1969年以降、天皇杯決勝が元旦に行われなかったのは2度目

『元日の明治神宮に250万人の参拝客が来るので、初詣帰りの1%でも来てもらえないか』
こんな日本サッカー協会の思惑もあって天皇杯決勝が元旦の国立競技場開催となったのが1969年。
その後長らく「元日国立」が定着してきた天皇杯。
第94回大会以降は東京五輪に向けた建て替え工事で国立競技場が使用できなくなり、この第94回大会は47大会ぶりに決勝戦を元旦に行わない大会でもあった。(2015年1月に開催されるアジアカップへ参加する日本代表チームの準備期間を考慮し、決勝戦が12月13日に開催された。ちなみに準決勝は11月26日に開催。)
そんな前例があったことで「アジアカップイヤー」に当たる2018シーズンの天皇杯も最初から元旦に決勝戦が行われないことは決まっていましたが

「鹿島アントラーズがACLで優勝し、天皇杯ベスト4まで勝ち上がってしまうと、12月中にUAEまで行ってCWC(クラブW杯)にも参戦しなくてはならないアントラーズの選手たちに、過重労働を強いることになってしまう!」
という非常に良識的な判断がされたことで、準決勝が12月16日から12月5日へ、決勝戦が12月24日から12月9日へ、開催日程が大幅に前倒しされることになったのであります。
で、そうは言っても世の中全てサッカーのカレンダーで動いているわけではなく、試合会場となっていた埼玉スタジアムが12月9日の日中は「さいたま国際マラソン」の折り返し地点となることは決まっていたため、異例中の異例ではありましたが、このクソ寒い12月のナイター開催が決まったわけでございまして、試合自体に対する興味を遥かに超える
「そんな異例な天皇杯は絶対に現地で体感しなくてはならぬ」
というような独り善がりな使命感に駆られ、ヒートテックをしっかり着込んで私も埼スタへ行ってきたのであります。
さらに前倒しされた天皇杯決勝の「良かったところ」「良くなかったところ」
実は1年前にこのブログで書いた『あえて言う 日本サッカー界は天皇杯決勝「元旦開催」にこだわれ』というタイトルの記事が、この「天皇杯決勝戦さらに前倒し決定」以来、結構な人数の方々に読んで頂けておりまして、本当に嬉しい限りなのです。
この記事のどこに「フック」があるのか、それは私にもちょっと分かりませんが、少なくともこの天皇杯という歴史と風格ある大会の決勝戦開催日に対しては、多くの方が何らかの思いを持っておられるのだなということは実感しております。
ということで今回は元旦でもなくX’masイヴでもない「さらに前倒しされた天皇杯決勝戦」の現場に行って感じたこと、それを「良かったところ」「良くなかったところ」とに分けてまとめてみます。
ではまず「さらに前倒しされた天皇杯決勝戦」の「良かったところ」から
思いの外寒くなかった

はい、まずコレです。
実はですね、私寒いのは嫌いじゃないんですが、寒さに目茶苦茶弱くてですね…って書くと分かりにくいですね。
平たく書くと「寒いのは嫌いというよりむしろ好きなのに、すぐ風邪を引く」ってことなんですけど、やっぱり齢取ったなぁって思うのが、一度風邪引くとなっかなか治らないんですよ、最近。
「そんな涼しいカッコしてたら風邪引くよ!」って子どもの頃なんかには大人によく言われていましたけど、この齢になって分かるのは「大人って風邪を恐れていたんだ」ってことなんですよね、だって一度風邪引くと10日くらいダルいんですよ?そりゃあ用心もしますって!
って、いつまでも「オッサンと風邪」についての話を書いていてはいかんな。
えっとですね、埼スタってやっぱり巨大な壁に覆われた空間なんですよね、だから想像していたような寒さは感じませんでした。ってことなんですけど、まあこれで雨でも降っちゃえばね、その時点でゴール裏は地獄絵図になっていたとはずですが、完全にこの「2018年12月9日の晩」に限定した話で「良かったところ」とか言ってもねぇ「こどもは風の子」かよって、はい、すみません。
空間に集中できる
先に謝っておきます。
これもですね、この天皇杯決勝に限った話ではないんです。
ナイターの試合ってやっぱりピッチを中心としたスタジアムと言う空間に凄く集中しやすいと言うか、劇場にいるような錯覚を覚えると言うか、私は結構好きなんですよ。
日中の試合だと陽の明かりで見えちゃうものが見えないからなのか、ナイター照明が作り出すカクテル光線の美しさがそうさせているのか。
ただこれはハッキリ言えますが
「私史上最も試合に集中出来た天皇杯決勝戦」でもあったんですよねぇ。
ベガルタの石原。良かったぜぇ。
レッズサポーターのコレオが凄く映えた

