映画「クラシコ」を観て松本山雅が戦った地域リーグ時代を知る

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南葛サポーターDさんから借りた激レアDVD

『愛すべきサッカーおじさん』南葛SCサポーターのDさんからお借りしていたDVDをやっと観ることが出来た。

 

「愛すべきサッカーおじさん」が貸してくれたDVDはややマニアックではあるものの最高に刺激的で、一度も早送りすることなく、オープニングからエンドロールに至るまで、私の本能を惹きつけてやまなかった。

そんなDVDであるから、もちろん1人でじっくりとその映像世界を堪能し、今は何というか、妙にスッキリしたというか、そこはかとない爽やかな感情が身体の中心からグイグイと沸き起こってきている。

ここまで読んで「何であんたの知りたくもない日常の吐露を聞かされなくちゃならないんだよ!」と思ってしまった方もおられるかも知れないが、それはあまりにDVDという記録媒体に対してのイメージが偏向しておられるとしか言いようがない。

それにそもそも私は「DVD派」ではないのだから、全くの見当違いも甚だしい。

と、勝手に1人で逆ギレをするという最悪の書き出しとなってしまったが、「愛すべきサッカーおじさん」が貸してくれたDVDはやっぱりサッカーのDVDだったのだ。

それも非常に入手困難と言われている激レアDVD。秋葉原の「ラムタラ」では絶対に売っていないDVD。そして有名な人が1人だって出て来やしないDVD。。。

「クラシコ」松本山雅と松本の人たち

DVD「長編サッカードキュメンタリー映画 クラシコ」は、2009年の北信越サッカーリーグを追った作品だ。

その中でも特に、松本山雅FCとAC長野パルセイロという2つのチームに焦点を当てて制作されている。

現在ではこの2つのチームはともにJリーグクラブとなっているが、今から9年前のこのシーズンにおいては「地獄の北信越」と呼ばれた地域リーグをその戦場とし、この2つのチームに加え、ツエーゲン金沢まで所属していた(サウルコス福井も既にいた)北信越リーグは、全国に9つある地域リーグの中でも、JFL昇格までの道が非常に狭き門だと言われていた。

作品の中では、長野市と松本市の間に存在する歴史的「対立構造」が最高にいい感じでスパイスになってもいるのだが、とにかくもう、松本の人たちの山雅に対する執着心が凄いのである。

城下町でありながら県庁ではなく(ここの部分が結構、松本人にとっては遺恨が深いようだ)地政学的にもやや不利な環境にあったのが、上越新幹線の開通によって更に追い打ちをかける。

県庁がないのにも関わらず国立大学(信州大学)もある「学都」で、北アルプスと八ヶ岳美ヶ原に挟まれた扇状地には、かの黒澤明監督も魅せられた安曇野の自然を望む。

今年6月、アルウィンへ初めて行った時の写真

こんな比較的「品のある魅力」だけでしか勝負出来なかった街に、「山が優雅」という松本そのものを表したような名前のJリーグ参入を目指すサッカーチームがあると知った時、長野のチームをやっつけるチャンスがあると知った時に、その求心力たるや凄まじいものがあったのだろう。

ただ、そうは言ってもこの決して長くない期間の間に、そのサッカーチームがJリーグクラブとなり、そして一度はその頂点であるJ1リーグへ昇格するまでに成長していけたのには、行政面、財政面で支えた人たち、支えた仕組みはあったはずで、例えばあの素晴らしいホームスタジアム「アルウィン」が松本市の財政を使わずして2001年に完成していたことも、松本山雅が一気に「松本の人たちのモノ」となっていく上で大きな後押しになったのは間違いのないことだろう。

「地獄の北信越」

この作品では、最後に松本山雅が「地決(現在の地域CL)」で優勝し、JFL昇格という最初の夢を叶えるところで終わるのだが、そこまでの道程が結構えぐく、全然平坦ではない。

まず北信越リーグにおいては、長野パルセイロとのダービーで2戦引き分け、結局アウトサイダーのJAPANサッカーカレッジに優勝をかっさわれ、山雅は長野とともに地決出場権をかけて全社に出場する。その全社で山雅は優勝するのだが、準優勝がツエーゲン金沢、4位が長野パルセイロと、まるで北信越サッカー大会のような結果となる。

