日本サッカーの未来は下位カテゴリーの「興行化」にかかっている!?

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「興行」か「昇降格機関」か

 

「興行」なのか「昇降格機関」なのか。

日本のサッカーカルチャーがより深みをもったものにしていけるかどうかは、この2つの要素のうち、どちらにより重きを置いたリーグ戦運営が出来るかに掛かっている気がする。

と書いても、かなり独り善がりな言い分だと自覚しているので、少しだけ補足すると

「興行」とはそこに関心を持った人々を「顧客」として迎え入れ、リーグ戦の行われるスタジアムを中心に、その「顧客」を対象として様々なサービス(商売)を展開し、そこで得た収益をリーグやクラブの運営資金に充てていく(場合によっては赤字補填する)という運営スタイルをさし、「昇降格機関」とはあくまでも上位カテゴリーに昇格、あるいは下位カテゴリーへの降格チームを決定するという仕組みとしてのリーグ戦運営スタイルをこの場合はさしている。

 

JFLは「興行」か?

JFL コバルトーレ女川 VS FC今治 有料入場試合で観衆581人

 

もちろん、現状のあらゆるサッカーリーグ(Jリーグも含めて)には、この2つの要素が混在しながら運営されている訳だが、簡単に言えばトップカテゴリーになればなるほど「興行>昇降格機関」という傾向が強くなっていく。

これらを鑑みた時に、原則として有料入場試合を実施しているJFLは「興行>昇降格機関」という傾向で運営されていて然るべきとも言えるのだが、実情としては必ずしもそうはなっていない。

そもそも入場料が非常に安く(大人でも1000円程度)観客動員についても1,000人を集めるのに苦労しているようでは、とてもではないがクラブの運営予算の一部を賄うレベルにはなっていないし、クラブによっては「ホームゲームをすればするほど赤字を背負うことになる」という実情も存在するそうだ。

FC今治のように外資系企業のバックアップがあって、近い将来にJリーグ入りを目指しているようなクラブであれば、JFLで戦っている現在を「投資期間」と取ることも出来ようが、仮にそうであったとしても「Jリーグ入り」は約束されているものではないし、もしかしたらその夢が叶う前に燃料が尽きてクラブが消滅してしまうようなこともあり得る。

地域リーグは「興行」ではない?

関東リーグ ブリオベッカ浦安 VS 栃木ウーヴァ 有料入場試合で観衆800人弱

 

JFLでさえそうなのだから、その下位にあたる各地域リーグに至っては、もはや「興行」的な要素がほとんど感じられないリーグの方が多い。

このブログ内に作成した「フットボールカレンダー」は、日本全国で行われているJリーグ、JFL、地域リーグの全日程を盛り込んでみたが、入力する際に実感させられたのが、この「興行」なのか「昇降格期間」なのか、というそれぞれのリーグの性質についてだった。

「興行>昇降格期間」という在り方がはっきりしているJリーグについては、日程についての情報ソースも豊富で、改めて私がカレンダーにまとめる意義を見いだせないほどだったが、それがJFLになると情報元がかなり限定され、地域リーグともなるともはや広く一般に知ってもらおうという気概は感じることが出来ないレベルの情報しか公開されていないケースもあった。

ただ、全国に9つある地域リーグが全てそうであったわけでは決してなく、ウェブ上に限って言えば、関東リーグや東海リーグはJFLとほぼ同等レベルの情報が公開されているし、クラブ毎でみても東北リーグのブランデュー弘前関西リーグのFC TIAMO枚方などのクラブ公式サイトは、下手なJ3クラブより充実したコンテンツが提供されているのも事実で、「Jリーグであるかないか」という不必要な線引きをすることなく、関わる人の数を増やして行こうとする姿勢が感じられるケースもあった。

 

カテゴリーにかかわらず「興行」を目指す意味

関東1部 TOKYO UNITED FC ホームゲーム9試合のうちの4試合をスタンドのない小石川運動場で開催する

 

今回最も書きたかったことは

『地域リーグであろうと都道府県リーグであろうと、そこに大勢の人を巻き込んで行こうと思うのであれば、リーグもクラブも堂々と「興行」としての顔を打ち出して行って欲しい』

