監督辞めろ!が日本におけるサッカー戦術を滅亡へと導く
サッカーと言うスポーツの競技としての本質部分、つまりチーム戦術やプレイヤー個々のスキルといったモノをより高め、より深めて行こうとするならば、Jリーグでは日常になっている、ちょっと戦績が振るわないからといって、すぐに監督のクビを切っちゃうこのカルチャー。
そして、それをさも当然のように受け止めちゃう、あるいは二言目には「監督辞めろ!」的な主張をすることが、本気(マジ)なサポーターの使命みたいに思っちゃうその思考回路。
これらがですね、場合によってはその深化に相当悪影響を与えている可能性があると、インカ帝国がスペイン人の持ち込んだ天然痘によって滅亡への一途を辿ったの同じく、日本におけるサッカー戦術の深化は「監督辞めろ!」文化によって滅亡への一途を辿ってしまうかも知れない。と思わされることがあったのです。
「おお?インカ帝国の滅亡とは大きく出たな」
そんな声がもう聴こえてきてますけど、もうね、インカ帝国とか言いたくなるくらいの気づきが私の中であったんだから、もう仕方がないことなのです。
では、そのインカ帝国滅亡の原因に「え!?」っと思ったのと同格か、それ以上の気づき「監督辞めろ!が日本におけるサッカー戦術を滅亡へと導く」を私がどこで得たのかと言えば、それはズバリ、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)の最終日であり、田中孝司監督率いる松江シティFCだったのです。
松江が強いなぁと言うのは薄々感づいていた(後出しジャンケン)
いやね、松江シティFCが強いなぁと言うのは、9月に岡山まで行って中国サッカーリーグで彼らの試合を見た時から薄々は感づいてはいたんですよ。(後出しジャンケン感が拭えない)
あの日は山陰地方の鉄道が運休してしまうほどの悪天候で、長く降り続いた雨のせいで、天然芝のピッチは田んぼ状態。
第1試合を戦ったチームはともに「サッカーという名の泥んこ遊び」をするのが精一杯のコンディションの中、鍛え抜かれたアスリート22人が90分間激しく泥んこ遊びしたせいで、第2試合が始まる頃には、カエルやアメンボにとっての素晴らしいコンディションにはなってはいたが、人間にとっては、中でもサッカー選手にとっては「泥んこ遊びしーよお」と開き直ることでやっとピッチに立つ勇気を持てるくらいの状態になってしまっていた。
でも、驚くべきことに松江シティFCの選手たちは、そんなカエル・アメンボ仕様のピッチ上でも、ちゃんとサッカーが出来ていた。
水たまりでボールが止まってしまうのは避けられないにしても、そうして突如として変化するボールの行方にも即座に対応し、なるべくその影響を受けないエリアを見つけては、いわゆる「3人目の動き」で相手を翻弄するシーンも多く作っていたし、1対1の局面でも抜群の強さを発揮していた。
ただ、そんな松江シティFCに強さを感じはしても、じゃあいざ他の地域リーグ強豪チームと対戦した場合はどうなのか、もちろん強い部類には入るだろうとは思っていたが、正直に言って、ここまで完全な優勝を果たそうものとは、あの時点では全くそんな風には思っていなかったわけでございます。
なんか分からないけど、もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!!
でですよ。その最強の地域リーグチャンピオンとなった松江シティFCがですね、戦術的にどう優れていているのかって事なんですけど
「監督辞めろ!が日本におけるサッカー戦術を滅亡へと導く」
とかデカく出ておきながら、アッシにはそれを文章で説明できるほどのスキルはございません。
でもう一歩踏み込んで言わせて頂ければですね、松江シティFCの戦術がどう優れているのか、それをどんなに正確に論じることが出来たとしても、このブログにあってはそういうの不必要だとも思っておりますので、どうぞご心配なさらぬよう。
ただですね、松江シティFCの試合を見てもらえば、必ず分かってもらえると思います。
「なんか分からないけど、もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!!」

で、ここからが今回のポイントですので、皆さんどうか超音波すら逃さないくらいの意気込みで読んで欲しいんですけど。
この松江シティFCの「もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!」なサッカーを作るのにですよ、田中孝司監督は3年かけたというのがまず1つ。
そしてもう1つが、松江シティFCにはJリーグやJFLで華々しい経験を持っているような選手がほぼいないってことなんです。
つまり田中監督は、このカテゴリーにあっても凡庸とされていた選手たちを長期間徹底的に鍛え上げ、3年目にして地域リーグレベルでは、どんな相手に対しても試合内容で圧倒し、1つも取りこぼすことのない、そう「もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!」なチームを作るに達したということなんですよ。
Jリーグでも出来るんじゃね?⤴
でもね、これって監督がどんなに熱い情熱を持っていたとしても、それだけじゃ、そうそう出来ることじゃないわけです。
だって、田中孝司監督が松江シティFCに来た2016シーズン。チームは中国リーグ優勝を3年ぶりに逃し、それまで2年連続で出場していた地域CLに出場すら出来なかったんですよ。
で、2年目のシーズンも中国リーグで優勝を逃すんです。
これね、Jリーグであれば、1年目の優勝する可能性が無くなっていく時点で「監督辞めろ!」ってなっていたでしょうよ。
でも、松江シティFCは田中監督にチームを任せ続けたわけです。田中監督の描くチームの完成予想図に夢を託したわけです。
多分これを読んで、こう言いたくなっちゃってる人、いるんじゃないかなぁ?
