エスペランサSC 野七里レポート オルテガ監督が「作る」フットボールの必要性

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地域リーグ所属チームも徐々にトレーニングを始動する時期になってきています。

地域リーグにおいても、選手の移籍情報については未だ毎日のように流れてもきてはいますが、概ねでチームの骨格も定まり、春から始まるリーグ戦、あるいはもう目の前に迫っている都道府県天皇杯予選大会に向けて、選手たちだけではなく、クラブ運営の方々にあっても、高いモチベーションで取り組んでいる様子が伺えることも多いです。

そんな中で、私はひとつの印象的なムービーを目にすることが出来ました。

「エスペランサSC 2019シーズン始動」というタイトルがつけられたこの動画は、まさにあのエスペランサSC(関東リーグ2部)2019シーズン始動日の様子がまとめられたものなのですが、それが実にクールでカッコいい!

聞くところによると、プロの映像作家さんが制作されたものでもあるようで、BGMも含め動画のクオリティもとにかく凄い!

そしてこの動画の撮られた舞台、つまりエスペランサSCの練習グラウンドですが、そこからは「アルゼンチンの空気」のようなものすら感じられる(私はアルゼンチンへ行ったことが無いので勝手に想像しているだけです!)

「ここへ行けばオルテガ監督の思いを理解出来るかも知れない!」

そう思った私は、すぐにクラブへアポイントを取り、平日の夜間に行われているエスペランサSCトップチームの練習を取材しに行ってしまいました。

今回はその取材で知ることが出来たこと、その中でも特にこの練習場がエスペランサSCにとってどんな意味のある場所であるのか、そこに焦点をあて、オルテガ監督やその息子さんで選手兼コーチのグスタボさん、クラブマネージャーで牧師の佐藤賢二さん、昨年の関東2部得点王、古川頌久(のぶひさ)選手の言葉なども交えながらレポートしてみたいと思います。

エスペランサSC 野七里レポート

神が与えたビジョン

エスペランサSC オルテガ監督

あのディエゴ・マラドーナとアルゼンチン代表でともに戦った経験を持つオルテガ監督(オルテガ・ホルヘ・アルベルト)が、エスペランサSCの現在の活動拠点である横浜・野七里(のしちり)へやってきたのは2000年代の初頭。

当時そこは草がうっそうとし、ゴミだけが溜まっているような荒れ地だった。

しかしキリスト教会の牧師たちとともに初めてそこを訪れたオルテガ監督には、その荒れ地が全て緑で覆われているように見えたという。

『そこを前にして祈ると子どもたちが喜ぶ姿が見え、神様の「ここがお前の家になる」という声が聞こえたのです。神様が「ビジョン」を下さったのです』

それを同行した牧師たちに伝えるも、誰もがそれを現実のものになるとは考えなかった。

それから数年の後、いくつかの偶然が重なったことでかつての荒れ地がサッカー場となり、その一角にキリスト教会(本郷台キリスト教会)が佇むという現在の姿、オルテガ監督が神から与えられた「ビジョン」を実現するエスペランサSCの「家」へと姿を変えた。

オルテガ監督は敬虔なキリスト教徒。

その行動規範の中で神の存在は当然ながら絶対であるだろう、しかし誰もが「あり得ない話」と受け止めていたその「ビジョン」が現実のものとなっていく過程で、監督の強い思いが野七里という地域、あるいは横浜市におけるサッカーシーンの中で一定の共感を以て受け止められていたのも間違いのないことだったのではないか。

必要だから作る 必要だから闘う

選手たちの「更衣スペース」

『私が日本に来た理由は、日本のエリートではない子どもたちの夢をサポートをするためです。一生懸命に諦めずにやれば夢は叶う、そのメッセージをその子たちに与えたいんです』

この言葉がそのまま体現されているのが、野七里のエスペランサSC練習場であるとも言える。

『オルテガさんは何でも自分で作ってしまうんです』

クラブマネージャーの佐藤賢二さんは牧師でもあり、育成チームの練習前には定期的に聖書を聞かせることもされている。

そんな佐藤さんが話す「何でも自分で作ってしまう」「作ってしまったもの」でこの練習場は溢れている。

長屋のように立ち並ぶ小屋を選手やコーチ達はフル活用している

グランドの周囲を囲むフェンスは勿論、選手たちが着替えをしたり荷物を置けるスペース、トップチーム専用の更衣室、ミーティングルーム、コーチ陣の控え場所、用具倉庫、、

子どもの頃に夢見た「秘密基地」を思わせるそれらの小屋が、連なるようにしてグラウンド脇に立ち並ぶ。

それだけではない、筋力トレーニング用のジム、練習場が見渡せる位置にはカフェ、砂地トレーニング用に大きな砂場や、一部のナイター照明に至るまで、施工を業者へ依頼するのではなく、オルテガ監督が実際に自分で作ってしまうのだ。

