日本代表帰国記者会見 西野監督は語る「Jリーグ春秋制は代表強化の障壁」

Jリーグ

関連リンク

 

Pocket
このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表帰国記者会見

ロシアでの戦いを終えた日本代表チームが7月5日に帰国し、その後、日本サッカー協会田嶋幸三会長、西野朗監督、長谷部誠選手による帰国記者会見が行われた。

冒頭の挨拶で田嶋幸三会長が「日本代表なんか嫌いだ、応援なんかしないと言って下さった方々も関心を持ってくれたという意味では感謝を申し上げなくてはいけないと思っております」と発言したことで、ツイッター上でも俄かに「嫌いなのは日本代表じゃなく、あなただ」といったツイートが溢れていく様子も見られたが、大会前の期待の低さを大きく覆すことに成功を果たした充実感からか、適度な緊張感はありながらも、非常に穏やかで清々しい印象を与える記者会見であったと思う。

ロシア大会で改めて思う「ウルトラスニッポンが果たす役目は終わった」

西野朗監督の言葉

2018FIFA ワールドカップロシア SAMURAI BLUE(日本代表)帰国記者会見(Youtube)

しかし、そんな穏やかな記者会見も終わりに近い段階で、西野監督が話した言葉の中に、この先の日本サッカー界の在り方を大きく左右する、聞き逃すことの出来ない内容があった。

一般質問の最後に立った毎日新聞記者からの

「今回の経験を踏まえて、4年後に向けて、サッカー協会に一番伝えたいことは?」

という質問。

これに応えた西野監督の言葉が以下になる(正確を期して発言をそのまま文字起こしする)

一朝一夕にA代表が、爆発的に成長していくっていうことは各国無いと思うんですね。今、本当に日本のアンダーカテゴリーの各代表チームは、これは本当に期待できます。U-20、U-17、本当に世界で渡り合える力を持っていると思います。

これは着実にそういう育成に対して協会が働きかけてきた状態だと思いますし、単純に4年後にカタールにってことを漠然と言っているわけでは無くて、着実に下のアンダーカテゴリーの選手達の底上げ、A代表も分かりません、U-20の選手達が取って変わるような状況でもあると感じていますし、本当にスケールの大きいダイナミックな、且つ日本人らしいボールを扱ったサッカーが出来る。

まあそういう期待出来る育成に対して、更にっていうところをかけていかないと、まあ一朝一夕にA代表がっていうわけにはいかないと思いますし、まあその部分で海外組と国内組という、そういう選手たちが融合していかなくてはいけない。まあ、そこの難しさがあります。

これはシーズンが違うからです。ヨーロッパと日本の中で、これを合わせていくと言うか。ま、9月、10月、11月のA代表の活動が、非常に毎年毎年強化にならないくらいの状況、これはシーズンが違うからです。

まあそういう事もありますし、ま、選手達のステージがそれぞれ違うっていうところを 個は成長していくものの、ま、そういうチームとして、A代表として、ま、そういう選手達との融合をチームとしてどう持っていくかという。まあ改善はなかなか難しいんですが、考える必要はあると思います。

「これはシーズンが違うからです」の意味するもの

恐らくこの記者会見を視聴された方々は、私と同じように西野監督のこの一連の言葉が非常に気になったはずだ。

そしてこの発言を聞いて、やはり西野監督は日本サッカー協会の人間であるのだと改めて実感したことだろう。

この言葉の中で西野監督は、海外組と国内組の融合が日本代表には不可欠で、それを阻害しているのがJリーグの「春秋制開催」であるとはっきり言っているのだ。

「これはシーズンが違うからです」西野監督はこの言葉を話す時、敢えて語気を強めたようにも感じられた。

ただし、これは日本サッカー協会に属する人間の言葉としては至極当然な内容で、彼らにしてみれば、日本代表が2050年までにW杯で優勝をするという大目標を自分たちが掲げている以上、それに対する障壁や障害は、可能な限り取り除く姿勢を「建前上」も示していかなくてはならないのだ。

ただ、流石に西野監督もあまりにはっきりと「シーズンが違うからです」と2回も言ってしまったことで、少々マズいと思ったのかその後の言葉はやや口どもっているようにも見えた。

 

JFAとJリーグのリーグ開催時期を巡る明確な対立軸

日本サッカー協会主導でJリーグに提案された「Jリーグ秋春制開催移行」については、Jリーグ側がほぼ全面的に反対の姿勢を一貫して取り続け、昨年暮れのJリーグ理事会でこの案が否決されたことで、当面議題にも上がらないことが決まっている。

Jリーグ春秋制移行ひとまず休止符。日本社会ありきのJリーグを目指せ

私の感覚でも、既存のJリーグファンのほとんどがリーグの秋春開催移行に反対し、12月のJリーグ理事会における決定も全面的に支持している印象だ。

実際に、秋春開催となった場合に考えられるリスク、あらゆる不都合、地域による気候面における格差、、、ファンにとってはこれまでも十分に楽しんできているJリーグ。しかし開催時期が変わってしまうだけで、それが十分に楽しめなくなってしまう。

こうした強い思いが、Jリーグの秋春開催移行をギリギリの所で食い止めていると言っていい。

この両者の思惑の違いは、どちらかが完全な形で折れない限り、妥協点が見いだすのも不可能だろう。

「日本代表の強化」なのか「国内リーグの充実」なのか、日本のサッカーファンがこのどちらをより重要と今後考えていくのか、西野監督の「これはシーズンが違うからです」という一言の中に、非常に混沌とした日本サッカー界の今後が垣間見えたような気にさせられた。

日本サッカーカルチャーの深化の為に

多くの日本サッカーファンが日本代表のロシアでの活躍に魅せられた。

そして、今後の日本サッカーをして「代表がさらに良い成果を発揮するために何が必要なのか」についても闊達に議論されている光景も見られる。

しかし、その「必要」なものが「欧州リーグとシーズンを同じくする」つまり「Jリーグの秋春制移行」であったとしたら、、、。

私は、代表強化という命題の下に日本サッカーの全てが判断されていく構図が、日本のサッカーカルチャー深化の為にはならないと、このブログでも繰り返し書いてきた。

代表の活躍に意義を見いだすとすれば、それは新たなサッカーファンを増やしていく為の最高のきっかけとなるという部分に尽きると思っている。

国内サッカーの充実がない限り、その国のサッカーカルチャーは存在しないも同然。

世界中の人々が日本代表チームに贈る賛辞を眺めて悦に入っていてはいけないと思うのだ。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で