「だって、それって地域リーグだから出来たんでしょ?」
はぁい!頂きました!
確かにおっしゃること、至極最もでございます。
地域リーグではメディアが監督采配を批判するようなこともありませんし、「監督辞めろ!」なんて声が挙がってくるほどチームのファン・サポーターが大勢いるわけでもない。
でもそうであったとしてもスポンサーや行政に対して、クラブは強い意志を以て監督を守る必要はあったはずなんです。
「おいおいいつになったらJFLとやらに上がれるんだね?」
って方々に対しても、ちゃんと納得してもらう必要があったはずなの。
そして、こうした構造はJリーグも地域リーグも規模の大小はあっても変わらないことです。
ということはですよ、Jリーグであっても出来るんじゃね?⤴
チームの目指す姿、監督の思い描く完成予想図、そういうのに共感しようとするファン・サポーターが多くなっていけば、Jリーグでも出来るんじゃね?⤴
たかだか10連敗したくらいで、たかだか降格圏を彷徨っているくらいで、たかだか下のカテゴリーに降格したくらいで、チームに夢を託すのを諦めちゃうの勿体なくね?⤴
単に「監督辞めろ!」を言うなってことじゃありません。
目先の勝敗だけではなく、チームがどこを目指しているのか、その目標に対して今どこら辺にいるのか。
こういうことにも価値を感じ、関心がもたれるようになっていけば、自然と「監督辞めろ!」も小さくなっていくんじゃないか。
そう思うわけです。
目先の勝敗が最大の関心事であれば松江シティは生まれない
だってですよ、松江シティFCの選手たちが3年で作り上げたサッカーが「もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!」になっちゃったわけですからね、ここにJリーグの資金力が加わってきたら、え?もうどうなっちゃうの・・?あぁもう狂っちゃう・・・ああぁぁ堪忍してぇ・・・・って、そう私は思ってしまったのです。
でも実際には全然そうなっていないわけじゃないですか。
監督はいつクビを切られるか分からないから、完成するまで何年も掛かるような画を描くことすらしないし、「一喜一憂」にフィットする指導者しか生き残ることすら出来ない。
ファン・サポーターが「監督辞めろ!」と騒ぎだすことが、スポンサーの出資額を増やすことに繋がるわけもなし。
結局のところ、目先の勝敗、そこが最大の関心事になっていては、Jリーグに松江シティは生まれないし、それを育てることの出来る指導者も生まれてこない。
でもですね、実際のところ松江シティFCも、JFLに昇格するこのタイミングが危険なタイミングだとも思うんです。
JFLって世間的にはほとんど関心を持たれていないリーグですけど、それでも「Jリーグ入り」を目標に掲げている松江シティFCが、そこだけを強く押し出すようなマーケティングに傾けば、もうあっという間に田中孝司監督がこの3年で作り上げた功績は水の泡と化してしまうでしょう。
優勝会見の時に地元メディアのインタビュアーが既に「それ」を言わせようとする質問をしていましたから。
『JFLそしてその先を目指していく上で足りないものはなんでしょうか?』
みたいなね。
一番足りないのは、アンタらの松江シティFCを愛でようとするハートなんだわ!って思っちゃいましたけど、もうちょっと気を許せばすぐにこういう流れになってしまいますから、松江シティFCにとって、来シーズンをどう過ごすのかが本当に重要になってくるはずです。
「J3入りを目指して」というセリフが、田中監督の言う「選手たちに楽しくプレーさせる」を押しやるようなことがあれば、危険信号。
「監督辞めろ!が日本におけるサッカー戦術を滅亡へと導く」に一歩近づいたと思った方がいいんじゃないでしょうか。
松江のみなさん!あなた方が猛烈に羨ましい!
ただ、ホントこれだけは書いておきたい。
我が家から松江までは、新幹線を使っても7時間以上、片道2万円以上の交通費が掛かりますけど、間違いなく来シーズン、JFLを戦う松江シティの姿を見に私は松江へ行くと思います。
理想的には1週間くらい滞在して、彼らがどんな練習を積んでいるのか、それも連日見に行きたい。
それくらい、松江シティFCのサッカーは「もうサッカーってレベルじゃねえぞ!!!!」なんだと私は思っていますし、これは決勝ラウンドで対戦したジョージ監督も、ヴェイガ監督も、辛島監督も、異口同音におっしゃっていました。
だからと言うのも変ですが、松江で暮らすサッカーファンのみなさん、松江じゃないけれどその周辺地域にお住いのサッカーファンのみなさん、私はあなた方が非常に羨ましい!
あんなにじっくりと時間を掛けて作られた素晴らしいチームの行く末を 地元で見ることの出来るあなた方が猛烈に羨ましい!