サッカー天皇杯に女子選手が出場出来るのは何故か?

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性差別だ!

サク(♀)13歳

天皇杯優勝賞金1億5千万円

皇后杯優勝賞金300万円

2つの日本一を決めるタイトルにおける優勝賞金の圧倒的格差を以て

「性差別だ!」

と叫ぶ声が、皇后杯決勝の行われた元日以来Twitter上に散見されましたが、私はこの格差を「性差別だ!」とする主張が全く正しくないと言える重要なことに気がついてしまいました!

長く活動してきた社会人サッカーチーム(東京都4部)での体験から気がつくことの出来たその「性差別ではないと言える重要なこと」は、私自身の中でも結構画期的な発見でしたので、今回それを頭の中で整理する意味も込めて、一本の記事にして書いてみたいと思います。

いやぁこれは「女子サッカー」に対する概念がちょっと変わっちゃうぞぉ。

と、自らハードルを高めに設定しつつ、いきなり結論から書いてしまいます。

性差別だとは言えない重要なこと

天皇杯と皇后杯。その賞金の著しい格差、それが性差別だとは全く言えない重要なこと。

それは、、、、

「天皇杯には女子選手も出場可能だから!」

です。

もう少し丁寧に書いてみます。

「皇后杯は女子サッカー大会だけど、天皇杯は性別を問わないサッカー大会なのだ!」

こう書くとあたかも天皇杯だけが「性別不問の特別なサッカー大会」であるかのような誤解を生んでしまいそうなので、その背景についてもうちょっと書かせていただくと、そもそも日本サッカー協会が定めるチーム登録や選手登録に関する規定の中に「男子」という括りは存在していません。

なので極端な話、女性Jリーガーが誕生するのを阻害する規定も存在しないと言えるのです。

高校野球では甲子園練習のトスバッティングを女子部員がやっただけで波紋が巻き起きたりしてましたが、サッカーについては全く問題なし。

「ふ~りむくなよ うつむくなよ~♪ キミは美しい♪」の「キミ」が男子選手だと決まっているわけじゃないのです。

まあ実際のところは、その対格差や体力差が大きな壁となって、この先も女子選手が高校サッカーに出場したり、女性のJリーガーが誕生する可能性はほとんど無いに等しいのでしょうが、ルール上はそれを禁じる形にはなっていません。

で、これにどうして気がつけたかと言えば、私が長く活動していた社会人チームに1人の女子選手が所属していて、東京都4部のリーグ戦に彼女をガンガン出場させていたことを思い出したからなのです。(ママになったので引退)

この件については、日本サッカー協会がかなり積極的にその主旨についての解説を公式サイトの中でもしています。

男子チームに女子選手は入れる?

もちろん入れます。日本サッカー協会が分類するチームは以下の6つに分かれますが、全てのチームに女子選手は入ることができるのです。

JFA.jpより抜粋

ということで、日本サッカー協会の定めの中で「女子」とは「1種」とか「2種」とか「シニア」とか、そういうカテゴリーのうちの1つであって、「男子サッカー」と「女子サッカー」が双璧のようにして並び立つという概念はそもそも存在していないと理解した方がいいのかも知れません。

つまり、天皇杯の優勝賞金と皇后杯の優勝賞金を比べること自体が若干ピント外れな発想であって、その格差が性差別だとする主張に至っては「言いがかりの類」だと言ってもいいのです。

皇后杯の比較対象は

ただそうは言っても1億5千万と300万ですから、50:1の格差ですから、そりゃあんまりじゃないかと、その気持ちは分かります。

でもですね、先にも書いたように「男子サッカー」と「女子サッカー」が並び立つ概念すら存在しないんですよ、サッカー界においては。

「サッカー」の中に「高校サッカー(2種)」や「中学サッカー(3種)」や「少年サッカー(4種)」があって、「女子サッカー」もそのうちの1つなんです。

だから皇后杯の賞金額を比較する対象は「2種」や「3種」や「4種」「シニア」の全国大会優勝賞金であった方が仕組み上は正しいと言っちゃうことも出来るのです

では行ってみましょう、各カテゴリーのJFA単独主催全国大会優勝賞金をドーーんと!