前出の佐藤さんはこんな話もして下さった。

『オルテガさんは、ここがまだ土のグラウンドだった時も毎日のように石ころを拾っていました、今も子どもたちがやってくるまでの間の時間は、ずっと人工芝ピッチの手入れをしているんです』

オルテガ監督の作ったトレーニングジム

オルテガ監督によって作られたもので溢れる練習場の中で、数年前に敷いた人工芝ピッチだけは専門業者が施工したもの。

その人工芝ピッチに初めてメンテナンスを入れることになった際、やってきた業者の工法をずっと見ていたオルテガ監督。

以降1度も業者を呼ぶことはせず、プロの工法を見よう見まね、自分たちの手でメンテナンスをするようになったそうだ。

『毛利さんは「凄い」って言ってくれますけど、監督は「必要だから作る、必要だからやる」そこだけなんですよ』

オルテガ監督の息子で、現在はトップチームのヘッドコーチでもあるグスタポさん(オルテガ・ホルヘ・グスタボ)は練習場を案内して下さりながら、こんな印象深い言葉を私にくれた。

オルテガ監督の思い描く「ビジョン」に必要なもの、それが選手の更衣室であろうと、トレーニングジムであろうと「お金がないから」という理由で諦めるのではなく、自分の力で出来る可能性を探り作り上げる。

練習中に選手たちが頻繁に使う水道口も手作り感が溢れている

決して見栄えが良くなくても、そこで雨風を凌ぎながら子どもたちが着替えをすることが出来て、トップチームの選手たちが有料のスポーツジムへ通わなくても筋力トレーニングをすることが出来て、練習を見に来た保護者が腰かけてコーヒーを飲むことが出来てさえいればいいじゃないか。

こんな思いがその練習環境についてだけに留まらず、エスペランサSCが目指す「フットボールの在り方」そのものに現れているように感じることも出来る。

得てして「荒い」「ダーティ」と評されてしまいがちなエスペランサSCのサッカースタイル。

しかしその根底には「フットボールに必要なモノは戦う気持ち」というオルテガ監督の、さらに言えば「アルゼンチンフットボールの常識」がそこにあるのではないか、グスタポさんの言葉を借りれば「必要だから闘う」と言ってもいいだろう。

自分の場所

この日は22:00頃まで練習が行われた

小学生時代からこの野七里でボールを蹴ってきた古川頌久選手は現在24歳。

昨年2度目の関東リーグ2部得点王に輝き、ウルグアイ2部、J3カターレ富山に所属したキャリアも持つ、エスペランサSCの顔とも言えるプレーヤー。

『最初はあの上の方(現在は教会に隣接する駐車場や小さめのサッカー場がある場所)でやっていたのが、ここでやれるようになって、そこに人工芝がはられて、今も幼稚園から大人までサッカーが出来ているというのは、当時の自分にしてみれば想像も出来ませんでしたし、ここで育ち、大人になってもここでサッカーが出来ているのは嬉しいこと。野七里を誇りに思っています』

と練習後に話してくれた古川選手の言葉はこう続く

エスペランサSC 古川頌久選手(2018シーズン関東2部得点王)

『ここを「自分の場所」だと思っています』

約20年前、草がうっそうとしゴミだらけだった場所を訪れ「神様からビジョンを与えられた」オルテガ監督。

かつてはオルテガ監督にだけ「緑に見えた」荒れ地から育った選手が、そこを「自分の場所」と言うまでになってきたのは、オルテガ監督が信じてきた道に共感する人たちがいたからなのではないか。

サッカーが、フットボールが、地域社会からその必要性を認められている。

そう信じられる空間が、まさに野七里のエスペランサSC練習場であるように私には思えていた。


後記

以上、オルテガ監督の「作ってきた」エスペランサSC練習場についてのレポートでしたが、とても1回の記事で全てを伝えられるような取材内容ではなかったので、エスペランサSCシリーズを近くまた書かせて頂きます。

また、当日撮影させて頂いたインタビュー動画も、順次Youtube「ratel-football-ch」で公開させて頂きます。

最後に、今回の取材を快くお受け頂きましたエスペランサSCのクラブ運営の皆さま、インタビューに応じて下さったオルテガ監督、古川頌久選手、熱い練習を見せて下さったトップチーム、ユース、Jrユース選手、スタッフの皆さん、スペイン語の通訳をして下さったグスタボさん、取材のセッティングをして下さったクラブマネージャー佐藤賢二さん、本当にありがとうございました。

エスペランサSC公式サイト

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