京都から荒れ模様の岡山へ

土曜日に京都で関西サッカーリーグを2試合と、京都サンガFCのホームゲームをナイターで観戦した私は、翌日の日曜日も前日同様に地域リーグ2試合とJ2リーグ観戦をする為に、少し早起きをして新幹線で岡山に向かった。
この週末は関西から中国地方、四国の一部にかけて天候が非常に悪く、岡山と山陰方面を結ぶ路線のほとんどは運休になっており、到着した岡山駅はちょっとしたパニック状態になっていた。
それでも岡山市内の移動手段に関しては問題なく通常運転がされてり、止みそうもない雨が降りしきる中、岡山から南東10㎞ほどの場所にある神崎山公園に向かった。
神崎山公園は田園に囲まれた丘の上にあり、天気さえよければ相当気持ちのいいロケーションにあるはずなのだが、如何せんこの日の悪天候では、単に田舎の僻地へとやってきた気持ちにさせられてしまう。
陸上トラックに囲まれたピッチは水を含むどころか、所々に大きな水たまりも出来ていて、ウォーミングアップをしている選手たちが思い通りにボールを蹴ることすら出来ていない状態になっていた。
各地域リーグによる運営の実態
私はこのブログの中の「フットボールカレンダー」で、全国に9つある地域リーグの試合日程もアップロードしているが、実はその中でもこの日観戦する中国サッカーリーグについての情報をまとめるのには最も苦労をした。
同じ地域リーグというカテゴリーであっても、そのリーグ運営の実態にはかなりの違いがある。
「京都・岡山サッカー紀行①」でも触れた関西リーグについては、リーグ側がメディアコントロールまで積極的に取り組んでいるし、普段地元で触れることの多い関東リーグについては、有料入場試合も珍しくない。
他にも、九州リーグはその地理的な条件から、土日2日間をかけたセントラル開催をシーズン中に数回行っているし、東海リーグではFC刈谷や鈴鹿アンリミテッドなどSNSなどのメディア活用が非常に上手いクラブもある。
そんな中で、中国リーグはリーグの公式サイトに掲載されているリーグ日程表はPDFファイルへのリンクになっていて、しかもチーム名や試合会場が「略称」で明記されている。
おそらくそこに関わっている人たちだけの間ではこのレベルの情報で十分なのだろうが、中国地方にほとんど馴染みがなく、事前知識の乏しい私のような者にとっては、リーグ日程を調べるだけでも暗号を解くような作業となってくる。
ただ、断っておくが、これは何も中国リーグのそうした実情を批判しようと思って書いているのではなく、そこでどんなに魅力的なサッカーが展開されていようと、地域リーグというカテゴリーに対する現状の注目度合いにあっては、関西リーグや関東リーグなどでいくつかのクラブが取り組んでいる様なサッカー世界を実現、持続していくのにとてつもないパワーが必要となっているのは間違いない事であるし、そのパワーの中でも絶対的に欠かせない「マンパワー」を人口の少ない地域で発揮させるのが非常に困難であることは至極当然のことでもあると思うのだ。
私が神崎山公園へ行った日も、マッチコミッショナーを含め最低限の人員で回している現状があった。(レフリーについては2試合連続で担当されている方も!)
そして、そのどこか牧歌的な試合運営のムードに反して、田んぼのようなピッチ上では激しく、そして非常に見ごたえのある試合が展開されていた。
雨中でも楽しそうな三菱水島FC
第一試合は地元岡山の雄、三菱自動車水島FCと中国リーグの名門、デッツォーラ島根の対戦。
社会人サッカーの悲哀を示すエピソードとして、2016年の全社愛媛大会で優勝した三菱水島の選手が、連戦の最中夜勤明けで試合に挑んだ話を私も聞いて知っていたが、そんなエピソードから受ける印象をいい意味で裏切るかのように、この日の三菱水島の選手たちは非常に楽しそうにサッカーをしているように見えた。
全選手が同じ会社に勤務し、互いを理解し尽しているからなのか、選手個々のテンションの違いが感じられない。
終始お互いに指示の声を出し合い、ゴールが決まれば少年サッカーの子どもたちのように喜び、決定的なピンチを寸前で防いだ選手がいれば小躍りするかのような様子で彼を讃えている。
流石に前半を3-0で折り返した試合を試合終了直前に追いつかれてしまった時には、彼らの顔からその笑顔は消え失せてしまっていたが、それでも試合が終わった後に、グランドの片隅で全裸になって互いにホースで泥を落としあっている様子は、壮大な冒険を終えた少年たちがそこにいるかのような、爽やかさを感じさせた。(私は男の裸に関心はありませんが!)
対したデッツォーラ島根も、非常に良いチームだった。
このカテゴリーで戦うチームとしては、絶対的にメンバーが少ない中(加入選手を現在募集している状況)0-3の試合を3-3にまで持ち込んだ自力の高さからは、彼らが今季のリーグ戦で降格の可能性があることが俄かには信じられない。
激しい雨と最悪のピッチコンディションの中で、徐々にそれへの対処法を見いだしてくるあたりには、選手たちのポテンシャルの高さ、戦いに慣れたアスリートとしての姿を見ることが出来た。
強い!松江シティFC
二試合目はここまでのリーグ戦で圧倒的な強さを発揮し、首位を独走する松江シティFCと岡山の実業団チーム、NTN岡山との対戦。
最終的に0-8というスコアで終わったこの試合では、とにかく松江シティのチームとしての強さが際立つ内容だった。
松江から大型バスに乗って神崎山公園に到着した松江シティの選手たちからは、地域リーグで戦っている現状を良しとしないようなプライドの高さを感じた。(ちなみに同じく島根からやってきたデッツォーラの選手たちが乗ってきたのはマイクロバス)
彼らがそう思っていたとしても当然で、この日の試合でも大活躍をした左のチャンスメーカー、磯江太勢選手(背番号20)はJ3ガイナーレ鳥取から期限付きで移籍してきた選手だし、反対の右サイドで重馬場をものともせず高い技術を見せつけていた宮内寛斗選手(背番号8)も同じくJ3のYSCC横浜から今シーズン加入した選手。他にも元Jリーガー、元JFLといった経歴を持つ選手がチームのほとんどを占めているのだから、これでプライドが高くなければおかしいくらいだ。
実際に、前の試合で両チームの選手が苦労していた最悪のピッチ上で、松江シティの選手たちだけでは、それを逆手に取るかのような戦い方をしながら、圧倒的な横綱相撲であっけなく試合を決めてしまった。
この試合が終わった段階では他試合の結果情報が入っていなかったようで、優勝に喜ぶチームの姿を見ることは出来なかったが、もしかしたらそれが分かっていたとしても、彼らはリーグでの優勝をそれほどは喜ばなかったかも知れない。
何しろ、このチームは間違いなく11月に地域CLを勝ち抜いて初めて目標を達成するチームなのであって、それを標榜するだけの力を備えていることは、この1試合見ただけで理解することは出来た。
やっぱりここへ来た良かった

上下レインウェアを着こみ、カメラにも防水カバーをつけ、それでもレンズを1台曇らせてしまったり、そんな気持ちが下がってしまいそうなコンディションの中で初めて触れた中国サッカーリーグだったが、終わってみれば「やっぱりここへ来て良かった」と思えるサッカー世界がそこにはあった。
今度は水たまりもなく、雨も降っていない、素晴らしいコンディションの中で、中国リーグの強豪たちの雄姿を見てみたい。
10月の全社、11月の地域CL、チャンスは今シーズンもまだまだ残っている。