『サッカー経験者は何故スタジアムでJリーグを見ないのか』それについての推論と仮説

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サッカーを「する人」と「見る人」

Jリーグを日常的にスタジアムで観戦している熱心なファン・サポーターが、必ずしもサッカー経験者ばかりではないということを実感されている方も多いのではないだろうか。

私の場合も一緒に柏レイソルの試合を応援しに行っているメンバー数人の中で、自信をもって「サッカー経験者」と言えるのは私だけで、さらに言えば「スポーツ経験者」にまで範囲を広げてもその数は半分しかいない。

つまりこうした実情が何を示しているか。それを推測するに、日本社会においてはサッカーを含めてスポーツを「する人」と「見る人」が分離傾向にあるのではないかと私は思っている。

サッカー経験者が必ずしもスタジアムへ行くとは限らない

この推測を元にして、学生時代のサッカー仲間が実際にどうであったのか、また今現在どうであるのかを考えてみると、高校や大学時代のサッカー部の仲間の中で一緒に日本代表戦や日本サッカーリーグの試合をスタジアムまで行って観戦していたのは限られた数人に過ぎなかったし(他の仲間はスタジアムに行かないどころか、関心自体が薄かったように記憶している)小学生、中学生時代に半ば遊びにいくような感覚で国立競技場や西が丘サッカー場へサッカー観戦に行っていた大勢の友人たちの中にも、未だにサッカー観戦を日常的にしているという話はほとんど、と言うか全く耳にしない(勿論、既に縁遠くなっている友人も少なくはないのだが)

本来であれば、サッカーを実際にプレーした経験があることが、サッカーをスポーツとしてより深く楽しむ素地を育み、画面を通じての観戦だけではなく、スタジアムに行ってまでもその風を感じようとさせていくようにも思えるのだが、どうやら必ずしもそうはなっていないようだ。

サッカー経験者は何故スタジアムへ行かないのか

現在日本のサッカー競技人口はおよそ100万人(2017年度 1種~シニアまでの日本サッカー協会登録選手数91,5306人)これ以外にサッカー協会登録外のプレイヤーもいるし、過去にサッカーをしていた人の数も合わせれば、サッカーをている人(したことのある人)は相当な数いるはずで、こうした人々にシーズン中2~3回だけでもJリーグ観戦をする習慣があれば、Jのスタジアムはどこも常に満員にすることだって出来ようものだが、実際には全くそうなってはいない。

サッカー経験者(スポーツ経験者)は何故、スタジアムでサッカー(スポーツ)観戦をしないのか。

推測に推測を重ねてしまうようで、話をこれ以上先に進めることに若干の不安を持ちつつも、私は敢えてひとつの仮説をここで立ててみたい。

『日本社会においてサッカー(スポーツ)を経験した人のほとんどは挫折した人達でもあって、挫折を与えた世界(サッカー・スポーツ)と距離を置こうとする』

私がプレーしていた大学のサッカー部は弱小で、当然ながらそこから日本代表選手(当時プロサッカーは無かったので)を目指すような環境であるわけもなく、入学してから初めてサッカーをするサッカー初心者すらいるようなチームだったが、それでも中には「高校時代は県の名門強豪サッカー部でレギュラーだった」というような華々しい経歴を持つ選手も数人在籍していた。

そんな彼らが弱小サッカー部に入ってきた理由としては、望んでも強豪大学のサッカー部に入ろうにも実力にやや欠けている部分もあったのだろうし、慢性的な怪我を抱えていて競技者としての道を諦めざる得なかったというケースもあったように記憶している。

いずれにしても彼らは、その年代においてはかなり有望なサッカー選手としての道を歩みかけていたのに、大学に入る段階でその道から外れてしまったわけだ。

そんな彼らの姿を思い起こしてみると、私からすれば技術的にも戦術的にも羨ましいくらいに優れていている上に経験も豊富でありながら、その反面、サッカーをやや冷ややかな目で見ていたように今にしては思う。

彼らはサッカー部の選手でありながら、普通の大学生としての生活を楽しもうとしているようにも見えたし、私たちが練習後に日本リーグを観に行くといっても一緒に来ることはほとんどなかった。

これは小学生時代にサッカー観戦を一緒にしていた大勢の友人たちが、その後、中学、高校と進学していく中で、ひとりまたひとりとサッカーから離れていき、結果として大人になってからは一度もスタジアムへ行ったことがないという人がそのほとんどになってしまっている実情とも併せて考えてみて、両者に共通している「挫折」というキーワードが私の頭の中に浮上してきたのだ。

挫折したからこそ、そこで成功した選手たちのプレーなどは見たくないと思うかも知れないし、挫折した心を見透かされない為に「Jリーグなんてレベル低い」という言葉が口をついて出てしまうかも知れない。

「下手の横好き」に優しくないスポーツ界を変えていきたい

私はこの「挫折」というキーワードが、実は日本のスポーツ文化を深めていく上での大きな障害になっているようにも思う。

つまり日本においては「スポーツをすること=競技者を目指す」という構図が王道であって、子どもから大人まで「競技者志向」でない人がスポーツをする環境がほとんど整備されていないし、それに対する価値も全く重要視されていないように思う。簡単に言ってしまえば、日本のスポーツ界は「下手の横好き」に全然優しくないのだ。

そういう環境であるから、ちょっとした挫折が致命傷になってしまう。そしてその多くは若年層にある時期に経験させられてしまう。

「競技者を目指さない」スポーツの在り方が、年代を問わず社会の中でしっかりと息づいていれば、スポーツによって「挫折」を強いられる人は確実に減らしていくことが出来るはずだし、それは必ず「見るスポーツ」の現場にも好影響を及ぼしていくようにも思う。

子ども時代に何となくボールを蹴りはじめ、そのまま学生時代も同じような仲間たちと何となくサッカーをし、社会に出てからも壮年になって以降も、何となく仲間たちとのサッカーを楽しんでいくことが普通になっていけば、その中から日本を代表するような名選手は生まれないかも知れないが、素晴らしいサッカーファンはいくらでも生まれてくるのではないだろうか。

ちなみに私は、ほとんど「挫折」を感じることなくこの歳になるまでサッカーと付き合ってこれている。しかしこれは完全に運だ。私が育った時代はサッカーが今よりはるかにマイナースポーツで、それでもまだ「下手の横好き」が生きていける道が僅かながらにはあったからだ。

そして下手くそでありながらもサッカーで挫折を経験していない私は、きっと死ぬまでサッカー観戦を楽しむと思う。

 

『サッカー経験者は何故スタジアムでJリーグを見ないのか②』2つの提言

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