東京23FC新体制発表会 「東京23区内をホームタウンとするクラブだからこそ」

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東京23区内をホームタウンとしてJリーグ昇格を目指すクラブ

関東サッカーリーグ1部所属10チームの中で、東京をホームタウンとしているのは東京23FC東京ユナイテッドFCの2チーム。(あれ?日立ビルシステムも東京出身かな?)

人口の約10%が集中する大都市東京にあっては、地域に対する帰属意識の希薄さなんかも良く話題に上がりますし、さらに23区に限って言えば「人生で一番カネを生み出している時期」だけそこで生きている人なんかも多く暮らしているわけで「地域密着」をクラブの是とするJリーグの理念が、実は最も困難なのが東京という街ではないかと私は思っておりまして、何を隠そう私自身が東京のど真ん中で産まれ育ったことも相まって

「23区内をホームタウンとする初のJリーグクラブ」

が目標として掲げられているケースの行く末に対しては特に関心を持ってもいるのです。

東京23勝手に実況隊 ブラジルさんが新加入選手を紹介

先に挙げた関東リーグ1部の2クラブに加え、東京都リーグ1部の南葛SCくらいまでが「Jリーグを目指す!」と叫んだ上で、既にそれに対しそこそこ投資もしてきている「23区内」クラブではないかと感じておりますが、中でも江戸川区陸上競技場をホームゲーム開催会場として使用出来ている東京23FCが、東大ア式蹴球部の練習環境にジリジリ侵食したと言われるライバルの東京ユナイテッドFCや、「キャプテン翼」作者高橋陽一先生を社長に据えトップチームを株式会社化し、将来に向けたスタジアム建設に夢を巡らせている南葛SCの現状などを合わせ見た時に、この3者の中で決定的なアドバンテージを持っているのは事実でしょう。

そんな観点からも、近い将来にJリーグ昇格が果たされるか否かは別として、東京23FCに対する視線の向く先が、その戦績やJFL昇格成就だけに集中してしまいがちなのは、致し方のないことなのかも知れません。

それだけに「東京23FC 新体制発表会」の会場を包んでいたムードの中にも、若干の焦燥感にも似た空気を感じてしまったのは、クラブ運営が法人化された2010年以来、その多くを過ごしてきた舞台「関東リーグ1部」にこれほど長く留まることになり、Jリーグ昇格という「目的」を果たせぬ状況から脱することが出来ないとは、多くの関係者の方々も想像をしていなかったのではなかろうかと、そんな思いに至ったわけです。

10年戦ってきた東京23FC

東京23FC西村剛敏代表

会のはじまりの挨拶で、クラブの西村剛敏代表はご自身が東京23FCに携わって今年が10年目のシーズンになると話されていました。

かつて企業寿命は30年と言われていましたが、情報化が底なし沼のように進み産業構造の変革が著しい現在にあって、いまや企業寿命10年とする説もあるそうです。

そんな風に激しく変わっていく世情を横目に、東京23FCは「Jリーグ昇格」を掲げ運営会社をスタートさせてから、既に10年の時を経てきている。

その間、チームが戦いの舞台としてきた関東サッカーリーグの様相が大きく変わったわけでもない。リーグ自体の価値が著しく向上したわけでもない。それでも東京23FCは10年そこで戦い続け、新しいシーズンに向けた新体制発表会にこれだけ多くの人を招くことが出来ている。

実はこれこそが、東京23FC最大の強みではなのではないか、改めてクラブの歴史を認識したことで、私はそんな風に感じていました。

「Jリーグ昇格」の大旗は不可欠か

新加入選手にタオルマフラーをかける西村代表

そして、その「強み」をこの先10年に渡っても誇り続けるとして、そこに必要不可欠なものが「Jリーグ昇格」という大旗では必ずしもないような気もしています。

それよりも絶対的に優先すべき使命があるのかも知れない。

街クラブが生き残っていく為に必要なのは、必ずしも「チームがどれだけ強いか」に限った話ではないのかも知れない。

例えばクラブが全力で取り組んでいる地域コミュニティとの接点づくり。

選手たちによる街の清掃作業や、小学校を訪問してのサッカー教室など、これらを「Jリーグクラブになる為に必要なこと」と考えるのではなく、既にその活動自体を「現在進行形で目的化」することが重要であるようにも思います。

また、現状はJリーグ規約に沿って「23区内」をホームタウンとせざる得ないところを「江戸川区をホームタウンにしよう!」とJリーグを向こうに回したムーブメントを起こすことに挑戦してもいいかも知れません。

結果的にそれが直ぐには叶わなわずとも、街クラブとしてのアイデンティティをより明確化していく助けにもなるように感じます。

そして、さらに言えば、街クラブが追求していくべきことが、実はもっと些細なことであるようにも感じてしまうのです。

2019シーズンの背番号10は角口大征選手

そのクラブがホームタウンとする地域で「どれだけ必要な存在として在り続けられるか」

これは、会の中でご挨拶された江戸川区サッカー連盟の高木秀隆会長のお話の中で

「小学校に東京23FCの選手たちが訪問すると、子どもたちが大喜びする」

という言葉があったのですが、それを伺って改めてそう思うことが出来ました。

子どもたちにとって、サッカーを教えにきてくれる選手たちがJリーガーであろうとアマチュアだろうと、そこはさほど大きな問題ではなくて、カッコよくて優しくてサッカーのとても上手なお兄さんたちが自分たちの為に学校へ遊びに来てくれる、この状況にこそ価値があり、それを続けていくべく、選手たちは自らを律し、チームとしても厳しい戦いに挑む姿を地域社会に対して見せ続ける。

これこそが街クラブの本領があるのではないかとも思うのです。

東京23区内をホームタウンとするクラブだから

ただ、仮に東京23FCが「地域から必要な存在とされている」ことをクラブ存続の最重要テーマと考えたとしても、クラブが未だリーチ出来ていないファン層はあまりにも大きい。

今回の「新体制発表会」がクラブ後援会員限定パーティであったにせよ、選手やチームスタッフも含めたクラブ関係者、スポンサー企業を主とした支援者以外の参加者が数えられる程度の人数でしかなかったのも事実で、これについてはJリーグクラブのそれと比較しても天と地ほどの差が存在しています。

(新ユニフォーム販売に合わせ2月6日に開設されるオンラインショップ、3月上旬にオープンするオフィシャルショップなどの試みは新たなファン層にリーチする可能性を持っているように思います)

こうした実態を踏まえた上で「Jリーグ昇格」ではないクラブの存在意義を端的に表す言語を私自身も見出すまでには至っていませんが、必ずやこの数年のうちにそれが「サッカークラブの新たな存在意義」として見出され、そこに価値を見いだす人を生み出し、広く波及していくであろう気運は感じているのです。

極端な話、東京という街の「習性」を考えれば、そこで求められるのは「Jリーグクラブ」では無いのかも知れない。

ただ、だからと言って「関東リーグ」が求められているわけでもない。

そこにかかわることで日常に彩りがもたらされるような、生活の中で必要不可欠な存在にサッカークラブがなることが出来れば、戦うカテゴリーがどこであろうとそれは些末な問題であるのかも知れません。

そして東京23区をホームタウンとするサッカークラブがそれを体現することが出来れば、日本のサッカーシーンは大きく変化していくようにすら思えるのです。

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