東京都1部で苦しむFC KOREA

東京都社会人1部リーグでFC KOREAが苦しんでいる。
昨季所属していた関東サッカーリーグ2部からの降格は、その前年の関東1部から2部への降格に続き2年連続で自らが戦う舞台を下げてしまったことを意味した。
社会人サッカーチームの「W杯」とも呼ばれる全国社会人サッカー選手権に出場すること4度。
そのうちの一度は見事優勝し、社会人サッカーの頂点を極めたのは2012年のこと、今から僅か6年前の出来事だ。
そんなチームがこの短い期間でカテゴリーを2つも下げ、しかもそのカテゴリー(東京都1部)でも開幕から長く勝ち星を挙げられず苦悩し続けることなど、誰が予想出来ただろう。
昨年暮れ入替戦を戦ったFC KOREA

私が初めてFC KOREAの試合を見たのは、昨年の12月24日に行われた「関東サッカーリーグ2部入替戦」の時。
リーグ戦で8位に終わったFC KOREAは辛くも自動降格は免れたものの、関東社会人サッカー大会の覇者、アイデンティみらい(茨城県)と入替戦を行うことになったのだ。
スコアは一方的なものとなり、FC KOREAの2年連続降格はあっけなく決まってしまったが、個々の選手の質、能力について明らかな差が両チームの間にあったかと言えば、私にはそうは見えなかった。
GKは何度も決定機を防ぐビッグセーブをして見せ、CBの長身選手は圧倒的なヘディングの強さを活かすべく後半頭からは前線のターゲットマンとなりチャンスを創出した、そして何よりキャプテンで10番の選手は小柄ながらも抜群のテクニックを随所に見せ、厳しい試合展開の中で何とかその流れを変えようと死力を尽くしている様に見えていた。
確かにFC KOREAは東京都リーグに降格してしまったが、今度は彼らが関東リーグへ復帰する戦いを見ればいい。その時はそう思っていた。
降格とはこういうこと

年が明け、3月の末に東京都社会人リーグが開幕すると、そこには昨年の入替戦で私の心を掴んだ選手たちは残っていなかった。
GKのリ・チェグン選手は、J3リーグの藤枝MYFCへ移籍、CBのホン・ユング選手は四国リーグのFC徳島へ、10番のカン・ホ選手は選手生活にピリオドを打ち引退してしまっていたのだ。
それだけではない、2017シーズンに在籍していた30人ほどの選手のうち、東京都1部で戦う2018シーズンのチームに残った選手はわずか8名しかいなかった。
降格とはこういうことなのだろう。
関東1部から関東2部へ降格した時も同じように大勢の選手が抜けてしまったのかも知れない。(FC KOREAは2016年に在日コリアン選手以外にも門戸を開いた)
「関東1部で戦っているから」「JFL昇格を果たせるかも知れないから」
若く未来のある選手達が、こうした夢とともに自らのプレーする環境を選ぶのは当然のこと。それだけではない、上位カテゴリーで戦うチームだからこそ、そこに対する支援者も多かったはずで、そうしたサポートが所属選手たちの生活の一端を支えている事実も大きいだろう(地域リーグのサッカー選手はチームのスポンサー企業で仕事をしているケースは多い)。
新しい若手、帰ってきたOB

今季のチームキャプテンとなったCBのシン・ヨンギ選手は開幕直前の練習の時に私にこう話していた。
「今年のチームは1月の段階で本当に数人しかいなかったんです。それでも少ない人数で練習をして、ちょっとずつ新しいメンバーや戻ってきてくれた選手が加わって何とか形にはなってきた。」
昨季の朝鮮大サッカー部主将のムン・スヒョン選手、そしてヨンギ主将の弟、シン・ヨンジュ選手。FC KOREA全社優勝の主力選手だったチェ・カンヨン選手は関東2部のエリース東京から復帰。彼ら以外にもFC KOREAの窮地を救おうと、何人かの実力あるOB選手がチームへ戻ってくる流れが生まれた。
しかしながら、その程度で結果が出せるほど東京都1部は簡単なリーグではない。
元Jリーガーという経歴を持つ選手を補強するチームまである中で、FC KOREAは開幕戦のアローレ八王子、2節の警視庁と引き分け、その後は長く負け試合が続き、今季の降格チームでありながら東京1部で最下位をひた走ることになっていく。
君たちは俺に意地を見せてくれたか?

それがある一戦を境に選手の闘う姿勢に変化が見られるようになった。
丁度リーグ戦の折り返し地点となる第8節の対東京蹴球団戦がそのゲームだ。
前半ミスなどから0-3と大きくリードを奪われたFC KOREAの選手たちがベンチへ戻ると、リ・チョンギョン監督はいつになく厳しい言葉をチームに対して投げかける。
「このままじゃまた負けるぞ、ナニクソという意地も見せないままこのまま負けるのか?」
「リーグ戦が開幕して以来、君たちは俺に意地を見せてくれたか?」
「この試合はもう3点差つけられている。逆転勝ちしろとは言わない、応援に来てくれているあの人たちに対してチームの意地を見せろ!それがないならFC KOREAの存在する意味はないぞ!」
チョンギョン監督のこの叱咤で、選手たちの眼の色が変わったように私には見えた。
結局はこの試合も3-4で敗れたが、後半のFC KOREAの選手たちは闘う姿勢に溢れていた。
昨季の降格を知る選手は全員ではなくとも、東京都1部でもなかなか勝てないFC KOREAというチームにあって、その自信を支えているものは闘争心であったのだと気がついたかのように、全ての選手が戦っていた。
FC KOREAが存在する意味との格闘

FC KOREAはその後のリーグ戦で2連勝し、チームの雰囲気も変わってきている。
もちろん、かつて全社を優勝した時のような圧倒的な強さはそこに無いかも知れないが、彼らは彼らだけの栄冠を勝ち取るために残されたリーグ戦も全力で戦ってくれることだろう。
リーグ終盤は昨季成績上位チームとの対戦が続く、ひとつとして勝利を計算出来る相手はいない。
チョンギョン監督の言う「FC KOREAの存在する意味」と格闘しながら、若いチームの挑戦は続く。