福西崇史が東京都1部リーグで現役復帰

元日本代表で最近はすっかりNHKのサッカー解説者でお馴染みになっていた福西崇史が現役復帰を発表した。
と言っても、復帰するチームは現在東京都1部リーグに所属する南葛SC。世界中で愛されているサッカー少年漫画「キャプテン翼」の作者高橋陽一さんが「後援会長」を務めていることなどから、都道府県リーグのチームとしては異質な注目度を誇るチームではあるものの、3人のブラジル人選手と、春先に愛媛FCから移籍してきた安田晃大選手以外は全員が純然たるアマチュア選手で、おそらく「福西選手」も彼らと同レベルの扱いを受けるはずだ。
しかしながら、南葛SCとて単に話題性のみで福西選手の加入を推し進めたわけではないだろうし、W杯にさえ出場した経験を持つ福西選手自身も、自らを「人寄せパンダ」で終わるつもりはさらさらないだろう。
関東リーグ昇格のためのラストピース

東京海上戦 前年「関社」進出の強豪相手に2-0で完勝した南葛SC
これは完全に推測の域を出ないが、南葛SCにとってもはやリーグ戦以上に重要度も増してきている、関東社会人サッカー大会を勝ち抜く為のラストピースとして、福西選手の力を必要としているのかも知れない。
都県リーグから関東サッカーリーグへ昇格する2チーム※を決定するこの「関東社会人サッカー大会」は、例年11月に開催され、東京都1部リーグの上位3チームに出場権が与えられる(他、茨城1、栃木2、群馬1、埼玉4、千葉1、神奈川2、山梨1)
※JFLから地域リーグへの降格チームが関東のチームである場合、そのまま下位が押し出されて「即関東リーグ昇格」から「入替戦挑戦権」に代わる場合がある。
先に書いた各都県リーグ上位15チームに加えて開催都県(今季は東京都)1枠の計16チームで行われるトーナメントは、全社(全国社会人サッカー選手権大会)や地域CL(地域チャンピオンズリーグ)と同じように、2日連戦を2週連続という過酷なレギュレーションで行われており、それだけにいくらリーグ戦で好調を維持していたとしても、それとは全く違うスタンス、違うアプローチで臨むことが求められていくのだろう。
昇格初年度でありながら、今季の南葛SCは既に東京都1部リーグの首位を独走しており、その圧倒的な戦績からリーグを5位以下で終えてしまう可能性は考えにくく、そうした状況からも、目先のリーグ戦だけでなく、11月決戦を見据えたチーム作りにエネルギーを注ごうとしていると見るのが自然だ。
そして満を持して関東社会人サッカー大会(関社)を迎え、そこで福西選手のプレイヤーとしての力、リーダーとしての力が発揮させようというのが、彼らの描くストーリーなのではないだろうか。
新しい南葛SCのスタイルは?

Criacao Shinjuku戦 厳しい首位攻防戦も選手層の厚さを見せつけ、逆転勝利を飾った。
私は今シーズン開幕以来、南葛SCのリーグ戦を何試合か観戦してきたが、南葛SCというチームは、爆発力のあるブラジル人選手の存在感が際立つ一方で、実のところ非常に手堅い戦い方をするチームだという印象を受けた。
中盤の守備的ポジションで起用される選手は、大抵の場合後半の途中で同等の力を持った選手に交代させ、90分間高い強度で戦えるチームになっている(現在得点王ランキングで他を圧倒しているブラジル人FW、カベッサも泣きそうな顔をして前線からのプレスを怠らず遂行している)それだけに中盤の選手層も相当に厚い。昨シーズンまでJ2リーグでプレーしていた安田晃大選手ですら、完全にポジションを得ることは出来ていない程だ。
そしてこの点こそが、南葛SCが関社を勝ち抜く上での最大のアドバンテージでもあると私は思っているし、さらにそこへ名ボランチとしてならした福西崇史を加えることで、東京都リーグからもう1段上にギアを入れようという算段を向笠実監督も思い描いているのかも知れない。

東京1部規格外のストライカー カベッサ選手
こう考えてくると、何だか今回の「福西現役復帰」は、南葛SCにとって必然の事件であったようにも思えてくる。
そして、11月の関社を迎えるまでの数か月、残されたリーグ戦日程だけでなく、リーグ終了以後のチーム作りの段階で、福西選手が南葛SCにどんな力を与え、どんな魔法をかけるのか(さわやかヤクザという異名を持つくらいなので、もしかしたら南葛SCが「さわやかヤクザ組」になる可能性も否めないが…)チームのファン・サポーターは大いに期待しているであろう。
改修が終わり、今節(8月26日 18:30kickoff)から使用再開となった奥戸の葛飾総合スポーツセンターで、新しい南葛SCのスタイルが見られるかも知れない。
東京都1部リーグの試合日程は、このブログ内「フットボールカレンダー」で随時更新しているので、そちらの方も是非チェックして頂きたい。