音楽フェスの盛況そしてレプリカユニで溢れるJのスタジアムはちょっとイタイ?

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レイソルを応援する時、私はレプリカユニフォームを着る

私のレプリカユニ。今はもっとサインが書いてある。

私が初めて柏レイソルのホームゴール裏、いわゆる「柏熱地帯」に足を踏み入れたのは昨年の春のことで、それからたかだか1年半程度の時間しか日立台で過ごす生活を経験しているわけではない。

そんな私であっても、レイソルの試合を応援しに行く時は必ずレプリカユニフォームを着て、タオマフを首からかけた「THEサポーター」の姿になっているし、その格好で自宅から日立台まで行ってしまうことにもほとんど何も感じなくなっている。

日常生活では全くと言っていいほど身につけない黄色。胸に大きく”HITACHI”とスポンサーロゴに入った私のレプリカユニフォームには、選手たちのサインがこれでもかと言うほどに書き込まれている。

他のJクラブがシーズンごとに新しいデザインのユニフォームへと変身する中、レイソルの新ユニフォームは2年に1度しか登場しない。それだけに、私のサインだらけのレプリカユニフォームも少しずつ綻びが出てくるようになってきた。それでも勿論このユニフォームには愛着があるし、ボロくなってきたからと言って新品を買おうとは露ほども思わない。日常生活で着ているTシャツの首が少し伸びてきたら直ぐに新しいTシャツを買ってしまう私がである。

言い知れぬ違和感

日立台のゴール裏に初めて行った時、そこにいるサポーターたちの多くが、レイソルのレプリカユニフォームを身につけているのを目撃し私はかなり衝撃を受けた。

Jクラブのレプリカユニフォームが少し高額であることは知っていたし、それをこんなにも多くのサポーターが身につけているとは想像していなかった。

何千人もがレイソルの黄色いレプリカユニフォームを着ている光景はまさに圧巻だったが、それと同時に「言い知れぬ違和感」のようなものも私は感じていた。

結局は、その次の次くらいの試合からは、私もレプリカユニフォームを着て日立台に通うようになり、それによって余計にレイソルを応援する気持ちが強くなっていったのは間違いのないことだが、そうしているうちに私が日立台の黄色い人々を最初に見た時に感じた「違和感」について、それが一体なんであったのかを考えることもなく、一気にサポーター道へ邁進していくことになっていった。

音楽フェス成功のキーワード

最近、音楽フェスのビジネスとしての成功について、停滞するエンタメ界の中にあって、どうして「フェス」だけが年々観客動員数を増やし経済規模が膨らんでいっているのか、様々な観点から書かれた主張を見る機会が増えてきている。

その中には「Jリーグブームに乗っかっていた層がそのままフェスへと移っていった」とする主張まであって、何とも見過ごせない感情にもさせるのだが、多くの論客が共通して述べている要素として「トキ消費」という言葉が良く使われている。

モノを買う(消費)ことで満足を得られていた時代はとっくに終わり、続いて「コト消費」(体験を買う)という価値観へと移行、そして今はそこからさらに一歩先へ行って「トキ消費」となっているそうだ。

「トキ消費」は「非再現性・限定性」「参加性」「貢献性」という3つの特徴を持っているとされ、それを満たしているのが音楽フェスであるという。

こう書いていてもフェスの勢いがいまいち感じられないので、参考に出来そうな数字を挙げてみる。

数ある音楽フェスの中でも最も人気が高いと言われている ROCK IN JAPAN FESTIVAL。茨城県ひたちなかで、毎年8月の週末を2週使って開催されているこの音楽フェスの観客動員数は4日間の合計が274,000人で、この人数を超える観客を2017シーズンのJ1リーグで集めることが出来たクラブは11クラブに過ぎない。(ホーム17試合で)

苗場高原の山奥で3日間連続開催される有名なFUJI ROCK FESTIVAL。こちらの観客動員数は125,000人で2017シーズンのJ2クラブの観客動員数の平均人数とほとんど変わらない規模だ。(ホーム21試合で)

Jリーグの試合と音楽フェスとをその開催日数と観客数だけで比較しても、本質的な検証になるとは私も思ってはいないが、それにしても、決して交通の便がいいとは言えない地域で、しかも天候によってはずぶ濡れになってしまうようなロケーションで行われているイベントが、これほど大規模な観客を集めているという事実だけをとっても、そこに何かしらの要因を求めようと多くの論客が挑戦したくなるのも十分に理解できる。

