY FCは昨シーズンまで東京都3部で戦っていたわけで、その事実だけを考えればもちろん驚きでもあります。

特にその運動量については、試合の終盤までほとんど落ちていくこともなく、むしろ「一矢報いてやる!」という気迫が最後の最後まで感じられ、素晴らしいチームであることは間違いありません。
そして、TOKYO CITY FCのように、その特色を訴求出来るチームがアンダーカテゴリーにも増えていくことが、間違いなく日本のサッカー界全体を下支えする要因になっていくと私は思っていますし、あとはその活動をどれだけ持続させられるか、そこが最も重要で、これについては南葛SCをはじめ、これからさらにそのカテゴリーを上げて行こうと目論むクラブ、Jリーグ昇格を命題とするクラブについても、課題を同じくしているのではないか、そんなことを思ったりもした東京カップ3回戦でした。
試合後福西監督コメント
最後に、試合終了後、福西崇史監督に対戦相手TOKYO CITY FCに対する印象なども含め、簡単なコメントを頂きましたので、以下にまとめます。
東京カップ3回戦 対TOKYO CITY FC 戦 福西崇史監督 試合後コメント(2019.2.11)
初陣を終えて率直な感想
ー勝ったことは嬉しいですし、選手たちが結果を残そうと言うことでやってくれたのは純粋に嬉しいですね
今日の対戦相手TOKYO CITY FCについて印象に残った点など
ーもちろん勢いもあるし、しっかり戦って行こうということもありました 最初に点が入ったので自分たちが落ちつけたって言うのがありますし、状況によっては相手に勢いを出させてしまっていたかなと言うのは、最初のプレッシャーを見ても思いましたので、しっかりとしたチームが出来ているなと思います
特に印象に残った相手選手は
ーみんなそれぞれが頑張っていましたよ
指揮を執らるようになって10日余り 今一番強く感じていることは
ーまあ選手たちのやる気ですね しっかりと言われたことをするっていうのと、考えていくっていうのと、自分が伝えていこうとしていることを理解しようとしてくれている それはすぐにも出来ないでしょうし、チームでやっていかなくてはいけないことを続けていきますが、最初の段階でそういう意識の変化が出てきているので、非常にこれから楽しみにしています
※【スタートアップ】
短期間で、イノベーションや新たなビジネスモデルの構築、新たな市場の開拓を目指す動き、または概念。
法人(会社)そのものを指すものではなく、「起業」や「新規事業の立ち上げ」という解釈が一般的