もうレッズサポはコレオの概念を超えてきましたね。
何ですかあのでっかいエンブレムがワイヤーか何かで吊られて「すーっ」っとゴール裏に上がってくるヤツ。
凄げえな、マルセイユの「スタッド・ヴェロドローム」やドルトムントの「ジグナル・イドゥナ・パルク」かと思ったわ!!
で、もうこれは確実にそうだと言えるんですけど、やっぱりナイターだと照明効果もあって、ああした演出はもの凄く映えますね。
これはですね、長くフラワーデザインの世界で生きてきて学んだんですが、あらゆる演出において「照明最強」みたいなところあるんですよ。
例えばですね、横幅10mくらいあるお別れの会の花祭壇なんかも自分でデザインしたり、実際に制作したりしてきましたけど、完成してそこに照明が加わると花に命が吹き込まれるというか、いつでも照明で2割増しくらいにはなっちゃうんです。えっと、予算面じゃないですよ、見た目ね、見た目。分かってるって? はいすみません。
と、レッズサポのコレオと花祭壇を並び立てちゃいかんですよね、それにナイターであればいつだってレッズサポのコレオは美しいのです。
12月9日のナイターだから綺麗だったわけじゃありませんでしたね。
はい! We are Reds! We are Reds! We are Reds! We are Reds!
元旦じゃ来れない人が来れる

これは、完全に主観です。
やっぱり元旦って1年の中でもかなり存在感のある日じゃないですか。
まあ古き良き日本の姿みたいな、家族や親戚が一堂に会して本家の居間で正月祝をする、みたいなのも減ってきてはいると思いますけど、それでも「今度の元旦ヒマ?」みたいな軽いノリで気になる女子をサッカー観戦に誘いだすとか、それなりに難易度高いミッションだと思うんですよ。(アントラーズがACLに優勝せず当初の予定通り12月24日だったら元旦以上に困難なミッションだったか・・・)
それがね今回の天皇杯みたいに「師走ではあるけど普通の日曜日の夕方」であれば、俺全然イケちゃうなぁ!!
とかなんとか言っちゃってぇー。はい、イタイのイタイの飛んでけ~。
で、こう思ったのは私の座っていた席の前に、恐らく今日初めて会った人も混じった20代中盤くらいの男女グループがいたからなんです。
もうね、互いに凄く気を使っているのが分かるの。
特に男子の気遣いたるや「頑張れ…」って声かけたくなっちゃうほど。
試合中なのにコーンスープ人数分買ってきて「寒いよね、これ飲んで暖まって」とか言っちゃったり、
「僕はタオマフあるからこのニットマフラー貸すよ」ってシワクチャのねずみ色のヤツを女子に渡そうとして拒否られたり、
私は「頑張れ…」と思う一方で「そんなに寒くないだろ今晩」とも思っておりましたが、まあこんな感じのグループは元旦のサッカー場にはなかなか現れないかなと、元旦のサッカー場に現れる男女はもう親公認のカップルしかいないでしょう。ね?
と、ここまで「さらに前倒しされた天皇杯決勝戦」の良かったところを4つ挙げてみましたが、どうも「天皇杯は師走の週末のナイターに限る!」って思えるのがないなぁ。
じゃまあ気を取り直して、ここからは「良くなかったところ」を挙げていきます。
NHK地上波で試合中継がされなかった