「トキ消費」+「自己承認欲求」=「ウェ~イ!」

私はこの音楽フェス大盛況のキーワードとして「トキ消費」が大きな要素となっているのだとすれば、それに対する「自己承認欲求」も大きく作用しているように思う。

例えばTwitterやInstagramを使って、自分がフェスに「参加」して「ウェ~イ!」となっているところを世間一般に情報拡散する。

「人気アーティストのステージを今まさに見ている自分 ウェ~イ!」

「忙しいのに週末は苗場でFUJI ROCK FESTIVALしているオレ ウェ~イ!」

「チョー暑いからROCK IN JAPAN FESTIVALのぱくぱくパークでかき氷屋川久のかき氷食べているワタシ ウェ~イ!」

(自分で創作して書いているにもかかわらず、字面を見るだけで何だか気後れしてきてしまいそうだ。)

そんな数々の「ウェ~イ!」を成立させているのは、そこが苗場やひたちなかだからではなく、そこが人に自慢したくなるようなフェスという空間であるからだ。 ウェ~イ!

私は音楽フェスとは全く縁の無い人生を送ってきているので、フェスに集まっている観客たちがどんな姿をしているのか、それを確かめてみようと思った。

「フェス 客 ファッション」で画像検索してみると、出るわ出るわ。

登山ウェアのような服を着て帽子を被り、トレッキングシューズのような靴を履き、サングラスをかけた「ウェ~イ!」な人たち。

みんな似たような恰好をしているように見えながら、良く見るとそれぞれがちょっとしたこだわりをファッションで表現している。

グループで同じ色(同じ服ではない)を着てみたり、男性はひげ面・サングラス+ニット帽というコンボが多いようにも感じる。

もちろん、彼らがしているファッションはアウトドアファッションをベースにしたものではあるものの、何とも垢ぬけているし、何ともお洒落なのだ。(コンビニでも売っているファッション誌”GO OUT”からそのまま抜け出して来たような人たちばかり)

これを確認出来て、彼らがフェスに参加している自分を自慢したくなる気持ちが少し分かったような気がした。ウェ~イ!

Jリーグスタジアムの景色が変われば「ウェ~イ!」なファン層も取り込める?

私はこのフェスに集まっている観客たちの姿から、初めて日立台で黄色いレプリカユニフォームを着た大勢のサポーターの姿を見た時に感じた「違和感」の正体が何であったのか、それを感じ取ることも出来た。

何千もの人たちが同じようにレプリカユニフォームを着ている光景が、お洒落な空間とはほぼ対極にあるように思えてしまっていたのだ。

悪い言い方をすれば「ちょっとイタイ」空間になってしまっているとも言える。

誤解のないように言っておくが、私は現在のレイソルのユニフォームはJリーグでも指折りのカッコいいユニフォームだと思っているし、それを人間が着ている姿も最高にカッコいいと思っている。

ただ、ユニフォームのデザイン云々ではなく、スタジアムに集まるファン・サポーターがほとんど同じ服を着ているというその状態が「お洒落ではない」「ちょっとイタイ」と、ほんの少しだけ思っているに過ぎない。

ほんの少ししか思っていないので、私は日立台のゴール裏にレプリカユニを着て立つことが楽しいと感じることも出来る。

「お洒落じゃない」「ちょっとイタイ」

おそらく「ウェ~イ!」な人たちにとって、この問題は1枚15000円というコスト以上に、乗り越えるのが難しい壁となっているかも知れない。

「ウェ~イ!」な人たちも、もしFUJI ROCK FESTIVALに集まる観客が全員お揃いの「FUJI ROCK FESTIVAL Tシャツ」を着ていたとしたら、今のように「ウェ~イ!」とはなっていないだろう。

こうなれば、Jリーグもレプリカユニフォームと同じくらい着たくなるような、垢ぬけたアパレルグッズを積極的に開発していくしか「トキ消費」「自己承認欲求」を満たしていく術はないのではないだろうか。

フェスに参加している観客がアウトドアファッションの範疇でファッションを楽しんでいるように、Jスタジアムでもクラブカラーという範疇で、あるいはクラブのコンセプトの範疇でファッションを楽しめるようにしていくこと。

そして、Jリーグスタジアムにある景色をそれによって大きく変えていってやる!というくらいの気概がないことには「ウェ~イ!」なファン層を新たに取り込むのは難しいのかも知れない。

そんな「ウェ~イ!」なファン層に迎合してまでもスタジアムに来てもらう義理はないと思われる方もおられると思うが、それでは日本サッカーはこのまま「限られたマニア」だけの世界として尻すぼみになってしまうだろう。

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