アンダーカテゴリーに魅せられるオッちゃんたち

私が地域リーグを中心としたアンダーカテゴリーのサッカーを現地観戦するようになって実感しているのが、それぞれのチームを応援しているファン・サポーターの方々や、こうしたカテゴリーに深く関心を持って熱心に試合会場へ来ている方々の多くが、Jリーグのスタジアムと比較した時にやや年齢層が高く、圧倒的に男性が多いということだ。
これはSNSやインターネットを通して地域リーグなどの情報収集していた時には全く分からなかったことで、私にとってそうした方々と初めて顔を合わせる機会となったイベント「おいでよ!地獄の関東リーグ(笑)」(2018年2月開催)において、挨拶をさせていただけた方々が揃いも揃って同世代で(私は1971年生まれ)確か全員が男性であったように記憶している。
それまで私が、文字や画像でしか情報を得ていなかった世界に魅せられている人たちがこんなに沢山いる。
当初はそちらの方の衝撃が大きくて、そこに集まっている方々の「属性」にまで意識が回らなかったが、それ以降、試合会場やお酒の席などで「友人」と呼べる方々がもの凄いスピードで増えていく中で、そこに妙な居心地の良さを感じていたのは、間違いなく世代が近い同性同士で「遊んで」いるからだと最近になって気がついた。
アンダーカテゴリー界隈高齢化問題

もちろん、中には20代、30代前半といった若い方が全くいないわけではなく、そうした私よりも一回り以上も後に産まれてきた方であっても、アンダーカテゴリーのサッカーは勿論、Jリーグや日本代表、欧州リーグといったフットボール全般に対しての造詣は非常に深く、お話させて頂くたびに勉強させてもらっているような気分になっているのだが、いずれにしても、日本代表戦が行われた埼玉スタジアムにいた20歳前後の「女子グループ」や、伊東純也や青山敏弘を知らなかった「若い男性グループ」や、見ているこっちの方がドキドキしてしまうようないかにも「初デート風カップル」などは、まず関東サッカーリーグの試合会場でお目にかかることはないし、そもそもその環境をそういうものだと思ってしまえば何の疑問も湧かないわけで、私の心の中でもただただ「ああ、愛すべきオッちゃんワールドへまたやって来たぞ」といった具合に、地域リーグや都県リーグの現場が安堵の場所になっていく。
しかし、そこで一歩立ち止まって考えた時に、あまりに進んだアンダーカテゴリー界隈の「高齢化」は、その未来の可能性を著しく狭めてしまっているのではないかと思うようになった。
言ってみれば「アンダーカテゴリー界隈高齢化問題」である。
オッちゃんたちは、天変地異が起きたとしてもきっとアンダーカテゴリーを中心に日本サッカーを愛し続けるだろう。でもオッちゃんたちは間違いなく若者たちよりも先にこの世からオサラバしなくてはならないのだ。そう思うと、果たしてこのままでいいのだろうかという問題意識が芽生え、どうすればもっとアンダーカテゴリーへの関心が世代や性別を超えて訴求出来るのだろうか、そんなことを少しずつ考えるようになってきている。
若者がアンダーカテゴリーをあえて選ばない理由

アンダーカテゴリーが「愛すべきオッちゃんワールド」になっているという事実は、裏を返せばアンダーカテゴリーが「若者たちがあえて行かないワールド」であると言える。
これは仮説だが、お洒落盛りの女子たちや、その女子にモテることだけが大切な若い男子諸君(オッちゃんもミジンコの脳みそくらいのモテたい気持ちは持っている、信じられないかも知れないけれど!)にとって、社会的地位が確立していない分だけ、自分自身の「身の置き所」がどこであるのかというのは非常に大きな問題で、自分を「可愛く・カッコよく・立派に」見せられるコースを選択してしまうのは自然の摂理に近いものであると考える。
そうなると同じサッカー観戦をするのでも、J2よりはJ1の方が、柏レイソルを見るよりも浦和レッズの方が認知度も高く説明しやすいから良くて、Jリーグを見るくらいならスター揃いの日本代表戦を見た方が周囲に説明がしやすく、最高にカッコいいのは、深夜のスポーツバーで欧州チャンピオンズリーグを見ながら口説くことで、翌日学校や会社で「昨日さ夜中の3時まで女とPSGの試合観ててさ・・・」と説明する事と相場は決まっている。
ここまで読んで頂いた方はお気づきだと思うが、「身の置き所」が重要な若者にとって、周囲に「説明しやすい」行動や、客観的・世間的評価が確立している世界に寄り添うことが案外大切であって、この「説明しやすい」「客観的・世間的評価」という部分においては、アンダーカテゴリーのサッカーは悲しいほどにそれが足りていない。
こんなことを書くと「愛すべきオッちゃんワールド」の友人たちからも怒られてしまうかも知れないが、これは厳然たる事実だ。
若者をアンダーカテゴリーに集めるための方向性

しかし、この『アンダーカテゴリーは「説明しにくい」「客観的・世間的評価が確立されていない」』という性質が、若者たちを集めることが出来ていないという私の仮説が正しいとするならば、「集めるため」のアプローチの方向性は必然的に定まってくる。
アンダーカテゴリーを「説明しやすく」し「客観的・世間的評価」を確立させてしまえばいいのだ。
と言っても、そのアプローチ手法について、私がここで画期的なアイディアを出せるはずもなく、現時点で言えるのはせいぜい「言語化」するということくらい。
地域リーグの悲喜交々を端的な表現を使って「説明しやすく」する努力は、このブログでも取り組んでいきたい大きなテーマの一つではあるが、ひとつだけ言えるのは「そこにオッちゃんたちの力が必要だ」ということ。
オッちゃんたちは若者が持っていない「身の置き所=社会的地位」がある。そしてその「身の置き所」を確立するまでに得た様々なスキル、人脈、そしてなんと言ってもサッカーに対する揺るぎのない愛を持っている。
ミジンコの脳みそ分くらいはモテたくても実態がそろそろ伴わなくなってきているオッちゃんたちには、もう色恋の駆け引きに時間が割かれる心配はほとんどない。それだけに一心不乱にサッカーと向き合おうとする覚悟もある。
日本のサッカー文化を深めていく為に

Jリーグが創設されて四半世紀。
この間に日本サッカー界は信じられないようなスピードでその文化を発展させてきた。
そして今まさに、JFL、地域リーグといったアンダーカテゴリーの世界に対する価値の共有と、そこにある素晴らしいサッカー世界の醸成をしていく時期になってきているのだと最近非常に強く感じている。
文化の発展、深化、醸成に欠かせないのは、そこにいかに多くの人が関われるかどうかに掛かっていると言っても過言ではないだろう。
人が集まる場所で祭りは行われ、そこで商いがはじまり、その場所へと続く道が造られていく。
私もいち「オッちゃん」として一心不乱にサッカーと向き合うつもりだ。