ヴィアティン三重サポーターから八戸へのはなむけ「紅チャント」に感じたこと

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日曜日の東員 2つの注目ポイント

夏みたいに暑い日曜日を三重の東員で過ごしたことで、本当にありがたい気づきを得ることが出来ちゃったわけだが、良く考えてみたらあの試合は、結構な注目カードでもあったんですよ。

ひとつはヴィアティン三重にとっての今シーズン最後のホームゲームだったことで、そういう状況にあったのも「そこにいる全員が主役」だと感じることが出来た大要因でもあったはず。

なにしろ、この日が終わってしまえば次にみんなと会えるのは来年の春以降なんて人も大勢いたはずで、そんな少しセンチメンタルな気分もより一層「演者=ファン・サポーターもクラブの人も、ボランティアの人も、スタグルのおっちゃん、おばちゃんも、新体操の子どもたちも、そうだ、あと選手やチーム関係者もか」のテンションを上げていき、だからこそ「舞台」があれだけの盛り上がり見せるのに繋がっていったのだと思う。

そしてもうひとつ。

こっちについては「そこにいる全員が主役」とか「RYUJIくん」とか「本多ヴィア勝」とか、そうした東員で私が最も関心を持った対象とはまるで違う要素、つまり世間的にもギリギリ通用するトピックスとして「ヴァンラーレ八戸のJ3昇格」が決まるかどうか、コレがあったわけです。

もうね、Jリーグ側からしたらず~っと手をこまねいて昇格クラブを待っているのに、その候補生たち(八戸、今治、奈良、武蔵野)が全然上がってきてくれないんだから、そろそろホントにヤバいわけですよ。

だって、JFLがどうあるべきか、どんな役割を果たして行けばいいのか、それを端的に表す言葉や定義がされていない中で、唯一、説明がしやすい「J3リーグ昇格もかかったリーグ」という位置づけも、実際にJFLからJ3へ昇格するチームがもっと出て来てくれないと、それを訴求するチャンスもなかなか訪れないわけで、そういう背景からも「この試合に勝利すれば八戸は事実上J3昇格を決定させる」というこのシチュエーションは、言ってみれば、現状のJFLにおいて最大のトピックスだったってことなんすよ。

だからもあって、まあ来てたね。八戸から沢山のメディアの方々が。

もちろん、JFLのお偉方も勢ぞろい。

そういう意味では、ヴィアティン三重運営の皆さまも大変だったと思う。

ヴィアティンサポーターからのはなむけ「紅チャント」

で、そんなシチュエーションの試合であったことを今読んで下さってる皆さんにもご理解して頂いた上で、私がこの刺激的な1日の中で、唯一鳥肌が立った瞬間があったのでそのことを書いておこう。

試合の方は1-3。ヴァンラーレ八戸の選手たちがゴールする度に

「J3だぜ~!!ひぃ~~~!!!」

と次第に大きくなっていく歓喜の姿を見せる一方で、ヴィアティンの選手たちはなっかなかチャンスらしいチャンスも作れないまま、0-3から辛くも一矢報いるゴールを決めて試合は終わったんですが、やや「シュン」とした空気になりかけたヴィアティンゴール裏の人たちが、ヴァンラーレの勝利、ヴァンラーレのJ3昇格を「ヴァンラーレ八戸 紅(くれない)チャント」を歌って祝福したんですわ。

これがね、何というか、単に「おめでとう!」って感じじゃなく、これから東京に出て独り暮らしを始める友人を送り出すような、少し「切なさ」も感じられる「紅チャント」だったわけ。

『お前も東京に行ってしまうんやな。特別に仲良しってわけじゃなかったけど、お前が東京へ行く前にこんな風にして遊ぶことが出来て良かったで。でもな、コッチやってなかなか辛いことも一杯あるけどな、東京へ行ったらココとは違う辛いこともきっと出てくるはずや。みんなはな、東京へ行ったら何もかも出来るって思ってるかも知れんけどな、俺はそうじゃないことを何となく分かってるで、お前かてそうやろ? でも今日だけではそんなイケズは言いっこなしや。達者でな、死なない程度頑張ってきいや。』(方言指導なし)

こんなセリフが「紅チャント」の奥から聞こえてくるようで、俺な、鳥肌立ってしもてん。(ごめん!関西の人。エセ関西弁使ってホンマ堪忍や!)

この人たちをオモチャにしちゃいかん!

