彩の国カップレポート 東京国際大サッカー部が変えた埼玉県社会人サッカーの勢力図

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天皇杯都道府県予選トーナメント大会の醍醐味

先日このブログで天皇杯へ続く道としての「東京カップ」をどうやって楽しむことが出来るのか、その醍醐味として以下のようなポイントを箇条書きしました。

  • 東京都4部や都リーグ外チームでも東京都1部の強豪と対戦する可能性がある
  • 東京都1部の強豪であってもこの時期は選手の人数、コンディションともに難しい時期
  • リーグ戦で優勝するようなチームは下位カテゴリーであっても勢いがある
  • 下位カテゴリーチームのモチベーションが総じてもの凄く高い
  • カテゴリーが1つ違うくらいであれば格上喰いがいくらでも起こる
  • とはいえ東京都1部の強豪などにとっても、1つでも多く勝ち、より強いチームと真剣勝負出来る機会を得ようと必死
  • つまり東京カップとは格上と対戦できる段階まで勝ち進むことが大事なトーナメントなのかも

これらのポイントが凝縮された対戦として「3回戦 南葛SC(都1部)VS FCエコ・プラン(都4部→3部)」についても触れましたが、天皇杯東京都代表ではなく、天皇杯埼玉県代表決定戦へと続く道になっている「彩の国カップ」を取材したことで、この「東京カップ醍醐味ポイント」の中に重大な醍醐味ポイントがすっかり抜け落ちていたことに気づかされました。

この醍醐味ポイントは「東京カップ」では少々気付きづらい実情があったにせよ、埼玉県や千葉県、山梨や群馬や栃木で県リーグを見ている方々にとっては、絶対に欠かすことの出来ない醍醐味ポイントでもあるはずですので、今回はそれが何であるのか、試合レポートも含めて書いていきたいと思います。

「天皇杯へ続く道」だけではない「東京カップ」の醍醐味とは?

大学サッカー部傘下の社会人リーグ参戦チームの存在感

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私の挙げた「東京カップ醍醐味ポイント」からすっかり抜け落ちていた点。

それは都県リーグは勿論、地域リーグや中にはJFLにまで存在している「大学サッカー部傘下の社会人リーグ参戦チーム」と社会人チームの対戦が実に面白い!ということ。

都県リーグなどはわざわざ「〇〇県社会人サッカーリーグ」と称していることからも分かるように、以前は純然たる社会人選手、社会人チームだけが参戦出来るリーグでありました。

しかし、例えば東京都社会人リーグについて言えば、まずは「学生選手」の登録・出場が認められ、その学生選手枠が徐々に広がり、ついには学生選手しか登録していない「学生チーム」へも門戸が広がっていく流れがありました。

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これは私が所属していた東京都4部所属のチームもそうでしたが「選手確保」という面においては「学生選手規約の緩和」自体が非常に助かる規約改訂でして

やっぱり時間の融通が利く大学生を選手として登録出来ると、チームの活動自体が活性化しますし、なかなかコンスタンスに活動参加が出来ない社会人選手を差しおいて、学生選手をチームの軸に据えるような形にもシフトして行くことも出来るんですよね。

結局はそれが「学生チーム」への門戸開放にまで到達すると、ゴリゴリの体育会大学生チームと東京都4部リーグで対戦しなくてはいけなくなったりして、泣きたくなるほどの大敗を喫したりするようになっていくのですが…

この10年の間に約半数まで数を減らしてきた社会人サッカーチーム(都県リーグ所属)の実情を鑑みた時に、社会人連盟が「学生も参加してヨシ」と舵を切ったのも当然の判断であったと思います。

ただ、そうした流れが生まれたことで、こと地域リーグや都県リーグにおける学生チームの存在感は年々増してきておりまして、関東の有名どころで言えば「流通経済大学」「東京国際大学」のように300人からの選手を抱えながら、複数のチームを社会人リーグに参戦させるというスタイルがすっかり定着してきました。

東国大サッカー部が埼玉県社会人サッカーの勢力図を変えた

東京の場合、東国大や流経大のように300人もの選手を抱えるだけの活動場所を確保するのが難しい上、さらに人口も多く10年で半減したとは言えまだまだ純然たる社会人チームの数も多いこともあって、勢力図が著しく変わってしまうような事態にまでは至っておりませんが、例えば今回私が取材してきた埼玉県に関しては、東京国際大学サッカー部傘下チームの存在感が、その勢力図に相当大きな影響を及ぼすようになってきています。

ここにざっと社会人リーグに参戦している東京国際大学サッカー部傘下チームを挙げてみます。

  • 東京国際大FC(関東サッカーリーグ2部)昨年度天皇杯埼玉県代表
  • Tokyo International UniversityTIU (埼玉県社会人サッカーリーグ1部)2018シーズンリーグ優勝
  • ドリームス(埼玉県社会人サッカーリーグ1部)2018シーズンリーグ4位
  • 東京国際大Happiness(埼玉県社会人サッカーリーグ2部)
  • ドルフィンズSC(埼玉県社会人サッカーリーグ3部)

※ちなみに東京国際大サッカー部は関東大学リーグ1部所属のトップチームや大学連盟主催インディペンデンスリーグ(Iリーグ)や新人戦リーグを合わせると、計12チームが稼働!凄い!