ということだ。

国内トップカテゴリーでないサッカーにその価値が無いと言うのであれば、そのトップであるJ1リーグであっても欧州トップと比べれば何千円もの入場料を払ってまで見る価値のあるレベルにあるとは言えない。

つまり、殊その競技性についての優劣は、そのスポーツを「興行」としようとした時に、実はさしたる意味を持っていないと私は思うのだ。

 

AKBより歌も踊りも上手いタレントは沢山いる

「中国サッカーリーグ」で検索すると、お隣の中国スーパーリーグがヒットしてしまう。 そして日程表はPDF。チーム名、会場名は略称なので、調べようとすると手打ちで改めて検索する必要が生じる。

 

極端な言い方をすれば、そこに人が集まっているからこそ、人はそこに何らかの価値を見いだす。

これは歌も踊りも素人同然のアイドルグループが日本中の注目を浴びている昨今の世情を見れば明らかなことだ。

例えば中国リーグの廿日市FC対三菱水島FCの試合でも、九州リーグの新日鐵住金大分対J.FC.MIYAZAKIの試合でも、関東リーグのTOKYO UNITED FC対さいたまSCの試合でも、リーグのカテゴリーやチームの競技レベル、選手の質、そうしたものがJリーグと比較して劣っていたとしても、それがイコール「興行として通用しない」とはならないのではないか。

J3福島ユナイテッドの竹鼻快GMは「スタジアムに人が来ないことを前提としたマーケティング」の重要性を話されていた。

スタジアムに人(観客)が来ないことを前提としたマーケティング

人口が少なく、スポーツ観戦をする習慣が定着していない地域であっても、クラブやリーグが創り出す付加価値に対するニーズを高めていくという手法であれば、もはやチームや選手の質の高さなどは二の次になると言ってもいい。

もちろん、現実を見ればチームの経済力やスタジアムの問題、リーグの運営能力など、乗り越えていかなくてはならない一定の壁はあるにせよ、最初から「興行」をイメージしていなければ、その壁の存在すら認識出来ない。

未来の見えない日本サッカー界

流経大サッカー部の本拠地 RKUフットボールフィールド 全国にもここ同様、リーグ戦で多用されている大学サッカーの施設が沢山ある。

 

では何故、そこまで私が下位カテゴリーの「興行」化を望むのかと言えば、それはひとえに、日本のサッカーカルチャーが永く広く社会に浸透していって欲しいからであり、現状のままでは間違いなくその世界が縮小、あるいは消滅してしまうという危機感が覚えるからだ。

かつて、日本のスポーツ界を牛耳っていた実業団はどんどんその影を潜め、それに代わる形で誕生した市民クラブも一握りの成功例を除いては、どこも厳しい経済状況に置かれている。

サッカー界ではその隙間を埋めるように、大学サッカーを母体としたチームが日本中に現れ、今ではどこの地域リーグもそうした「社会人大学サッカー」の力なしには立ち行かない状況にあると言っていい。

野心のあるクラブは強力なスポンサーや行政のバックアップを得て、泥沼から何とか這い上がろうとするが、その見つめる先に見えるJリーグですら、決して儲かるビジネスモデルとはなりきれていない。

こんな未来の見えない日本サッカー界が、永く存在していけると私には全く思えないのだ。

 

週末ごとの「サッカー祭り」が日本中で見られるようになった時・・

「興行」か「昇降格機関」か。

全てのサッカーリーグには「興行」を出来るだけの素地がある。

そして、日本全国にある無数のクラブ、無数のリーグ戦が、それぞれに現在の何倍もの人を集め、日本中のそこかしこで週末ごとの「サッカー祭り」が見られるようになった時、あるいはそうしたクラブやリーグが創り出した新たなサッカーの付加価値を多くの人々が享受するようになった時、日本サッカーはカルチャーとしての深度を増し、社会にとって欠かせないものとなっていくだろう。

スポーツにはそういう力があるし、サッカー人にはそれをするだけの情熱があると私は思う。

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