松本市内にて 日曜日の夕方はやってない店が多かった

地元アルウィンで開催された地決の決勝ラウンドにも山雅とともにツエーゲン金沢が勝ち残っており、いやはや「地獄の北信越」をライブで経験したサッカーファンたちは

「は!?松井がワールドシリーズでMVP?!どうでもいいわ!」

「は!?南アフリカ?!ワールドカップ? どうでもいいわ!」

「は!?のりピー逮捕?!マジか~ え!股ぐらにタトゥーって夢壊すなよ~」となっていたはずである。

っていうか、のりピー逮捕された時に産まれた子がもう小3なの?時が経つのってホントに早いわ、やになっちゃう!

と、のりピーこと酒井法子さんと生年月日が限りなく近い私が、ここでもう1つDVDを観て知った情報を出すと、この年アルウィンで開催された地決の決勝ラウンドで、松本山雅は10,965人もの観客を集めている。これは勿論、同大会観客動員数記録であるピー。

ホームタウンの琴線に触れるチーム

だんだん歯止めが利かなくなってきたので、そろそろまとめようと思うが、今回私が言いたかったのは、サッカーチームを応援するという熱量は、決してそれが日本のトップリーグでなくても、十分に沸騰させることも可能だし、別にそこに誰もが知るようなスター選手がいなくても、人間というものは夢中になってしまう能力を持ち合わせていると改めて気がつかされたということ。

イニエスタが観たくて初めてJリーグのチケットを買う人がいるのは素晴らしいことだし、結局イニエスタが水族館に行っちゃって肩透かしを食った人が「カネ返せ」ってなっちゃうのも話題性という部分においては決して悪いことじゃない。

ただ、このDVDの中に出てきた信州大学の先生の言葉にもあったように、現代社会に生きる人たちはどこかで社会に対する「忠誠心」を持て余してしまっている部分があって、それが「ホームタウン」と声高に叫びながら地域という概念と結びつくことが「是」とされている地域のサッカーチームによって補完される側面もあるんじゃなかろうかと私は思うのだ。

別に選手たちが小学校に行ってサッカー教室をしたり、お祭りに参加したり、駅前の掃除ボランティアをしたり、そんなことをしなくてもいいから(地域リーグの選手たちは練習と仕事で忙しくてそれどころじゃないでしょ)チームの背骨となる部分をその「ホームタウン」で暮らす人たちの「琴線に触れる」ものとしていかに提示できるか。そこに掛かっているのではないかとも思う。

その部分を「JFL昇格」「Jリーグ参入」としてしか訴求出来ていないから、スタミナ切れで消滅しちゃうチームが出てきてしまうんで、チームを作る方も、それを支える側も、そこらへんの価値の見出し方が深化していけば、地域リーグやJFLといったアンダーカテゴリーのサッカーも、かなりその光景が変わっていくんじゃないかと、そんな風に感じるのだ。(松本山雅がそれを体現しているとは私は言い切らない。彼らも積もるところ「Jリーグ参入」がメインコンテンツであっただろう)

「ショー」と「混沌」

前回に続いて来る地域CL(=地決)に関するネタで書かせていただいたが、それにしてもこのカテゴリーは常に混沌としてきたのだなと、見はじめて1~2年、ビギナーの私であってもだいぶ理解出来てきた。

そして、この世界が多くのサッカーファンにとって、ほとんど関心の対象となり得ず、その存在すらも知られていない現状は、非常に勿体ない話だとも感じている。

「愛すべきサッカーおじさん」で南葛SCサポーターのDさんはよくこんなことを私に言う。

「Jリーグはね、ショーなんだよ。」

最近この言葉の持つ意味が少しずつ実感として分かるようになってきた。

「ショー」の素晴らしさも知っておいた方がいいが、「混沌」にこそ人間が本来求める生々しいサッカーの世界があるようにも思う。

ちなみに私は「生々しい」DVDは全然嫌いじゃないので、いい作品があったら是非ご指南願いたい。

 

地域CLが「日本スポーツ界における最も残酷な戦い」と言われる2つの理由

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