FC KOREA 2018シーズンをリーグ15位の降格圏で終了
FC KOREAが東京都1部リーグ最終節でTOKYO UNITED Plusに0-1で敗れたことにより、リーグを16チーム中15位で終了することが確定し、来季の東京都2部リーグ降格が濃厚となった。(東京1部⇔関東リーグ⇔JFL間での昇降格が確定していないので、現時点では降格が確定とはなっていない)
私が彼らの試合を初めて現地観戦したのは、昨年暮れに行われた関東2部と都県リーグ代表(アイデンティみらい)との入替戦だったが、それをきっかけに彼らの定期練習を見学し、今季の東京都1部リーグの試合も、その半分以上を現地観戦したことになる。

2018年3月25日 東京都1部開幕戦(対アローレ八王子)
そもそも、2018シーズンが始まった段階で、FC KOREAはその主力選手の多くがいなくなっていた。
ある選手はJ3クラブへと移籍(藤枝MYFCのGKリ・チェグン選手)し、またある選手は地域リーグ強豪クラブへと移っていった、他にも私がクリスマスイブに観戦した試合で輝いていた選手が現役を引退してしまったという話も、開幕前にチームのマネージャーであるソン・チャノさんから聞いていた。
こうしていなくなってしまった力のある選手たちの穴を補うべく、朝鮮大学を卒業したばかりの将来有望な若手選手たちが加わり、シーズン途中からもチームとしては異例の韓国人留学生選手(彼は日本語を解さなかった)も加入、残留争いに火がつき始めたリーグ終盤には、2012シーズンの全社優勝メンバーまでがスポットで復帰して、チームを苦境の淵から脱出させようと力の限りを尽くしてきたが、強豪ひしめき合う東京都1部においては、そうした「付け焼刃」な対策が通用するような甘い世界ではなかったと言える。
結局、私は彼らが勝利する姿を1度しか現地で見ることが出来なかったが(もうひとつの勝利は少年サッカークラブの夏合宿に帯同していた為、未見となってしまった)シーズンを通してFC KOREAのサッカーを見てきて、結果だけを見れば散々たるものであるにしても、そのチーム名がもつ強者としてのイメージと、控え選手がいない場合も少なくないようなチームの実態との間で、常に厳しい戦いを強いられてきた彼らが、最後まで必死で戦い続けたことに最大限のリスペクトを送りたい。
幻の最強チーム

現在は日本人選手も所属し、その所属選手の出自を制限はしていないが、FC KOREAがそもそも在日コリアンによるサッカーチームであり、その前身は無敵のサッカーチーム「在日朝鮮蹴球団(チュックダン)」であることは良く知られたところだ。
そして、私が今こうしてFC KOREAというチームに強い興味と関心を抱いている理由も、この「チュックダン」がサッカー少年だった私の心の奥底で「幻の最強チーム」として存在していたからに他ならない。
以来、読売クラブよりもヤンマーよりも強いと言われたこの「幻の最強チーム」の存在が記憶の遠く片隅に追いやられてしまっていた時期も長かったが、それがFC KOREAとして私の前に現れた時に、彼らに近づいてみたいと思ったのは、至って自然なことでもあった。
しかしながら、かつての最強チームは今、非常に厳しい現実を突きつけられてしまっている。
全国リーグJFLに肉薄したFC KOREA

チェ・カンヨン選手は2012年全社優勝時の主要メンバーでもある(8月26日 対アストラ倶楽部戦)
日本サッカー協会が定めるところの「準加盟チーム(外国籍選手が6名以上在籍するチーム)」に、全国リーグであるJFLまで門戸を広げられたのが2001年のこと。
1998年に東京都1部リーグで優勝しながらも、準加盟チームであることから関東リーグ昇格を掛けた関東社会人サッカー大会への出場が叶わなかったチームは、プロ契約していた選手たちを全員解雇し大学生中心のチームへと変貌することになる。言って見ればその存在自体が宙に浮いたようなものとなってしまった在日コリアンによるサッカーチームが、2001年の規定改正によって再びチャンスを得ることとなり、それをきっかけにして誕生したのがFC KOREAである。
彼らはその後、順調に関東リーグへ昇格し、長く関東リーグ1部の強豪として戦い続けた。2012シーズンには全国社会人サッカー選手権大会(全社)で優勝、その翌年には関東1部でも優勝し、戦力面においては全国リーグであるJFL昇格に肉薄していたとも言えるだろう。
かつて民族の誇りとして在日コリアン社会から羨望の眼差しで見つめられていた「チュックダン」の栄光が、FC KOREAで再現されるかも知れない。そんな気運もおそらくは存在していたはずだ。
そしてそれは同時に、在日コリアンのサッカーが自らの強さによってその存在価値を見いだし続けてきたことの表れでもあるのではないか。
「強さ」だけを求めらてきた在日コリアンのサッカー

40度にも迫る猛暑の中、相手チームが交代枠5人をフルに使う中、FC KOREAには1人の控え選手もいなかった
ほんの2年前、2016年までは関東リーグ1部で戦っていたFC KOREAが、毎年のように降格の憂き目に合い、もしかしたら来年は東京都2部をその戦いの場としているかも知れない。
この事実は、長く地域リーグを見てきたサッカーファンにも衝撃を与えているはずだし、在日コリアン社会においては受け入れがたいニュースとなっているかも知れない。
しかしながら私は、彼らが関東1部の王者として初めて挑戦した2013シーズンの地域決勝大会(現在の地域CL)で敗れた時に、彼らの全国リーグJFLへの挑戦が終わってしまったようにも感じている。そして在日コリアンサッカーの誇りとしてチームが持っていた求心性も、このシーズンを境に少しずつ弱くなっていってしまったようにも思う。
実力のある選手たちがチームを去り、有望な若い選手たちもそこを自らの戦いの場として選ばなくなっていく。
日本社会の中にあって、人口減少は在日コリアンにも全く同じ課題を突き付けているわけだが、それだけでは説明がつかない程に急激な人材の枯渇がこのチームには感じられる。

優勝した南葛SCとはリーグの序盤で対戦。カベッサにねじ込まれ0-1で敗れた
言ってみれば、かつての「チュックダン」がそうであったように、FC KOREAには「強さ」だけが求められてきた。だからこそ年々カテゴリーを落としていくこのチームに対して、在日コリアン社会はその存在価値を見いだすことが出来なくなってしまっているのかも知れない。
こんな私の想像が、実態を捉えていようといまいと、シーズンを通して眺めてきたFC KOREAというチームが、苦悩しながらも決して下を向くことなく戦い続けていたことだけは断言することが出来る。そして、チームの関係者の方々、マネージャーのソン・チャノさん、試合会場でお会いする度に話し相手になって下さったリ・チョンギョン監督、GKコーチのキムさん。そして突然現れた私のような人間を少しずつ迎え入れてくれた選手たちには感謝の気持ちしかない。
そして、このチームがこの先どういった道を歩んでいくのか、あるいはどう形を変えていくのか。そこが今シーズンのように少しでも寄り添える場所にあるのであれば、これからも続けて眺めていきたいと思っているし、吹けば飛んでしまうような僅かな力かも知れないが、彼らの存在価値をひとつでも多く見つけて、同じ日本社会に暮らす仲間として発信していきたいと思っている。