2018全社レポート③いわきFC「無個性なチーム」と「超個性的なサポーター」

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全社で絶対に見たかったいわきFC

今回の全社(全国社会人サッカー選手権大会)において、私が絶対に見たいと思っていたチームのひとつがいわきFCだった。

現在の所属は東北サッカーリーグの2部で、そうである為に今大会で仮に優勝したとしても「飛び級」して地域CLへの挑戦が出来なくなったこのチームは、既に天皇杯の本大会に2度も出場し、J1クラブ相手に番狂わせを起こすなど、アンダーカテゴリーのチームとしての知名度は群を抜いているとも言えるが、私自身はまだ彼らを試合会場で見たことがなく、その「規格外」なサポーターの存在も含めて、是非ともこの全社で体感したいと思っていた。

結果的にいわきFCは3位決定戦まで進出したので、彼らの1回戦(対FC徳島)、準決勝(対松江シティFC)、そして3位決定戦(対おこしやす京都AC)の3試合を私は現地で観戦することが出来た。

そして、これまで様々な媒体から得たり、人づてに聞いてきた情報を元にして構築されてきていた私の中での「いわきFC観」が、改めて確認出来たこともあった半面、少し思い違いしていたと感じることも無いわけではなかった。

今回は私の中で若干のリライトが加わることになった「いわきFC観」を自身の整理のためにも、まとめて書いてみたい。

大会No.1 均整の取れた体格をした選手たち

「いわきFC」と言って最初の思い浮かぶのは、クラブの大倉智社長の言葉「日本のフィジカルスタンダードを変える」でもすっかりお馴染みになってしまった、選手たちの鍛え抜かれた体格であると言ってもいいだろう。

身体のラインがくっきりと露呈してしまう「オッちゃん達の敵」アンダーアーマー(以下UA)のユニフォームをその肉体美でカッコよく着こなす選手たちは、まるでカタログモデルがそこから抜け出てきたようで、それだけで相手チームに威圧感を与えているように見えてしまう。

偶然にも全社1回戦の相手、FC徳島のユニフォームサプライヤーもUAで、奇しくもいきなり「UA対決」を見ることになったのだが、やはりこれは想像通りにいわきFCの選手たちの方が明らかにUAを着こなしていた。

ただ、選手たちは思っていたよりも線は細く「細マッチョ」の最終形態然としたスタイルの良さで、やみくもに筋肉だけをつけているわけではないのだなぁとも思ったが、その後の対戦相手と比較しても、やはりいわきFCの選手たちが最も均整の取れた美しい体つきをしていたように感じた。

いわきFCには「色気」を感じない

いわきFCの中で、23番吉田和樹選手については、彼が特別な選手であることが理解出来た。

しかしながら、そうした均整の取れた体形の選手ばかりであるが故に、いわきFCの選手の中で際立つ個性を感じるのは、身長198㎝の小批ランディ選手とルーカス・マセド選手くらいで、3試合を間近でフル観戦した割には、最後の最後までいわきFCの選手たちの個性を見出すことが出来なかったし、それと同時にいわきFCのチームとしての戦い方についても、強い印象はそれほど持つことが出来なかった。

言い方を変えれば、このチームでプレーする選手たちがかなり高いレベルでオーガナイズされていると取ることも出来るが、いち観戦者の率直な感想としては、そこに「色気」のようなものをなかなか見い出せず、特に1回戦で当たったFC徳島がかなり「色っぽい」チームだったので、その色気をいわきFCが腕力だけで抑えつけてしまったようにも見えてしまって「アメリカっていつもそうだよね」などと訳の分からない思いが、頭の中を巡ってしまってもいた。

私はいわきFCに所属する選手たちの経歴を見れば、彼らが戦うのに相応しい舞台はJFLであってもおかしくないと思っているので、現在所属するのがそこから2つ下のカテゴリーである地域リーグの2部だからと言って、全社で仮に優勝していたとしてもそれは決して「大番狂わせ」ではないと感じていただろうし、それだけに彼らがどんな戦い方、チーム芸術を見せてくれるのかには密かに期待をしていた。

結果的に3位を勝ち取ったのだから、もちろんそれ自体素晴らしいことではあるのだが、早晩、いわきFCを熱心に応援しているファン・サポーターの欲求に応えられない時期が来てしまうのではないかと少し不安にもなってしまうようなチームであったのは、やや思い違いをしていたとも言えるだろう。

「連戦連勝」「格上喰い」が飽きられる日

彼らが来季昇格1年目にして東北リーグ1部で優勝する可能性はかなり高いと思っているが、これまでは次のステップへと進むのに必要な条件がリーグ優勝だけであったのが、地域リーグ1部からJFLへ昇格するのには、リーグ優勝だけでは足りなくて、その先の地域CLを勝ち抜く必要があるわけで、何シーズンも東北リーグ1部で戦い続ける可能性も十分に考えられる。

そうした状況になった時には、やはり多少は「色っぽい」サッカーを見せていかないことには、飽きてしまうファン・サポーターも出てきてしまうかも知れない。

戦力面、環境面においては明らかに分不相応なカテゴリーにいたからこそ、これまで天皇杯予選でJ3福島ユナイテッドを叩いて熱狂させられることが出来、Jクラブとの親善試合やテストマッチで互角な戦いを見せてこられた側面は大きいわけで、もうその臨界点に限りなく近い東北1部というカテゴリーまで上がって来た以上「格上喰い」をメインコンテンツとし続けていくのも難しいだろう。

いわきFCサポーターに問われていくもの

一方で、そんなチームを応援しているファン・サポーターについては、今回の全社においても間違いなくその数は断トツで、老若男女が赤いユニフォームを着るだけに留まらず、身につける物をほとんどをUA製品でまとめている姿には驚きを感じたし、全社という年に1度のお祭りを楽しもうとする姿勢も強く感じた。

これには今大会の開催地が隣県の茨城で、特にいわきFCの1,2回戦が行われたひたちなか市は、いわきの人にとって日頃から馴染みの深い町(震災後は特にちょっとした買い物やレジャーでも日帰りで訪れる町になっているとのこと)であったことが多分に影響はしているのだろうが、それにしてもいわきFCサポーターの存在感は飛びぬけていた。

ただ、先にも書いたように、来季はある意味でチーム以上にファン・サポーターがいわきFCというチームとどう向き合っていくのか、それが問われる初めてのシーズンになるような気もする。

そのまま1シーズンでJFLへと抜けていけば、今のような連戦連勝は難しくなるし、何シーズンもJFLに昇格することが出来ない状況が続けば、同じカテゴリーで連戦連勝をただ毎シーズン繰り返すという無間地獄が待っているかも知れない。

こうなった時には熱心なファン・サポーターですら離れてしまう人も出てきかねないし、そうなれば新たなファンを巻き込もうにもなかなか難しいだろう。

「無個性なチーム」と「超個性的なサポーター」

ただそうは思いながらも、何人かのいわきFCサポーターと触れ合った限りでは、きっとそんなハードルも彼らは超えていくのだろうなとも思えた。チームがどうであろうが、クラブがどんな姿勢を取っていようが、いわきという町で生まれ育った人たちを中心に、新たな楽しみ方を常に模索していければ、結果的にそこに関わる人の数は増やしていけるだろう。

「無個性なチーム」と「超個性的なサポーター」

私が今回の全社でいわきFCから受けた印象は、こんな相反する2つのイメージだった。

初めてその姿を見ることの出来たいわきFCを来シーズンは彼らのホーム「いわきFCパーク」で必ず体感しようと思っている。

 

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