地域CL決勝ラウンド レポート最終章 『彼らはどうしてこんなに過酷な戦いに挑めるのだろう』

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彼らはどうしてこんなに過酷な戦いに挑めるのだろう

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『彼らはどうしてこんなに過酷な戦いに挑めるのだろう』

全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下 地域CL)決勝ラウンドで繰り広げられた熾烈な戦いを見続けていくうちに、こんな思いが私の心を何度もよぎっていた。

もちろん「分かりやすい解釈」を出来なくはないんです。

「JFL昇格の懸かった最終決戦」の場であるという、地域CL決勝ラウンドの大会特性。

この舞台にまで勝ち残った4つのチームはいずれも、ココで勝利することのみの目標にして長いリーグ戦を戦い、FC刈谷のようにリーグ王者になれなかったチームに至っては、リーグ戦終了後も5連戦の全社で戦果を出す必要があったわけで、まさにこの決勝ラウンド3試合がどれだけ重要な3試合であるのか。それを理解出来ないなんて野暮なことを言いたいのではございません。

ただですよ、彼らがこの大会で得られる最大の成果が「チームのJFL昇格」って言うことにですね、何というか、そこに注ぎ込まれている尋常じゃないエネルギーとバイタリティー。そういったもの凄いパワーと、得ようとしている「チームのJFL昇格」っていう成果とがですよ、何ともアンバランスとでも申しましょうか、平たく言えば

「凄えけど、凄えけどさ、、、言っても得られるのってJFLだぜ?」

なんて不謹慎ながら感じてしまう自分がどっかいました。

4年に1度のW杯とかならまだ分かる

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このカテゴリーで戦っている選手たちって、基本プロ選手じゃないわけですよ(栃木ウーヴァFCは例外ね)

サッカーをしているだけじゃ生活出来ないから、みんな何らかの生活の糧を他で得る必要があるわけじゃないですか?

鈴鹿アンリミテッドFCみたいに、クラウドファンディングで集めたお金を選手たちに「勝利給」として支給するような試みはあったにせよですよ、例えば松江シティFCの選手が中国リーグの天王山で三菱水島FCに勝利したとしても、特別にお金なんて貰えないわけですよね。

当然ながら彼らは豪勢な生活なんて送っていないし、場合によってはご両親から仕送りしてもらっている選手だっているかも知れない。

でですよ、そんなカツカツの生活をしている選手たちがですよ。5連戦(全社)とか3連戦(地域CL1次ラウンド)とか、5日で3試合(地域CL決勝ラウンド)とか、Jリーグしか見たことのないサッカーファンや、もしかしたら世界中のサッカーファンに聞かせたら、目玉ひん剥いて口をポカーンと空けて言葉を失ってしまうような、超過酷なレギュレーションの大会で、自分たちの持っているサッカー選手としての力の全てを出し切って戦っちゃうわけですよ。

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しかも松江シティFCなんて、リーグ戦の時からほぼスタメン固定ですからね。ターンオーバーなんて発想は田中監督には微塵もありません。(監督曰く「選手がいないんだから仕方ないじゃないですか」)

これがね、4年に1度のW杯とかならまだ分かるんですよ。

W杯に日本代表として出場した経歴を作れたら、よっぽど下手を打たない限りは食いっ逸れないでしょう。(上手くやれば旅人にだってなれちゃう!)

でもですね、地域CL決勝ラウンドで出し切ってですよ、それで見事にベスト2になってですよ、それで勝ち取れるのが「JFL昇格」って、、、

ただ単にリーグ戦の開催規模が全国リーグになるだけじゃんか!って、旅人になれないじゃんか!って、シーズンオフに六本木ヒルズでトークショーとか出来ないじゃんか!って。

なんで、なんでそんなに頑張れるんだよぉ~!なんでそんなに身体を酷使出来るんだよぉ~!なんで、なんでそんなに凄えぇんだよぉ~!って、そう感じてしまっていたのです。

サッカーチームは生き物

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でも、この「アンバランス」な感じって、地域CLを「JFL昇格の懸かった大会」っていう風に一元的な見方、つまり「分かりやすい解釈の仕方」をしてしまう(されてしまう)からそう思ってしまうのかなと、最終日を迎える頃には随分納得も出来るようになっていったんです。

