「地獄の関東リーグ」前期終了!その振り返りと「JFL昇格の意味」

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「地獄の関東リーグ」

今シーズンの関東サッカーリーグは、10あるクラブのうち9つのクラブまでが「Jリーグ入り」を将来的な目標として掲げ、各チームの戦力も伯仲。「元Jリーガー」という肩書を持つ選手の加入だけではトピックスになり得ないほどに補強合戦も過熱していった。

4月1日に開幕したリーグ戦は早くも折り返し地点に到達し、既に全チームのリーグ前半戦の戦いが終了。JFL昇格のかかった地域チャンピオンズリーグ出場権(優勝チームのみが無条件で出場)を巡る戦いも、その明暗が徐々に分かれてきている。

開幕戦の「新東京ダービー」開始直後、電光石火の先制ゴールを決めたTOKYO UNITED能登正人選手(13番)

前期戦を終えて3チームが未見

私は今季の関東サッカーリーグ開幕以来、なるべく毎節1試合は現地で観戦するように心掛けてきたが、それでも生活圏である東京と千葉で開催された試合に偏ってしまったため、全チームの試合を観戦するまでには至っていない。

それでも、東京勢の東京23FC、TOKYO UNITED FC、千葉勢のブリオベッカ浦安、VONDS市原FCの試合は複数回観戦し、未だ筑波には行けていないものの、ジョイフル本田つくばFCのアウェイゲームも3試合以上は現地で観戦した。また、JFLからの降格組でオフに1チーム分以上の元Jリーガーを大量補強し、大栗崇史社長の「本気力(マヂカラ)」の存在感が際立つ栃木ウーヴァについては、数少ない小山市でのホーム開催試合を取材させて頂いた。(流通経済大FCのおかげでRKUフットボールフィールドへ向かう山道も随分慣れさせてもらった)

こう振り返ってみると、リーグ前半戦を終えて未だ横浜猛蹴、さいたまSC、ヴェルフェたかはら那須の3チームが未見であるが、それでも後半戦のどこかのタイミングではこれらのチームのリーグ戦も是非観戦したいと思っている。

 

関東サッカーリーグ前期終了時点スタンディング

リーグ前期を首位で折り返した栃木ウーヴァFC

 

私自身が関東サッカーリーグに関心を持った初めてのシーズンなので、開幕前の予想や展望はほとんど思い描くことも出来ず、それでも2月末に行われた関東リーグ開幕告知イベント「おいでよ!地獄の関東リーグ」でご一緒させていただいた各チームサポーターの皆さんの声を総合すると、概ねその予想に近い展開でリーグが進んでいるようにも思える。

ここで前期最終節終了時点(7月8日)での順位を簡単に書いてみると

 

1 栃木ウーヴァ 勝点25(8勝1分0敗)得失点差17

2 VONDS市原FC 勝点21(7勝0分2敗)得失点差17

3 東京23FC 勝点15(4勝3分2敗)得失点差4

4 TOKYO UNITED FC 勝点13(3勝4分2敗)得失点差0

5 ジョイフル本田つくばFC 勝点13(4勝1分4敗)得失点差‐2

6 ブリオベッカ浦安 勝点12(4勝0分5敗)得失点差‐5

7 流通経済大FC 勝点10(3勝1分5敗)得失点差1

8 横浜猛蹴 勝点9(2勝3分4敗)得失点差‐6

9 ヴェルフェたかはら那須 勝点6(1勝2分6敗)得失点差-11

10 さいたまSC 勝点4(1勝1分7敗)得失点差-15

 

8勝1分の無敗で前期を終えた栃木ウーヴァが勝点を25まで伸ばし、彼らとの直接対決に敗れたVONDS市原がそれを勝点4差で追随する構図となっている。

東京勢の2チームはリーグ序盤になかなか勝点を積み上げられなかったが、ここへ来て連勝を飾るなどして東京23FCが3位、TOKYO UNITEDが4位まで順位を上げてきた。

一方でトップ2を追う1番手だったつくばFCは前期終盤で勝星に恵まれず、東京勢にその座を明け渡す形になってしまったが、それでも4位とは同勝点の5位につけ後半戦の巻き返しが十分可能なポジションに踏みとどまっている。

栃木ウーヴァとともにJFLから降格してきたブリオベッカ浦安は、羽中田新監督の下、リーグ随一のポゼッションサッカーを見せているが、それをなかなか勝利に結びつけることが出来ていない。

以下、7位流経大FC、8位横浜猛蹴、9位ヴェルフェたかはら那須、10位さいたまSCと続くが、これらのチームの後期戦は関東1部残留を強く意識した戦いとなっていくのだろう。

 

「JFL昇格の意味」

栃木ウーヴァのホームゲームで定着しつつある「ウーヴァ祭り」

 