ロッカールームから出てきた八戸の選手たちは、次々にメディアの取材を受けていて、もうその空間では一応「喜びに沸く空間」が出来てはいるんだけど、それを眺めながら

「いやぁ あんまりこの子たちを弄ばんでくれるかな」

そんな風に私は思っていた。

確かにヴァンラーレ八戸の選手たちが成し遂げたことは立派だし、チーム関係者、クラブ運営、そしてファン・サポーター、八戸の人々にとっても、このJ3昇格という成果を大喜びするに値する努力や血と汗と涙の歴史があるわけで、それを「無きもの」としたいのではなくて、現状のJリーグの仕組みの上では、J3に昇格した時点で、もう下のカテゴリーには戻れないってことなわけで

『その重い事実をどれだけ認識出来ているの?分かる!?もう帰ってこれないんだよ?天国か地獄か分からない行先からさ、もう逃げられないんだよ?』

その視点を抜きにして、J3昇格について報じるなよ!って感じていたのだ。

試合が終わって、ヴィアティンサポーターの方々とダラダラ話をしながら、そろそろ遅くなっちゃうなと松戸へと帰路についた私。

三岐鉄道で西桑名まで行って、そこで今度は名古屋行きの関西本線に乗り換えると、同じ電車にヴァンラーレ八戸の選手から監督からチーム関係者の全員が乗っているじゃない。

ガラガラでは無かったものの、座る席は十分にあるのに、全員立っての乗車ですよ。

この人たち、人生をかけるような試合をさっきまでやってきて、しかも名古屋から新幹線乗り継いで八戸まで帰らなくちゃいけなんだぜ?

『おい!そこの若いの!!この人たちに席を譲りなさい!そこのおっちゃんも!選手たちのデッカイ「ATHLETA」のキャリーバッグがちょっと足に当たったくらいで、そんなおっかない顔しない!』

こういう現状は分かってはいるものの、改めてその実情を目にすると、本当に「この人たちをオモチャにしちゃいかん!」って思うわけですわ。

日々を取り戻すために…

キャリーバッグの持ち手にヴィアティンのタオマフ巻きつけちゃっている以上、話しかけない方が不自然だったので葛野昌宏監督に思わず声を掛けてしまいましたよ。

「J3昇格おめでとうございます。Jリーグに上がったらこんなローカル線で移動しなくて済みそうですか?あぁやっぱりJ2まで上がらないとそんなに変わらないか。」

「ありがとうございます。そうですね、J3までは、移動手段もリーグから規制もそんなにないし、まあそれほど変わらないんじゃないかと思います。それに俺電車好きですよ。」

チームは確かにマイクロバスで東員を去っていった。私はてっきりそのまま名古屋まで行って新幹線に乗るのかと思ってたら、こんなローカル線で出会っちまうなんて、

「もうマイクロバス使ってる意味ほぼないじゃん!形だけじゃん!!で、Jリーグ上がったらこういう守らなくちゃいけない形がもっと増えてくるじゃん!絶対大変じゃん!絶対今よりおカネ掛かるじゃん!続けられなくなったら両手上げてゴメンナサイするしかないじゃん!!!」

日曜日の東員では、ヴィアティンサポーターをはじめ、スタジアムに来ている全ての人たちが主役になっている「地方サッカーチームの可能性」を感じたとともに、「J3昇格」「Jリーグ参入」という一見分かりやすく、一見幸せな感じのするこの言葉が持つ、侘しさや切なさも同時に感じることが出来た。

Jリーグがどのクラブも儲かっていて、しかもそれが持続可能なビジネスとして成立していて、さらにどんどん市場規模を拡大させていっている。そういう実態があるのなら、こんな侘しさや切なさとは縁のない世界であると言えるが、残念ながらそうでない以上、先ずはその現状を理解すること、どうすれば明るい未来を創っていけるのか考えること、死ぬまでサッカーを楽しむ方法を見つけ出すこと。これらを考える時間がドンドン増えてきて、それに反してエロサイト視聴時間が著しく減少していっている。

オスとしての本能がサッカーによって削がれていっているのだろうか。

まったりエロサイトを眺められる日々を取り戻すためにも、日本サッカーをどげんとせんといかん!

(終盤、若干の心の乱れが生じておりますが、執筆者の意思を尊重し、ノーカットでお送りいたしました)

 

三重・東員まで「本多ヴィア勝」に会いに行き、サッカークラブ「最強の哲学」を思いつく。

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