海外移籍 手放しで肯定する風潮は如何なものか

いや、全然分からないわけじゃないんですよ。
海外でプレーすることがその選手にとってアスリートとしての成長をさらに促し、その可能性を大きく広げていく側面があるってことは、これまでに海を渡っていった数々の日本人選手の活躍からも感じるところは多いです。
加えて、KAZUや中田英寿がセリエAに行った頃に比べれば、日本サッカーも欧州を中心とした「フットボールマーケット」の中でその存在感は格段に大きくなってきましたし、実際にロシアW杯で活躍が著しかったのは「海外組」と呼ばれる選手たちで、大迫勇也選手なんてケルンでモデストと組んで大活躍したシーズンくらいから、かなり逞しくなった印象がありますよね。

香川真司選手がドルトムントでブンデスリーガを連覇したり、長友佑都選手がチェゼーナからインテルへ出世移籍したり、本田圭祐選手が「リトルホンダ」の存在を告白したり、私自身も現在のようにJリーグをはじめとした国内サッカーを熱心に見るようになるまでは、そりゃあ、キャッキャ言って大騒ぎしていたように記憶しています。
でも今にして思えば、あの「キャッキャ」言えてた心理状態って何だったんだろう、と。
勿論、香川にしても長友にしてもリトルホンダにしても、Jリーグという小さなケージの中に収まっていられる素材では無かった、それは分かります。
サッカー選手たるもの、その才能に見合ったステージを与えられるべき、これも分かります。
ただですね、まだ活躍をしたわけでもないのに「欧州移籍!」というワードが出てきただけで、手放しでそれを肯定してしまう風潮については如何なモノかなぁと、
国内サッカーに関心が強くなればなるほど、そんな思いが強くなってくるのですよ。
日本人サッカー選手の「上がり」はW杯戦士?

サッカーというスポーツが他とは比較にならないほどワールドワイドで、その最先端世界となっている欧州トップリーグに挑戦する日本人選手の活躍が、日本のサッカーファンや世間の人たちにある種のカタルシスを与え、それが「=サッカーの魅力」にもなっている。
これも事実でしょう。
W杯もそうですよね、本気のコロンビアや本気のベルギーに向かっていく日本代表チームだからこそ、そこはかとない魅力がそこに生まれる。
ただそれはそれとしてですよ、
「日本サッカーって欧州や南米に挑戦する為に存在しているのか?」と、
もっとはっきり書けば
「Jリーグって欧州リーグ発展の為にあるのか?」と、そう叫びたくなる衝動を抑えられなくなってしまう時があるんですよ、最近。

まあはっきり言って、そんなことを指摘したところで将来性のある若手Jリーガーが、オランダとかベルギーとかポルトガルとか、「欧州トップリーグの育成リーグ的側面」を持ったリーグへ行ってしまう流れは無くならないでしょう。
若いJリーガーの中には「絶対欧州に行きたい!」と公言する選手も多いですし、それを斡旋したり指南したりする代理人ビジネスも進化してきています。
ただ、じゃあ何で若いJリーガーは「絶対欧州に行きたい!」って思うのか、
「欧州クラブで活躍して日本代表に選ばれたい!」って思うのか、
「日本代表の中心メンバーになってW杯で活躍したい!」って思うのか、
これって、私は日本サッカー界の病巣だとも思っているんですけど、結局のところ「W杯で活躍する」というベクトルに向けてしか、選手たちに「夢を見せることが出来ていない」んじゃないかと、日本人サッカー選手の「上がり」が「そこ(W杯戦士)」なんだという、ある意味でかなりツマラナイ価値観が、半ば「普遍論」として完璧に擦り込まれている証なんじゃないかと、そう強く思うのです。
Jリーグって欧州リーグ発展の為にあるの?

ここで敢えて批判されることを覚悟して私は言いたい!!
「W杯で日本代表が活躍することってそんなに重要?!」
これはですね、ロシア大会でもそうでしたけど、あのタイミングで一時的に沸騰するのって「日本代表人気」なのであって「サッカー人気」なんかじゃないんですよ。
だから、もし仮に日本代表がW杯で優勝したとしても、その熱量がJリーグをはじめとした国内サッカーに対する関心度合いへ直結することなんて、私ほとんど無いと思いますし、期待もしていません。
だって「そだねー♡」って大騒ぎしたからって、カーリング日本選手権とか観に行きます?観に行かないまでも試合結果とか気にします?
言ってみれば「欧州移籍ヒャッホウ!」とばかりに手放しで喜ぶのって、「W杯パリピー」が渋谷のスクランブル交差点で大騒ぎする為の素材を供出しちゃっているようなもんなんですよ。

もうホントにね、中山雄太選手のオランダ完全移籍とかね、小久保玲央ブライアン選手のポルトガル完全移籍とかね、選手たちの強い思いを尊重する気持ちは当然ありますけど、内心は残念でならん!
中山雄太のあの比類なきプレースタイルが、あの品のあるボールテクニックが、スクランブル交差点大騒動のアテにされる運命を辿るなんて、いや、スクランブル交差点のアテにされようとされまいと、直に目にする機会が激減してしまうなんて・・・・!!!!!
田舎のオランダ人が「なかなかやるねぇ!ナカヤマ!」って喜んだとしても、その裏では日本のサッカーファンが「雄太ロス(涙)」ってなってるんじゃー!
小久保玲央選手に至っては、Jリーグファンにすらそのプレーを見せることなくベンフィカですよ。
名GKを何人も輩出している名門クラブへ行けたのは素晴らしいことかも知れませんけど、果たして彼のプレーを私たちはいつ見ることが出来るのか、、、ちっともイイことと思えないわ!!
ただ、これはもう、Jリーグをはじめ国内サッカーをより大きな存在としていくしか、将来性のある日本人サッカー選手を「スクランブル交差点大騒動」から守る手立てはないわけです。
Jリーグがもっと注目を集め、マーケットとして大きくなっていけば「日本人サッカー選手の上がりはW杯戦士」なんていうツマラナイ価値観も、普遍論では無くなっていくはず。
Jリーガーのステータスがあがっていけば、英語も話せないような選手まで「欧州欧州」念じるようなことも無くなっていくはず。
だから私は言い続けたい!
「Jリーグって欧州リーグ発展の為にあるのか?」
と。