日本スポーツ界における最も残酷な戦い
「日本スポーツ界における最も残酷な戦い」

こんな風にも表現されてしまう年に1度の地獄の大会と言えば、それは全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(以下地域CL)に他ならないのである。
全国に9つある地域リーグ王者と、10月に茨城で行われた全社(全国社会人サッカー選手権大会)の結果を受けて出場を決めた3チームの合計12チームが、たった2つのJFL昇格権利を巡って、熾烈な争いを見せてくれるだけでなく、それが考えられないようなタイトな日程で行われることで、実力以外の「何か」が勝ち上がる為には必須の大会とも言われ、そこに蠢く悲喜交々(ひきこもごも)のあまりのドラマチックさ加減から、この大会が「最も残酷な戦い」と評されるのも十分に理解出来る。
と、何やら分かったような感じで始めてしまったが、実のところ私自身がこの地域CLを実際に観るのは、今回が2度目に過ぎない。

しかも、1度目の観戦は、市原のゼットエーオリプリスタジアムで行われた、この大会の決勝ラウンドのうちのたった1試合を見ただけに過ぎず(コバルトーレ女川VSテゲバジャーロ宮崎戦)、言ってみればこの「残酷な戦い」の上澄み部分を軽く舐めたくらいの感じで、この大会に東北リーグ王者として参加していたコバルトーレ女川サポーターの高橋正樹さんに、エビスビールを箱で差し入れした時点で、私のミッションはほとんど終わったようなものでもあった。
つまり、本腰を入れてこの地域CLを体感出来るのは、私にとっても今シーズンが初めてで、それだけに少々たぎる心を抑えられず、若干興奮気味な文章となってしまっているであろうことは、私自身も十分自覚しているので、話半分で読んで頂ければとおも・・・いや、是非とも120%読んで頂きたいのである!
前段が長くなってしまったが、この地域CLという大会の最大の特性を2つ、簡単に説明してみたいと思う。
まずひとつ目が、先にも触れたが、①この大会がJFL昇格を目指す上で必ず通らなくてはならない登竜門であるということ、そして2つ目が、②この大会が「残酷」「地獄」と称される由縁でもある大会日程に関することだ。
地域CL最大の特性
①JFLへの登竜門

地域CLは長く「全国地域リーグ決勝大会(1977年~2007年)」「全国地域サッカーリーグ決勝大会(2008年~2015年)」という名称で行われてきた。その為この大会を指して未だ「地決(ちけつ)」と呼ばれることも多いのだが、地域CLと「ちけつ」は実質的に同義語であることをまずはご理解頂きたい。
第1回大会が開催された1977年頃にもなると、日本全国の地域リーグも格段に整備され、それまで全社が果たしてきた『JSL(日本サッカーリーグ)昇格チーム決定大会』としての機能を引き継ぐ形で地決はスタートした。
その後、JSLがJリーグのスタートとともにJFLへと再編成されたり、J3が出来てグルージャ盛岡がJFLを経ずにJ3リーグへとジャンプアップしたりと、Jリーグの影響をモロウケしながらも、現在のところは「JFL昇格チーム決定大会」としての機能を果たしている。
地域リーグからJリーグ参入を目指しているチームにとっては、地域CL(=地決)を経てJFL昇格を果たすのが、最初の避けられない関門にもなっているので(グルージャ盛岡は例外)、そういったチームにとっては地域リーグでいくら圧倒的な優勝を飾ろうとも、諸手を挙げて万歳とは全くならないようで、「いや、まだ地域CLが残ってますんで・・・」と優勝インタビューでもはしゃいだ姿はほとんど見せてくれない。