だって、例えば鈴鹿アンリミテッドFCにしても、この決勝ラウンドで大活躍したエフライン・リンタロウ選手や藤沢ネット選手が、来シーズンも鈴鹿にいてJFLを戦うとは決まっていないわけで、これは指揮官の辛島監督にしても一緒なわけですよね。松江シティFCの”スーパースター”宮内寛斗選手だって、もしかしたら来月くらいに突然移籍発表したっておかしくはない。

これは彼らのように活躍の目だった選手だけに言えることでもなくて、カテゴリーがひとつ上がるわけですから、当然ながらJFLを戦い抜くだけのチームをクラブは作ろうとするだろうし、今シーズンよりもチームがパワーアップすれば、そこからあぶれてしまう選手だって出てくるかも知れない。

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言ってみれば「チームは生き物」であって、常に形や大きさを変化させていくものであって、だけどその瞬間瞬間を切り取った時に「力を出し切れていない」チームは、大きさが小さくなっていっても、決して大きくはならない。

なんかちょっと哲学的になってきちゃいましたけど、どんなカテゴリー、どんなリーグに所属していたとしても、サッカーチームは「力を出し切れる」ことでしか生き残っていけない生き物なんじゃないか。だからそこにいる選手たちも、具体的な成果が何であろうとも「力を出し切る」ことで生き残っていこうとするんじゃないか。

旅人とか、オフのトークショーとか、数億円の年俸とか、そんなのは大したモチベーションには繋がらなくて(億は、、、億は、、、人間を狂わせるYO!)選手として生き残っていくこと、チームが存続していくこと、結局はこういう本能的な衝動こそが最大のモチベーションに繋がっていくのではなかろうか。と、そう思うに至って、私はすっげえ楽になりました。

我々が出来ることって決まってくるじゃないですか

なんで「楽になった」かって?

だって、全社や地域CLはもちろんそうですし、日夜働きながらサッカーも相当な強度で取り組んでいるこのカテゴリーのサッカー選手や、彼らの所属しているチームがですよ。

「生き残っていくこと」を最大のモチベーションとして、世界中のサッカーファンでも目玉ひん剥いて口ポカーンとなっちゃうような戦いに身を置いていると解釈出来ればですよ。

もう我々が出来ることって決まってくるじゃないですか。

チームのホームタウンで暮らしているのであれば、練習や試合を見に行ってですね「オイラたち、ちゃんと見ているかね!」って選手やチームに示してあげるだけでも、彼らは「お!俺たちちゃんと生きているんだ」って安心させることが出来ますし、

ちょっとお金に余裕がある人なら「はい!延命剤!」とばかりにクラブのスポンサードをしたらいいし、

遠くに住んでいてお金もない私のような人間だって「こんなチームが、こんな選手が、生き残ろうと必死に頑張っているんだよ!」って知らない人に教えてあげるくらいのことは出来る。

で、重要なのは、そうやって「生き残らせる」だけの価値が、このカテゴリーのサッカーには間違いなくあるということなんです。

ジョージさんだって、佐野裕哉だって、宮内寛斗だって、田中孝司監督だって、それぞれの「プロフェッショナル 仕事の流儀」5本は作れちゃうでしょ。シュウアケイレブンさんだったら。

「プロフェッショナルとは、ジョージヨナシロですね」

ね?

というわけで、5回に渡った地域CL決勝ラウンドレポート。ひとまずこれにて終焉とさせて頂きます。

はい!みなさん、ひん剥いていた目を閉じて、かっぽじって頂いた耳に傷が出来ていないか、確認してくださいね~。

ご清聴ありがとうございました!

 

地域CL決勝ラウンド レポート①「ジョージ与那城」と「緑のオットナー参謀長」

地域CL決勝ラウンド レポート②「歓喜の鈴鹿」そして「悲哀のMIYAZAKI」

地域CL決勝ラウンド レポート③ FC刈谷サポーターの「もの凄くキモチえぇ」応援

地域CL決勝ラウンド レポート④ 完全なる王者 松江シティFCをJリーグが作れないと思う理由

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