と、ありきたりのリーグ戦動向をこのブログで触れたところで、皆さんにそれほど喜んでもらえないのは分かっているので、ここからは初めて関東サッカーリーグ、地域リーグカテゴリーに触れた所感について書いていこうと思う。

私が今季初めて関東サッカーリーグを観戦するようになって、最も強く感じているのは「JFL昇格の意味」についてだ。

栃木ウーヴァやTOKYO UNITED FCのように、具体的なJリーグ昇格年度を目標として掲げているクラブにとっては、そもそもそこ(JFL)が目標到達点ではないので、JFL自体を「Jリーグ入りする為に必要な通過点」と捉えているだろう。

勿論先に挙げた2つのクラブ以外にも「Jリーグ入り」を目標としているクラブはあるが、そうしたクラブも「JFLは通過点である」という認識を少なからず持っているはずだ。

これは恐らく関東リーグだけでなく、日本中で戦っているJリーグを目指す地域リーグのクラブが同じように持っているであろう認識で、もっと言えば現在JFLに所属しているクラブであっても「JFLは通過点」という認識を持っているとも言える。

私がこう思うのは、JFLの観客動員数の実情に拠るところが大きい。

JFLの観客動員力

東京23FCも負けていない。メインスタンド裏を埋め尽くす「スタグル」の数。 何を食べるべきか本気で迷ってしまう

 

JFLの観客動員力は関東リーグの実情とそれほど大きく変わらない。

JFLのリーグ戦で東京23FCが江戸川陸上競技場で開催した有料ホームゲームの観客数を超える観衆を集めることが出来たゲームは全体の半分にも満たないし、2000人を超える観客をホームで毎試合のように集めているクラブは贔屓目に見てもFC今治と奈良クラブくらい(ヴァンラーレ八戸と東京武蔵野シティがそれに続く)JFLでは観客数が3桁であるのは普通のことで、観客200~300人もザラにある。

先に挙げたFC今治、奈良クラブ、ヴァンラーレ八戸、東京武蔵野シティは全てJリーグ100年構想クラブであり、Jリーグ昇格が現実的な目標となっているクラブで、こうした背景が観客動員数に結果として現れていると言ってもいいだろう(観客を動員しなくてはいけない状況にある。時には手段を択ばずに・・・?)

ブリオベッカ浦安はJFLにいた2シーズン、人工芝ピッチの浦安市運動公園陸上競技場を使用出来ず、遠く離れた柏の葉でホームゲームを開催していた。浦安からアクセスしにくい柏の葉にブリオベッカを応援しに行ける人は限られてしまっていた。

あるVONDS市原サポーターは、仮にJFLへ昇格してしまえば自分は今のように全てのアウェイ戦に応援しに行くことは出来ないと話していた。

こうした実情を見ると、JFLは通過点どころか「生き地獄」のようにさえ思えてきてしまう。

 

トップカテゴリーではないけれど・・・

VONDS市原には元日本代表 山岸智選手も加入した。

 

もちろん、そうは言っても関東リーグの各クラブサポーターは、自分たちの応援するクラブがJリーグを戦う姿を見たいと本気で思っているだろうし、彼らのその夢や希望を否定はしない。

ただちょっとだけ立ち止まって考えてみると、関東リーグも十分に楽しいリーグではあるのも事実。

条件さえ整えば2000人の観客を有料試合で集めることも決して不可能ではないし、スタジアムによってはJリーグに匹敵するレベルで「スタグル」も出店している。

そして何より、間近で真剣勝負をしている選手たちも、少し前までJリーグのトップレベルで活躍していたレベルにある。

今以上に関東リーグの価値が高まって行けば、こうした現象がさらに進化していく可能性もあるだろう。

確かにそこは国内トップクラスのカテゴリーではないけれど、それでもスタジアムのムードや選手たちの激闘の様は、我々を楽しませるのには十分なものとなっているし、本当は長くそこで戦うことだって決して簡単なことではない。

喜怒哀楽が交錯するスタジアム

「地獄の関東リーグ」

これを単なる「JFL昇格レース」として見てしまえば、その優勝の行方が分かってきてしまった段階で、関心の度合いは一気に低くなってしまう。

しかしこの地獄は決して「生き地獄」ではない。

監督、選手、チームスタッフ、サポーター、沢山の人の喜怒哀楽が交錯するスタジアム。そこにはカテゴリーの違いなどそれほど大きな意味を持たない。

大切なのはそれをどれだけ感じ取ることが出来るか、そしてそれをどれだけ多くの人と共有していけるか、であるように思う。

関東リーグの後期日程はすぐにスタートする。

前期以上に「地獄の関東リーグ」を堪能していきたい。

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