地域CL決勝ラウンド レポート①「ジョージ与那城」と「緑のオットナー参謀長」

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緑のオットナー参謀長

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試合会場で会う時はいつもモノトーンやダーク系のファッションでシュッと佇んでいるオットナー参謀長(蹴AKE11のMC)が、この日はグリーン系で装いをまとめていた。

褪せたグリーンのカットソーにオリーブグリーンのチノパン、頭にもグリーンのキャップを被っている。

参謀長との付き合いがまだ1年にも満たない私であっても(何しろ初対面が今年2月に錦糸町フットボール義勇軍のラジオ収録に呼ばれた時だったのだから)この日の参謀長が、「わざわざ」その装いの色合いをまとめていることを「何となく」感じるくらいのことは出来ていた。

蹴AKE11の取材で現場入りしている時のオットナー参謀長は、とにかく常に忙しそうで、PCを操作していたり、チーム関係者や大会関係者、そして一緒に取材をしているスタッフのみんなと話をしていたり、まあなかなかのピリピリ感を放っているので、私のような「昨日今日」のサッカーブロガーごときが

「あれ?参謀長、今日はいつもと着ている服の雰囲気が違うなぁ」

なんて軽口を叩こうものなら、その場の空気が一瞬にして凍りつくことくらいは分かっている。

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だから、なるべく目立たないようにコソコソとその周辺をうろつきながら、修行僧のように自分のやるべき事だけを粛々と行うのが私の試合会場における行動パターンとなっている。。。

いや、ごめんなさい。

だいぶ後半おかしくなってきてるな。盛っちゃってるな、うん。

こういう文章を書く上で、多少の「盛り」も不可欠だとは思っているけれど、いくらなんでも今回は盛りすぎだ。

俺、別にコソコソするどころか少し厚かましいくらいだし。修行僧とは対極にいるような金髪だし。

いや、違う。そこじゃない。

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「軽口を叩こうものなら、その場の空気が一瞬にして~」あたりが不必要に盛られているなあ、そして私が「あれ?参謀長~」と声を掛けなかったのも、別に参謀長がピリピリしているからではなくて、単にその時はそれが思いつかなかっただけだった。

確かあの時は「俺、コバルトーレ女川のトライアウト受けるべきかな。そんでカマボコ作りで天皇杯目指すべきなのかな」って話をしていたから、参謀長の服装についての話をしていなかっただけのことだった。そうだった、そうだった。

と、サッカーブログでありながら、その取材者の着ていた服装についての内容だけで、約1000文字も費やしてしまうというのは、少々問題だと思うし、これ以上書いていくと、私自身も大嫌いな「つまらないウチワ話」で終わってしまいそうなので、そろそろ本題に入ろうと思う。

で、参謀長の服装なのだが(え!?言ったそばから…。)

「ミスターヨミウリ」ジョージ与那城!

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重要なのでもう一回書こう。あのグリーンでまとめたオットナー参謀長の服装なのだが、これは間違いなく「リスペクト読売クラブ」だったはずなのだ。

そう、この日の取材していた場所は市原のゼットエーオリプリスタジアム。そして行われていた大会は「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)」。

全国の地域リーグを勝ち抜き、10月に行われた全国社会人サッカー選手権(全社)を経てこの大会に出場した強豪の数は12。そして、更にそこを勝ち抜いた4チームが僅か2つのJFL昇格権を巡って戦う最後の舞台。この日はその決勝ラウンドの1日目。

そこには、かつて「ミスターヨミウリ」(長島茂雄さんじゃないですよ)と呼ばれた日本サッカー界のレジェンドの姿があった。

それが、今シーズンの九州リーグ王者で、見事この地域CLにおいて1次ラウンドを勝ち抜いたJ.FC MIYAZAKIの与那城ジョージ監督、その人なのである。(以下、親愛を込めて「ジョージさん」と書かせていただく)

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日系ブラジル人2世のジョージさんは、言わば「冬の時代」にあった日本サッカー界にあって、子どもたちに夢を与えてくれる存在だった。

見た目は完全に日本人なのに、そのプレースタイルは「ブラジルサッカー」そのもの。

ちょっとアウトローなムードも漂う読売クラブの中で、当時はまだ「助っ人外国人」感も強かった、あのラモスさんを脇に回すほどの存在感がジョージさんにはあった。

こうやって古い話を書きはじめるとウケないことは分かっているので、関心を持って下さった方は与那城ジョージあるいは「ジョージ与那城」でググって頂ければと思うが、私より少し年上のオットナー参謀長は、まさに「ジョージ世代」ど真ん中だったはずで、しかも読売クラブの熱烈なファンだった参謀長にとっては、今でも与那城ジョージが絶対的なスターであるはずなのだ。