それはそうだ、今回6回目の挑戦となるサウルコス福井は、今年小学校1年生になった子が生まれた頃にはもう地決に出てたんじゃい!でもって資金がそこをつきそうになってクラブがなくなりかけたんじゃい!
埼玉西武ライオンズが10年ぶりにパリーグを制したのにも関わらず、やっぱりソフトバンクに負けて日本シリーズへの道を絶たれてしまったのを見ていると、関東リーグで優勝した栃木ウーヴァFCの「デカモリシ」こと森島康仁選手が「まだ僕らは何も成し遂げてないんでね」と甲高い声で話したのも、十分すぎるくらい理解出来るのである。
と、ややおかしな感じになってしまったので、少し話を戻すと、現在Jリーグに所属しているチームの多くが、この「地決」を経てJFLへ昇格した経験を持っていると言っていい。だから、そのチームを創設当時から応援している「レジェンド」級のサポーターにとって「地決」を経験したことは、間違いなく武勇伝のひとつになっているであろう。
つまりこの地域CL(=地決)という大会は、JFL昇格の登竜門でもありながら、Jリーグ参入を目指すチームにとっても必然的に通らなくてはならない道でもあったのだ。(これについてはグルージャ盛岡もそうだった)
②地獄の大会日程
現在9つの地域リーグ王者+全社3枠の12チームで争われているこの大会。その優勝決定システムは、4チーム×3グループによる1次ラウンド(総当りリーグ形式)と、そこから勝ち上がった4チーム(各グループ1位と各2位の成績最上位)による決勝ラウンド(総当りリーグ形式)との2段階に分かれている。
ここまでは「トーナメントじゃないんだ、結構フェアじゃん」という感想を持たれる方も多いと思うのだが、このリーグ戦が「3日連戦」と知ったらどう思われるだろう。
私はこのレギュレーションを初めて知った時にはこう思った「そんなのFIFAが許さないんじゃない!!??」
でも、安心して欲しい。地域CLは日本サッカー協会と全国社会人サッカー連盟の主催大会なので、FIFAから大会日程について咎められることはない。
え?全然安心出来ない?
確かにそうだ。この地獄の大会日程について、現場サイドも疑問を持っていることを私は10月の全社で知った。

優勝した松江シティFCの田中孝司監督(元日本代表選手)もこう言っていた。
「でもね現場預かっている側からすればやるしかないんですよ、だからね、皆さんがもっと外側で議論してくださるのをお願いしたいくらいで・・・」
そう。この日程が「おかしい!」「異常だ!」「地獄だ!」「残酷だ!!」と思うのであれば、まずはサッカーファンの間で議論することろから始めましょうや。
ただ、それでも今大会からは決勝ラウンドが隔日試合開催へと変更になった。こうやって注目されることで少しずつ環境が改善されていくのは、スーパーの万引きGメンも実証していることだ。(1人雇えば被害額激減!)
とまあ、「スーパー万G」まで登場してきたところで、依然としてこの大会は過酷であることに変わりはない。だってあなた、3日連続で試合するって普通の人で言えば「1週間で3週間分の仕事する」みたいなもんですよ。あ、これくらいはやっちゃう人、決算期とかになれば割といるな…
じゃ「1週間で3週間分のメシを食う」…これも出来ちゃう人、いるな…
じゃ「1週間で3週間分の小言をくらう」…!!!どうだ!これは地獄だ、そして残酷だ!! 現場からでは改善できないので是非とも外圧を掛けて欲しい!!
と、少しだけ私のプライベートが垣間見れたところで、地域CLの大会日程がいかに地獄であるのか、ご理解頂けただろうか。
そしてそんな「残酷」なサッカー大会がもうすぐ始まってしまうのだ。
2018 地域CL 参加チームとグループ分け
最後に、今大会に出場するチームを決定した1次ラウンドのグループ分けとともに紹介してみようと思う。
2018年全国地域サッカーチャンピオンズリーグ
1次ラウンド(11月9日~11日開催)
Aグループ(函館市 千代台公園陸上競技場)
- FC刈谷(全社枠 東海リーグ2位)
- 北海道十勝スカイアース(北海道リーグ優勝)
- ブランデュー弘前(東北リーグ優勝)
- 高知ユナイテッドFC(四国リーグ優勝)
Bグループ(岐阜市 岐阜メモリアルセンター長良川競技場)
- アルティスタ浅間(全社枠 北信越リーグ2位)
- バンディオンセ加古川(関西リーグ優勝)
- 鈴鹿アンリミテッドFC(東海リーグ優勝)
- J.FC MIYAZAKI(九州リーグ優勝)
Cグループ(松江市 松江市営陸上競技場)
- 松江シティFC(中国リーグ優勝)
- おこしやす京都AC(全社枠 関西リーグ2位)
- 栃木ウーヴァFC(関東リーグ優勝)
- サウルコス福井(北信越リーグ優勝)
決勝ラウンド(11月21日、23日、25日)会場:市原市 ゼットエーオリプリスタジアム
是非とも、1人でも多くの方に、この「日本スポーツ界における最も残酷な戦い」地域CLの目撃者になって欲しい。