これは結構不満に思われていた方も多いんじゃないでしょうか。
天皇杯決勝って言えば、NHK地上波で生中継。コレ基本ですもんね。
ただですね、よーく考えて下さい。普通の日曜日の夕方6時って言ったらそりゃ「笑点」を見終わって「ちびまる子ちゃん」からの「サザエさん」でちょっと憂鬱になりかかったところを「モヤさま」じゃないですか。
常人の感覚であれば呑気にサッカーなんて見る気分には到底なれないし、そんな1週間で最も焦燥感に駆られる時間帯に、日本一を決めるサッカーの試合だって入り込む余地ありませんって。
やっぱりね、天皇杯は元旦の昼過ぎに居間でヌクヌクしながらテレビで観るからいいんですよ。
で、後半の途中くらいからはウトウトしてきちゃって、目が覚めたら「欽ちゃんの仮装大賞」始まっちゃってるっていうのが一連のパターンじゃないですか。
「3番宇賀神の弾丸ボレー」
試合が終わるとすぐに日常が戻ってくる

これもですね、今回現地に行っても感じましたし、NHKのBSで試合を観戦されていた方も思われたんじゃないでしょうか。
これが元旦の昼間ならですよ、試合終わったあとも気分は「正月ど真ん中!」なわけですし、まあ後半の途中からはウトウトしちゃって試合を見ていなかったとしてもですよ
「やっぱレッズは決勝戦ってモンが分かってるわなぁ」
とか言って、あ~だこ~だと出来ますけど、これが今回みたいに師走の日曜日それもナイターであった時点で、20時に試合終了した時点からもう明日のこと考えはじめちゃうわけですよ。
師走の月曜日って1年の中でも結構重たい月曜日の部類に入ってきますよね?
せっかく日本一を決める試合を見たばかりなのに、その余韻に浸れないのって少し残念な気がしてきません?
やっぱり天皇杯決勝は元旦にやって欲しい

と、こうして「さらに前倒しされた天皇杯決勝戦」の「良かったところ」と「良くなかったところ」を挙げてきて、私ひとつ気づいたことがあります。
「良かったところ」は基本的にスタジアムの中でのことなんですよね、「寒くなかった」も「集中出来る」も「コレオが映える」も「来れない人が来れる」もそうですね、で一方の「良くなかったところ」これについてはスタジアムの外、つまり日本全国のサッカーファンを含めた世間全体というか「天皇杯はいつもテレビでは見るけど実際にスタジアムに行ったことはない」って言うようなある意味で「普通」の人たちにとって「良くなかった」と言える点なんですよ。
チームや選手たちにとってもこの「さらに前倒しされた天皇杯決勝戦」は「良かった」と思っているかも知れませんよね、アントラーズはこれからUAEに行かなくてはいけませんが、レッズもベガルタも明日からオフですからね、しかもレッズなんて天皇杯に優勝して来シーズンのACL出場権を得た上に、例年よりひと月近く長いオフシーズンを過ごせます。
ただ、これも言ってみれば「スタジアムの中でのこと」ではあると思うんですよ。
言っても「スタジアムの中のこと」に関われる人なんて5万人くらいなわけじゃないですか、私はJリーグの熱心なファン・サポーターは日本全国に100万人くらいだと思っているんですけど、それだけでも「スタジアムの中」の20倍くらいの人がいるし、天皇杯決勝だけはテレビで見るみたいな人まで入れたら、100倍くらいいたっておかしくない。

ピッチサイドのスポンサーボードが妙に少なかったのも「スタジアムの外」の人たちに向けられた試合じゃ無くなっちゃってたってことの現われじゃないですかね。
そう考えると「やっぱり天皇杯決勝って元旦にやってもらいたいなぁ」って言うのが今回私が行きついた結論です。
と言いますか、このままだと「天皇杯は師走の週末に開催」って徐々になっていく感じがするんですよね、でもそれって日本トップクラスのチームや選手たちのことを考えれば「仕方なし」という判断もあるんでしょうけど、失うものがとてつもなく大きい気もしてしまって、多分ですけど「天皇杯は師走の週末に開催」が常態化すれば、早晩「天皇杯はACL出場チームを決める大会」としてしかフューチャーされなくなっていくのではないかと。
でもそれってあまりに寂しい感じがしませんか?
皆さんはどうお考えでしょうか・・・?