この中でTokyo International University(以下TIU)は2016シーズンから埼玉県リーグを3連覇中。

1つ上のカテゴリーとなる関東リーグ2部に同母体チームである東国大FCが所属している為、優勝しても昇格は出来ない状況となっています。(埼玉県リーグの場合は同一カテゴリーに同母体チームの共存が認められている)

学生チームという特性から、毎シーズン選手たちは大きく入れ替わり、それでも東国大サッカー部300人超えの大所帯の中から、一定レベルの選手たちがTIUでプレーしますので、言ってみれば東国大サッカー部が方針転換でもしない限りは埼玉県リーグの中で東国大サッカー部傘下チームがずぅ~っと強豪チームとして存在し続けるんだと思います。

そういう意味で、埼玉県リーグ1部に所属する社会人チームにとってTIUドリームスは「格上チーム」としての側面も持っているでしょうし、彼らと対戦する時にだけ放出されるアドレナリンがあるのかも。

だからこの日行われた彩の国カップ3回戦「TIU 対 アヴェントゥーラ川口」は、まさに「天皇杯へ続く道」でもあるトーナメント大会を楽しむ上で、その大きな醍醐味を孕んだ対戦でもあったわけです。

東国大サッカー場に「ド演歌」が響き渡る

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アヴェントゥーラ川口は昨シーズン埼玉県1部昇格を果たし、久しぶりに県のトップリーグに戻ってきたチーム。

とは言え、ザスパクサツ群馬から志村駿太選手が加入、他にも元Jリーガーという経歴を持つ選手が所属するなど

「もはや都県リーグでも入場料取っていいんじゃない?」

を地で行くようなチームでもあるのですが、それでもピチピチの学生チームに対してはいつも通りの戦い方ではやられてしまうとばかりに、この3回戦に向けた対策も万全で準備をしたはずです。

試合は2-2の引き分けで、PK合戦によりTIUが勝ち上がるという、社会人サッカー目線だと少し残念な結果ではあったものの、その試合自体は非常に見どころのある実に面白いゲームでした。

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TIUの選手たちは個々の技術スキルも高く、戦い方もスマートで、一見するとアヴェントゥーラ川口には勝ち目がないようにも思えてしまうのですが、若さや練習量は学生に分があったとしても、歴戦の雄でもある社会人選手たちのしたたかさと言うか、懐の深さと言うか、何にしてもその非常に「味わい深い」サッカーが、徐々にTIUの洗練されたサッカーを凌駕する展開になっていったのです。

音楽ジャンルに例えると、TIUが「最先端のポップス」アヴェントゥーラ川口は「演歌」でしょうか。

情念みたいなものが込められた「演歌」のしらべが、最先端ポップスのメロディやリズムをことごとく乱していく。

結果的に引き分けで終わってしまったものの、少なくともこの試合に関して言えば、アヴェントゥーラ川口にしても狙っていた戦いは出来ていたはずです。

特に後半の立ち上がりから中盤過ぎ、アヴェントゥーラ川口が逆転ゴールを決めた前後の時間帯は、間違いなく坂戸の東国大サッカー場に「ド演歌」が響き渡っていました。

大学生VS社会人

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試合終了後、この試合に先発出場した山口俊輔選手(先日このブログでインタビュー記事を書かせて頂いた選手)は

『PK敗けは残念ですが、プラン通りに出来た部分もかなりあった』

と話してくれました。

天皇杯は本大会自体が「ジャイアントキリング」を売りにしているトーナメント大会。

ジャイアントキリングが起こると言うことは、それだけ「カテゴリーの異なる」チーム同士が対戦するということでもあります。

アヴェントゥーラ川口にとって、厳密に言えばTIUは「格上チーム」ではありませんが、その背景を知れば知るほど、強豪大学サッカー部傘下の社会人リーグ参戦チームと対戦することが結構なチャレンジであると感じられますし、今回はそこを乗り越えることは出来なかったにせよ、少なくともそのチャレンジをする舞台までは勝ち上がることが出来たわけで、チームにとっても彩の国カップは十分意義のある大会となったのではないでしょうか。

いやぁ

それにしても「大学チーム」対「社会人チーム」の対戦は、本当に味わい深い。

特に社会人チームの側に肩入れしながら観戦すると、相当興奮出来ますよ!

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