シニア

JFA全日本O-40サッカー大会 優勝・準優勝に表彰状とトロフィーを授与する。3位(2チーム)に表彰状を授与する。賞金(チーム強化費)ナシ

JFA全日本O-50サッカー大会 優勝・準優勝に表彰状とトロフィーを授与する。3位(2チーム)に表彰状を授与する。賞金(チーム強化費)ナシ

JFA全日本O-60サッカー大会 優勝・準優勝に表彰状とトロフィーを授与する。3位(2チーム)に表彰状を授与する。賞金(チーム強化費)ナシ

JFA O-70オープンサッカー大会 各グループ1位に表彰状とトロフィーを授与する。賞金(チーム強化費)ナシ

4種

JFA 全日本U-12サッカー選手権大会  優勝チームには内閣総理大臣杯並びに表彰状、アルゼンチン共和国杯、本協会による表彰状の他、優勝旗並びにトロフィーを授与する。賞金(チーム強化費)ナシ

3種

高円宮杯 JFA 全日本U-15サッカー選手権大会 優勝以下第3位までのチームに表彰状ならびにメダルを授与する。優勝チームには高円宮杯を授与し、次回大会までこれを保持せしめる。賞金(チーム強化費)ナシ

2種

高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2018 ファイナル 賞金(チーム強化費)ナシ

フットサル

全日本フットサル選手権大会 優勝、準優勝、第3位のチームに以下の強化費を支払う。優勝:1,000,000円(税別)準優勝:500,000円(税別)3位:300,000円(税別)

フットサルだけ唯一賞金が!

でも優勝で100万円!皇后杯の優勝賞金(チーム強化費)300万円が俄然光を放ちはじめましたよ!!!

まあこの比較については自分でやっていながら「あこぎ」だなとは思いますよ、でも天皇杯の優勝賞金と比較して「性差別だ!」と叫ぶのに比べたらねぇ、相当にまともじゃないかなと思っちゃいますね私は。

男子31:女子1

もうひとつ。1億5000万と300万、50:1の格差という数字による衝撃を盾にしてぶつかってきている相手に対しては、こちらも数字で応戦する必要もあると思うので、一応コレについても触れておきます。

887187:28119 ≒ 約30:1

これ、日本サッカー協会登録選手の男女比です。

男子30:女子1

ここが50:1で綺麗に決まれば良かったんですが、それにしてもこの圧倒的格差。

つまり人数規模に対する倍率だけで言えば、天皇杯で優勝する方が皇后杯で優勝するよりも30倍くらい難しいってことも言えますよね、もの凄く乱暴な理屈ですけど。

だからまあ、皇后杯の優勝賞金は500万くらいが妥当だと言うことは出来るかも知れませんね。

 

今回ちょっとだけ日本サッカー協会の公式サイト「JFA.jp」を覗いてみて、日本サッカー協会が女子に向けたサッカーの普及に対して具体的に起こしているアクションについて知ることも出来ました。

中でも「女子サッカーあれこれ」と言うページに書かれていることは、もっと広く知られていいんじゃないかと思うので、今回の締めとして引用させて頂きます。

女の子なら、中学校(男子)サッカー部と女子チームの両方で公式試合に出られます!

女子チームに登録して、通っている中学校のサッカー部でも男子といっしょに活動している女子中学生はたくさんいます。両方のチームでがんばってるし、男子でも女子でもチームの仲間といっしょに試合がしたい!と思いますよね。

女子チーム所属のままで(チーム移籍をしなくても)、中学校サッカー部[男子:第3種登録チーム]の部員として、大会に出られるんです。。

2006年3月に行われた日本サッカー協会の理事会で女子選手の大会参加資格が見直されました。
参加できる大会は次の通りです。(地域・都道府県大会(予選大会)も含まれます。)

・全国中学校体育大会/全国中学校サッカー大会
・JFAプレミアカップジャパン
・高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会

今までは、「女子チーム」と「中学校サッカー部」の2つのチームでトレーニングをしていても、それぞれのチームで試合に出るためには、大会の度に移籍(チームを移る)手続をしなければなりませんでした。よって、どちらかの大会出場を諦めなければならないことが多くありました。
「近くじゃないけど、週末なら練習に参加できる女子チームがあるんだけど・・・。」、「男子といっしょの激しいサッカーにチャレンジしてみたいなあ・・・。」などなど、「女子チーム」と「中学校サッカー部」のそれぞれのメリットを生かしながらサッカーを続けたいと思っている人は、「女子チーム」に登録をすることで、両方のチームで大会に参加することができます。これから中学生になるみなさんはこれからのチーム選びの参考にしてください。
日本サッカー協会は、この改正により、女の子がもっとたくさんの試合に出られるようになり、女子サッカーがもっと活発になればと考えています。

JFA.jp「女子サッカーあれこれ」より引用

皇后杯の賞金額を天皇杯並みにすることよりも、こうして女子にとってよりサッカーをしやすい環境を整えていくことこそが、日本サッカー協会にしか出来ないとても重要な「仕事」であるんじゃないかと、私は今回その思いを強く致しましたです、ハイ。

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