「読売育ち」藤川孝行さんの訃報

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この日参謀長が「読売の緑」を身にまとっていた理由は、もうひとつあったように思う。

11月20日、日本サッカー界に悲しいニュースが飛び込んできた。

今回の地域CLにも出場していた北海道リーグ王者、北海道十勝スカイアースの藤川孝行代表の訃報である。

藤川孝行さんと言えば、ヴェルディのGKとしてJリーグの黎明期を彩った選手の1人でもあり、引退後は指導者として様々な現場でその熱血漢ぶりを発揮してきたことでも知られているが、そんな藤川孝行さんも読売ユース出身。

日本サッカー界に燦然と輝く読売クラブの歴史を現代のサッカー界に繋いでいく貴重な人財が、ガンとの戦いの末、56歳という若さでこの世を去ってしまったこと。

場所は千葉県の市原でありながら、この日のゼットエーオリプリスタジアムには、参謀長がチームの練習見学に通った「よみうりランド」の光景が広がっていたのではないかと、私は思っていた。

「サッカーを愛する男」ジョージさんの試合後コメント

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と、少しシメっぽい感じになってしまいましたが!

やっぱりここはジョージさんの試合後インタビューについての話を書いていきましょう。

地域CL決勝ラウンド1日目。J.FC MIYAZAKIは鈴鹿アンリミテッドFCを相手に完敗した。

内容としてはJ.FC MIYAZAKIにはほとんど勝ち目のない、鈴鹿アンリミテッドの思い通りに進んでしまった90分間だったと思うが、ジョージさんのコメントはこうだった。

『もうひとつの試合(松江シティFC対FC刈谷)が引き分けだったじゃないですか、だから勝点は3、1、1、0。差がつけられていないから、まだ次に勝てば可能性はあるんですよ』

これを聞いて私は

「そうだよな、まだ全然いけるわ。松江と刈谷が引き分けてくれてホントラッキー。いけるいける!あと2試合勝とう」

と、選手でもないし、J.FC MIYAZAKIのファンでもないのに、すっかりその気になっていた。

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多分「まだ次に勝てば可能性はあるんですよ」とコメントしてくれたジョージさん自身が、本気でそう思っているからこそ、それを聞いた者の心に勇気をくれる。そんな風に思えた。

おそらくJ.FC MIYAZAKIの選手たちも「ジョージさんがああ言うのだから」と、すっかり頭を切り替えて第2戦松江シティFC戦に挑んでくるだろう。

ただ、インタビューの中ではこんなコメントもあった。

『佐野裕哉がいるとピッチ上の選手たちが安心するんですよ あんないい選手いないんですよ』

この遠征に帯同はしているものの、地域CLにおける経験も豊富で、ジョージさんが全幅の信頼を置いている36歳の「ベテラン」ファンタジスタは、コンディション面で不安があるのか、この日の試合ではベンチ入りもせず、出場することはなかった。

こんな風に人をその時させたり、自身の愛する選手を恥ずかしげもなく話すジョージさんのコメントを聞いていると、この人がいかにサッカーを愛しているのかが、瞬時に伝わってくる。

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もちろんJ.FC MIYAZAKIは、そのチーム名からも分かるように「Jリーグ入り」を目標としていて、この地域CLについても勝利することだけを目的として挑んできているのは間違いのないこと。

その中でジョージさんも「JFL昇格」だけに集中して、生活の全てを捧げているに違いないのだ。

ただ、それでもジョージさんがサッカーを愛し、サッカーと共に生きていると思わせたのは、インタビューで聞かれたこんなコメントにも現れていたように思う。

『今日は相手に合わせて3バックにすることも考えたし、ギリギリまで悩んだんですけど、やっぱり(いつもの4バックを捨てて)3バックでやって負けるのは嫌だったんです。まあこういう結果にはなりましたけど』

試合が始る前、選手たちはもう入場してしまったのに、ジョージさんは直ぐにはベンチに入らず、入場口の奥で長い祈りを捧げていたことを後で知った。

かつて私たちが子供の頃に憧れたスター選手たちが、日本サッカーを支えるアンダーカテゴリーでその力を発揮してくれている。

いや、ちょっと、泣けてくるんだけど。。。

ジョージさぁ~ん!!

 

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